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NO.1はいつも君  作者: PINE
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第14話

「伊月、見た?」


「見た見た!」


「「かわいいぃ~~!」」


弓道部女子が降りたバスの前を通り過ぎた後、佐伯と益田が顔を見合わせて悶える。だけど何に対してそんなに興奮しているのか俺はわからない。何が?と素直に聞いてみれば、なぜか怒られた。


「咲良お前見てないのかよ!」


「市居さんと武中さんのし・ふ・く!」


弓道部女子一同は、制服ではなく、私服でバスから降りてきた。佐伯によると、市居さんはシンプルな白いチュニックに短パン姿で、武中さんはTシャツにジーパン姿であったらしい。益田曰く、「二人ともシンプルながらもそのスタイルの良さが際立つ装い」であると。あの一瞬でそこまでチェックしていた二人がすごい。


「見た?あの足!!」


「うんうん。」


「長い!!」


「細い!!」


興奮して話す2人は首をぶんぶんと縦にふりすぎて足元がふらつくほどである。走りながらよくしゃべれるものだと感心する。


「あぁ、うん。見てないっていうか…」


期末試験の結果発表以来、なんだか気まずくて市居さんになかなか近寄れない。自分が市居さんにあのように言われることをした覚えはないのだけれど、自分の行動の何かが市居さんの気に障ったようだった。


「そういえば、お前、市居さんに“大嫌い”って言われていたもんな。」


益田は人の一番気になっていることを突いて傷をえぐってくる。その顔は、面白くてしょうがないというふうに笑みに溢れていて、少しだけその笑顔にイラっとした。


「学校一可愛い女の子から嫌われるって不憫だよねぇ。世の中うまくいかないねぇ。」


佐伯までもが憐れむような、鼻で笑ったような顔をし、走りながらわき腹をつついてくる。その顔が憎らしくて二人をおいてスピードを上げた。


俺はつい最近、少なからず憧れていた女の子から「大嫌い」と言われてしまった。――何故、そうなってしまったのかは未だにわからない。


というか、嫌われるほどあまり話したこともないような…。


あの日以来、ちっとも市居さんに会わないし、会ったとしても、ものすごい勢いで避けられる。


「はぁ。」


「なんだよ。お前。辛気臭い。女の子来たんだから落ち込むなよな。」


「そうそう、もっと喜ぼうよっ。」


いつの間にか追いついてきた2人が両隣に並んで肩を叩く。……あぁ、気楽なこいつらが羨ましい。




夕暮れ。


ランニングの後、腕立て、腹筋、スクワット、素振りetc…とさんざん基礎練習のあとの打ち込み…。吐くほどしごかれ、さすがにぐったりだ。1週間目でこれって大丈夫だろうか。


「僕…ごはん食べる気力ないかも。」


「俺も。」


「食べないと、明日余計に辛いぞ。たぶん。」


食べる気力も削られているものの、無理やり米を口の中に放り込む。疲れきっているためか、誰も話をすることなく静かな夕食の時間が続く。ふと、隣に目を向けると、佐伯が箸と茶碗を持ったまま船をこいでいた。


「おい、佐伯、こんなとこで寝るな。」


佐伯の肩を揺すっていたると突然剣道部顧問が立ちあがり前に出て話をし始めた。


「諸君、今日はお疲れ様であった。」


顧問は一人元気で、活き活きとした様子で立っている。


「―あぁ、立たなくていい、そのままで聞いてくれ。えー、2週間後、練習試合をすることに決めた。対戦相手は全国大会常連の強豪の高倉高校だ。練習の気を抜くなよ。」


練習試合。そう聞いて、周りがざわめきだす。しかも相手は全国大会常連の高倉高校ときた。自身、胸が高鳴って来るのがわかる。


「あー、それと、知っているかどうかわからんが、今日、ウチの学校の弓道部女子も、この研修所に来た。2週間ほど滞在するそうだ。」


弓道部女子の話になって、いっきにざわめきの声が大きくなってきた。


「そ・こ・で・だっ!」


顧問の声もそれに合わせて大きくなる。


「弓道部女子の合宿の最終日!剣道部男子と合同できもだめし大会をやる!!」



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