新たな大陸
ゆっくり休んだ別の日、ライトさんがお仕事でやっていたというアビスブルーの教会が開かれるという事でその様子を見に来ていた。
よく分からないが太陽がてっぺんにあるうちにやるのが縁起がいいという事で太陽が真上にある時間帯で行われている。
俺達の他にも意外と人はいて、多分熱心な信者さん達なんだろう。あとはサクラの感じがするライトさんの護衛のみなさんもいるけどこっちはノーカンで良いよな?
式典のようになっているが気になるが、これは教皇様がやっているからか?
そう思いながら式典が終わって俺達は新しい教会の中を見ている。
流石に大聖堂みたいによく分かんない絵とかがある訳ではないが、やっぱり新品の匂いみたいなのがするのは教会でも同じか。
観光で儲けているからか、結構立派だ。白夜教の像とかレリーフとかもあるし、金がかかっている事は分かる。
「でも何で急に教会なんて建てるんだ?なくてもよさそうだけど」
「そうも言えないんですよ。こういった観光地だと落ち着いて祈りを捧げる場所がないと以前からアンケートは出ていたんです。それじゃどの宗教から行うかっという話になって、1番力を持つ白夜教の教会から行おうとなったのです。ちなみに次は神木教です」
「神木教?」
「ヴェルトを崇めている方々のための教会です。まぁ教会というよりは公園を造る感じですが。ヴェルトを信仰している方はかなり多いんですよ、農家の家だと必ずと言っていいほど信仰されています」
聖歌隊の隊長として参加していたクレールがそう教えてくれた。
そう言えば元の世界でも聞いた事あるな、旅行客の信者さんが祈りを捧げる場所がなくて困ってるって話。でもまさか異世界でも同じような問題が起きているとは、どこも似た様な感じか。
そう思いながら新しい教会の見学を終え、外に出て背伸びをする。
あとはライトさんが着替えて戻ってくるのを待つだけだ。
「すみません!遅れました!!」
式典の時に着ていた重たそうな服からいつもの服に着替えてきた。
そんな慌てる様な事でもないのに律儀な人だ。
「大丈夫ですよ、待ってませんから」
「ですが今日は貴重な上陸日ではありませんか。私の事を待たなくてもよかったのですよ」
上陸日。それはこのアビスブルーが他の大陸に上陸する日の事である。
アビスブルーにとっては食料や他の観光客を乗せたり下ろしたりする日であり、他の客にとっては貴重な他の大陸に触れる機会でもある。
様々な理由や思惑がある訳だが、基本的にはただの観光だ。
まだ飛行機や長距離で使用する事の出来る船のないこの世界では大陸間での輸出輸入を行う事が出来ない。そのため他の大陸で欲しい物があったとしても必ずと言っていいほどアビスブルーに頼らなくてはならない。
中には自力で他の大陸と外交を行おうとするところもあったらしいが、船の設計だけではなく、魔法だけに頼った航海術では限界があり、結果不定期の不安定な外交になり人気は取れていないらしい。
安定した航海となるとやはりアビスブルーに頼った方が確実らしく、アビスブルーに頼んだ方がいいと判断する国も少なくない。
それによりアビスブルーは仲介や商品を運ぶことで金を稼ぎ、さらに資金が溜まるとか。
なので基本的に他の大陸に下りる時は観光がメイン。定期的に輸入したい物があったらアビスブルーに頼むのが一般的らしい。
俺達の場合は他の大陸に子供達が居ないかどうかの確認のために上陸するのが目的。表向きはただの観光だが、あとはこの大陸で広範囲に行動できる子供達に頼む。
今回は天使達の他にパープルスモック、獣人達に任せる。天使達は行動範囲が広いし、パープルスモックと獣人達には細かい所を探してもらう。警戒心が強い点と、嗅覚や聴覚で発見する事が出来るかも知れないからだ。
まぁそんな子供達に探索してもらうにしても俺が1度上陸する必要がある。
そこでどっか適当に子供達を放つ。放つって言い方すると侵略っぽいけど。
なので俺達はライトさんが来てから大陸に上陸した。
上陸方法は前と少し違う船で、8割がた大型のコンテナを乗せる事が出来る大型船と変わらない。その船で食料などを運ぶらしい。
そして上陸した町は活気のある港町だった。
服装に関しては元の大陸とそう変わらない。でも日焼けなのか、それとも国民性なのか、肌が黒っぽい感じの人が多い。元の大陸では白か黄色が多かったのでちょっと新鮮。
「へ~。この大陸の人達はみんな日焼けしてるんだな」
「みなさんこういった黒い肌の方々の様です。この港町だけではなくこの大陸の人達のほとんどがこの色だそうです」
俺はライトさんの説明にへ~っと返しながらみんなとさっそく様々な物を見ていく。
「あ。そういえば金って使えるのか?この国の金じゃないけど」
「大丈夫ですよお父様。一部ではありますがアビスブルーと契約している港町では使用可能です。それ以外の国だと換金が必要となります。記念硬貨として何枚か換金する方もいます」
「やっぱり外国のお金は珍しいか。それでこの国じゃ何が特産なんだ?」
「おもに熱帯の食べ物が多いです。コーヒー豆やトウモロコシ、南国のフルーツなどがあります。そこにもマンゴーを専門に取り扱っている店舗などがありますよ」
金はちゃんと使える様でよかった。
そしてこっそりと路地裏に入り、天使達や獣人達を穴から出てきてもらい、打ち合わせ通りに言う。
「子供達を見付けたら教えてくれ。それからこの大陸にはどんな魔物達が居るのかもついでに調べてきてくれ」
そう言うと子供達は頷いてそっと他の人達に気付かれないように素早く行動した。
それを見た若葉たちの感想がこれ。
「やっぱりドラクゥルさんが1番チートだと思う」
「うむ。ドラクゥル殿の家族を何時でも召喚出来るという力は驚嘆に値する。戦時中はどれだけ便利な事か」
おい王様、戦時中とか不吉な事を言わないでくれ。俺は子供達を探すため力を借りているだけで戦う気は毛頭ない。
こうして俺達はこの大陸を観光するのだった。




