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休みの舞台観賞

 うちの巨人達が近代化学兵器を持っていたらっと思ったが実用的ではないという事で断念していた。

 それその物は別に良いのだが、あの男の武力がどれほどの物なのか分からないのでまだ不安な部分もある。

 それにクレールが1度釘を刺しておいたと言っていたからそれでクレール達に武器が向けられないと思いたいが、子供達の命がかかっていると思うと楽観視できない。


 それからもう1人の武力系である正義君。

 彼自身は問題ない様に感じるが、その周りがどうなっているのか分からない。あのホーリーランドの王様の命令で動くかもしれないし、どんな風に戦うのかはヴラドに聞けば分かるだろうか?

 勇者という言葉もただ王様達がそう言っているだけなのか、それともゲームの力が勇者系の能力なのかも知れない。

 考えだしたら止まらない。子供達の命がかかっていると思うと余計に考えてしまう。

 子供達は強い。でも、もしそれを超える誰かが現れたらっと思うと怖い。

 そんな時俺は戦う力がないからと、ただ傍観しているだけは嫌だ。

 だから俺はそんな最悪の事態にならない様に頑張るしかない。


「パパまた難しい顔してる」


 ベッドの上でゴロゴロしているとブランにそんな事を言われた。

 しばらくあっちこっち遊びまわって疲れたから今日は休みにしている。遊びに来て休むもへったくれもないような気がするが、それでもたまにはただゴロゴロしているだけの日も悪くないのではないかと思う。

 なので今日は食っちゃ寝してだらけている。

 グダ~。


「難しい顔なんてしてねぇよ。ただ遊びに来たのにこうしてグダ~っとしてていいのかと思っただけだ」

「それならいいけど……ヴェルトお姉ちゃん生きてるよね?」

「生きてるだろ。普通に呼吸してるし」


 デカ過ぎるベッド、キングサイズとかこの事を言うのかと実感できるほど大きなベッドに俺達3人は寝ている。

 ベッドのサイズはだいたい5人ぐらい余裕で寝れるぐらいの大きさだろうか。とにかくデカい。

 そこで俺達は寝ているのだが……ヴェルトは静かに、寝息も聞こえないぐらい静かに寝るのでブランが心配するのもよく分かる。

 でも流石に寝た状態で死ぬって事はないだろ。無呼吸症候群になっている様子もないし、規則正しく胸が上下に動く。


 ちなみに若葉は自分の部屋で多分寝ている。ブランとレオのエネルギーについていけずに丁度いい休憩として寝ているはずだ。

 昨日俺がいない分若葉が頑張ってくれたらしく、森林公園のアスレチック広場の競争みたいな感じで一緒に遊び続けたらしい。

 その結果若葉はダウン。今日は一歩も動きたくないと、寝て休んでいる。


 ノワールに関しては昨日俺が見に行った工場に1人で向かった。

 ノワールも工場の現場がどうなっているのか気になっているらしく、みんな休んでいるなら1人でゆっくり工場見学してくると言って出て行った。


 という訳で現在ベッドの上に居るのは俺とブラン、ヴェルトの3人だけである。

 クレールは普通に仕事、ライトさんは自室で休んでいる事だろう。仕事は例の教会の洗礼と一般公開する時の儀式だか祭典の時だけらしい。


「でもこうして何もしないとなると、もったいない感じもするんだよな……」

「そうだね~。ちょっともったいないかも。あ、テレビとかないかな?」

「そう言えばリビングに似た様な感じの奴があったな。見てみるか」

「うん!」

「ちなみにヴェルトは……まだ寝てるか」


 寝室からリビングに移動するだけだからわざわざ起こす必要もないだろう。

 俺とブランはリビングに移動し、テレビらしき物をつけた。

 テレビは昔懐かしきブラウン管仕様、俺が子供の頃はまだ小型だったな~。

 でもこれは本当のテレビではなく、どうやら録画していた動画を見るためだけの機械のようだ。内容を確認すると……王道の勇者と魔王が出てくる物だったり、ラブロマンスとかサスペンスとか色々ある。


「ブランはどれがいい?」

「それじゃ……サスペンス!」

「意外な所を突くな。あとルームサービスで何か頼むか。何にする?」

「ピザとコーラ!あとポップコーンもあれば食べたい!!」

「映画の定番だな」


 部屋に備え付けれらている豪華な黒電話のような物でフロントに連絡すると、すぐに用意してくれるとの話だ。

 一応全部2人前頼み、ブランが食べきれなかったら俺が食えばいいだろうと予想しながら注文した。


「それで、どのサスペンスにする?」

「パパ。このR18-Gってどういう意味?」

「あ~、それ18歳未満の子供には刺激が強過ぎるって奴だ。血がドバドバ出たり、グロイ表現があるけどいいですか?って感じ」

「ふ~ん。殺人現場とかかな?」

「有体に言えばそうだな。でもモザイクかけてないだけって可能性もあるからな……グロくてもいいか?」

「ん~。やっぱやめる。普通に謎解きが見たい」

「そうか。カーテン閉めて映画館風にするか?」

「その方が面白そう。ブランも手伝うね」


 こうして2人でカーテンを閉めている間にフロントからピザとコーラ、ポップコーンがやってきた。

 受け取ってみると意外と全部大きい。アメリカンサイズじゃないか?

 このコーラLサイズって言ってたけど絶対LLサイズだろこれ。

 ピザも1人で食べる用というよりはパーティーサイズだし、俺確かに2人前って言ったよな?


「ブラン……これ全部食べれそうか?」

「これは……思っていたよりも大きいね」

「どうする?1つを2人で分けて食べるか?」

「それは何となくヤダ」

「それじゃ先に食べな、余ったら俺が食べてやる」

「流石パパ!やっさし~」


 からかいながら言うブラン。

 俺も昔はこんな感じだったな~。ファミレスで食べきれない分は父ちゃんと母ちゃんが食べてくれた。

 そんな事を思い出しながら映画を見始める。


「……これ映画じゃないな」

「舞台だね、これ」


 録画されていたのはサスペンスの舞台だった。

 でも俺は舞台を見るのは初めてであり、どんな物なのか少し気になったので見続ける。

 内容は王道のとある洋館で起きた殺人事件。殺されたのは1人だけだがみんなで犯人を探し出そうと必死になっている姿は臨場感があふれている。

 映画も悪くないが舞台も悪くないなっと思いながらじっと見ているとブランにつつかれた。


「パパ、あーん」

「あーん」


 ポップコーンを口元に運んでくれたので1つ食べる。

 味は王道の塩だな。特に味の事を言っていなかったが塩しかないのかな?個人的にキャラメルは甘くて歯に引っ掛かるから好きじゃないけど。

 舞台を見ながら時々ブランにポップコーンを食べさせてもらいながら見続けると舞台が終わった。

 やっぱり最後はみんなで舞台の前で挨拶するんだな。

 意外と良い暇潰しになった。


「パパ、次のやつ見てもいい?」

「次ってもう決まってるのか」

「このラブロマンスの舞台だって」

「ポップコーンとコーラの貯蔵は十分か」

「ピザもあるよ、パパ」


 こうしてラブロマンスを見始める俺とブラン。

 途中でブランが食べ過ぎであといらない、と言ったポップコーンを片手に食べながら舞台を見ていると、ブランが唐突に聞いてきた。


「パパも結婚願望ってある?」

「突然だな。まぁ全くないと言えば嘘になるが、すぐに欲しいという程求めても居ないかな」

「ライトはどう」

「なんでライトさんなんだよ」

「1番近い異性かな?っと思ったから」


 お互い視線は舞台の方を向いているので顔を合わせる事はないが、それでも何故か真剣に話している事は分かる。

 舞台の方を半分聞き流し、ブランの質問の意図を考えながら答える。


「確かに1番近いだろうが、あの人教皇だろ。結婚できるの?」

「普通にできるよ。教皇だろうと枢機卿だろうと結婚は認めてるもん。枢機卿のおじいちゃんおばあちゃん達だって孫いるよ」

「孫いるんだ。てっきり純血がどうこうって拘るタイプだとばっかり思ってた」

「それは人によるかな。たま~にいるんだよね~、私にみさおを捧げますって言ってくる人」

「操って女性限定の言葉だっけ?」

「何故か言ってくるのは男の人ばっかり。童貞を貫いたって私何も嬉しくないし、普通に結婚して子供の顔を見せてくれる方がうれしいのにな~」


 操って女性だけの言葉だと思ってた。違ったのか?

 そんな細かい所に疑問を抱きながらもブランの意図が見えない。

 確かに俺の近くにいる結婚できそうな異性といったらライトさんだろう。他は既に既婚者だったり、子供達ばっかりだ。

 だから近くで考えるのであればライトさんというのはまぁ納得できる。

 でも結婚となれば相手の意志なども合わさる必要がある。俺が結婚したいから近くにいるライトさんでいいやではあまりにも不誠実だ。

 好きになったから結婚してくださいならまだ納得できるが、そんな結婚してみたいから結婚するなんておかしいだろ。


「悪いがライトさんに対して結婚したいって感情はないぞ」

「それは分かってる。でもブラン達の事情を知っている人って貴重でしょ、かと言ってパパは私達娘の誰かと結婚するつもりもない。そうなると1番条件が合いそうなのはライトかな~っと思って」

「条件だけ考えればな」

「パパにその気がないなら仕方ないか。ごめんね、変な事聞いちゃって」

「別に良いよ。それともブランはお母さん欲しいか?」

「全然。パパが居るし、お姉ちゃん達もいっぱいいるから十分だよ」


 お腹いっぱいと言っておきながらピザに手を出すブランを見ながら、俺は結局ブランが何を言いたかったのか分からなかった。

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