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楽屋で

 楽屋に入れるかどうかスタッフさんに聞くとあっさりと通してくれた。

 クレールから俺の事は聞いていたらしく、俺が来たら通すように言われていたらしい。なのでクレールの楽屋に行くと、そこは楽屋と言うよりは個人所有のプールの様な感じだ。

 確かにテレビとかで見る化粧台やドレスなども存在するが、それ以上に目立つのが中央のプール。もちろん昼間遊んだプールとは比べ物にはならないが、水族館で見るイルカやアザラシのショーを行うプールのような物が楽屋のほとんどを占めくくっているのでそちらに視線が向いてしまう。

 そんなプールの中で、クレールはステージで着ていたドレスのままプールに浮いている。


「クレール。いい歌だったよ」

「ありがとうお父様。そう言っていただけると嬉しいわ」


 そう言うクレールは前に話していたような威厳はなく、話し易い雰囲気を出していた。

 プールで浮いてリラックスしているっと言う事もあるんだろうが、常にあの威厳のある状態であるはずがないか。

 クレールは元々穏やかな性格だし、ヴェルトほどではないがのんびりとするが好き。ただ何となく海を泳いで散歩してくると言っていた事もあるから穏やかなのは好きなはずだ。


「これ、アルカディアで作った花束。受け取ってくれ」

「ありがとうお父様。懐かしい香りがします」


 そう言ってプールから出て受け取ってくれた。クレールは本当に嬉しそうに花束をそっと置く。

 プールから出たばかりなのに体には水滴1つ付いていない。不思議なもんだと思いながらも俺は提案する。


「クレール。今度一緒に遊ばないか?せっかくの観光都市……と言ってもお前の国だけど、せっかくなんだし一緒に遊んで思いで作らないか?」

「……そうですね。それはとても心地いです。ですがもう少しだけ待っていただいてもよろしいでしょうか。実は明日、白夜教の教皇に新しく建てた教会の洗礼に同行するんです。その後からなら大丈夫です」

「あ~。そう言えばライトさんもそんな仕事があるって言ってたな。それじゃそのあとライトさんと一緒に来いよ。そうすればみんな一緒に遊べる」

「ええ。ぜひ参加させていただきます」


 クレールは心の底から嬉しそうに笑う。

 っと言っても明日の午前中はまだ予定が決まってないんだよな。ブラン達もライトさんが仕事なら遊ぶのは午後からにしようという感じで決まっているし、俺も午前中はゴロゴロしてるだけにしようかな?


「何かお悩みですか?」

「ん?ああ顔に出てたか。実は明日の午前中どこに行くか決めてないんだよ。それでどこかいい場所ないかな~っと思って」

「午後はどちらに?」

「レオ達が今日行く予定だった遊園地。正直ブランとレオの身長制限が気になるところだけど」

「ふふ。小さな子供でも乗れるジェットコースターはいくつか用意していますよ。当然大人用と比べると少々刺激が弱いのは申し訳ありませんが」


 そう言いながら俺はクレールに促されてソファーに座る。

 クレールはぴったりと俺にくっ付いているので少し気になるが、久しぶりなのだからこれぐらいいいだろう。

 そしてそのままクレールは俺の肩から膝の上に頭を移動させて甘える。

 何をして欲しいのか察しがついたんで俺はクレールの腹を撫でる。

 クレールは何故か腹を撫でるとすごく喜ぶ。SSSランクに進化するまでも比較的大きな方だったから撫でる時は鼻先か腹を撫でる事が多かったからだろう。

 だから俺に撫でられる=お腹っという構図がクレールの中で出来ているのかも知れない。


「だからその午前中はどこに行こうかな?って考えてたんだよ。どこかいいところ知らない?」

「そうですね……それでは工場見学などはいかがでしょう」

「工場見学?どこの工場を見学するんだ?」

「ブランも居る事ですし……アイスキャンディーの工場はいかがでしょう。アイスキャンディーは遊園地に近い所に作られていますし、完成品は遊園地で売られています。もちろん他の店で食べれますが、可愛らしいデコレーションがされているのは遊園地が1番種類が多いでしょうね」


 お腹を撫でられてうっとりとしながら答えるクレール。本当に腹を撫でられるのが好きだな。

 クレールの肌はすべすべでとても触り心地がいい。水の中に住む種類だからかしっとりとしていて柔らかいが決して太っている訳ではない。

 いつまでも触っていたくなるようなもちもち感。本来の姿の状態だとウオーターベッドってこんな感じなのかな?っと思う。


「お父様……情熱的に触り過ぎです」

「おっとすまん。触り過ぎたか」

「触っていただけるのは嬉しいのですが、このままだと、その……」

「恥ずかしいか。悪い悪い」


 ちょっと名残惜しいが俺はクレールの腹を撫でるのをやめた。

 でもクレールは俺の膝から頭を上げる事はなく、寝っ転がって今度は頭を撫でる様に甘える。

 頭を撫でるとクレールは心配そうに言う。


「お父様。もう、急に居なくならないで下さいね」

「当然だ。もう二度とこんな事はしない」

「お父様の意志ではないと聞いていますが、それでもやっぱり……」

「不満があるなら思いっ切りぶつかって来てくれ。それぐらい親として受け入れる」

「……はい。それではその内」


 あとはゆっくりとクレールが満足するまでゆっくりと頭を撫で続けるのであった。

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