表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/211

アビスブルーの神殿

最近感想が届く様になりました。

ありがとうございます。

励みになります。

 クレールに会う30分ほど前にタイタンさんとエル・グランデがやってきた。


「お車の準備が出来ております。こちらにどうぞ」


 そうタイタンさんに言われて部屋を出てホテルの地下駐車場にあるリムジンで向かう。

 用意されていたリムジンはタイタンさん達も余裕で乗れるほどだから高さが3メートルはある。超巨大なリムジンだ。


「地下駐車場まであるのか。置ける台数は少ないみたいだが……これでもこの世界ではオーバーテクノロジーだろ」

「こちらもクレール様のご要望です。お客様を安全かつ直ぐに移動するには地下が良いと。それに他の大陸では地下はまだ未開の地と聞いています。ですのでこれほど広い地下はないでしょう」


 そうなのかも知れない。地下って狭いイメージあるし、他の国とかがどうなのか分からないけど。

 とにかくデカいリムジンに乗って俺達はトンネルを進む。

 そして運転席に座るエルが申し訳なさそうに言う。


「みな様、申し訳ありませんが神殿がどの辺りにあるのか把握できない様にこの先ずっとトンネルとなっております」

「え、そうなんだ」

「ですので代わりにご用意したお飲み物やお菓子などを摘まんでお待ちください」

「ここにある物は基本的に巨人サイズですが、大丈夫ですか?コップなどは人間サイズの物も揃えておりますが」

「巨人サイズ?巨人にしては小さい気がするが」


 アルカディアにも巨人と言う種族は存在した。

 基本的に身長10メートル以上の物が普通であり、進化によってさらに巨大化する感じだ。俺が知っている巨人の最上級種族、ティターン達がそれぐらいの大きさだ。

 ティターン達の場合は身長50メートルの超巨大サイズ。普通の巨人やノワール達と比べてもはるかに大きい。彼らに並ぶ種族はそう多くない。ヴェルトはこの世界でも成長して何キロサイズだか測ってないし、他に居るのはこれから会うクレールとルージュぐらいか。

 種で言えば巨人の他に3種巨大なモンスターが居る事になるが、巨人以外はSSSランクのモンスターで1体しかいないので、ほぼ巨人族しか超巨大と言える存在はいないと言っていい。


 俺のそんな疑問にタイタンさんは答えてくれる。


「私や私の先祖達は元々この世界に居た巨人族です。基本的に5メートル程の身長で大きくても6メートル前後と言った所でしょう。そしてドラクゥル様の知る巨人族達が2000年前に現れました。祖父や祖母たちはその日現れた事を昨日の事のようにいつも言ってくれています。みな様のおかげで助かったと」

「助かった?それは何でですか?」

「食糧難です。当時の先祖達は季節ごとに旅をする種族でした。森の恵みを巨人族が食べ尽くさないようにするための措置だったそうです。ですが人間達から見れば大きくて恐ろしい存在が毎年やってくるわけですから、倒そうとする動きが強まり、今後どうするか相談していたのです」

「でも……何でそこでクレールたちの話が出てくるんです?」

「その時現れたのです。遠くの海から現れた我々よりも巨大な、本物の巨人達に先祖達は大陸と共にやってきた巨人達に忠誠を誓い、その大陸に住まわせていただく事になりました。そこで仕事をし、血筋を繋いできたのが我々の先祖です」


 どうやらうちの子達は随分と人助けが大好きなようだ。

 ブランは人を助けてホワイトフェザーで信仰されているし、ヴェルトもグリーンシェルの人達を助けていた、ノワールは吸血鬼達と共に生き、クレールは巨人族達と暮らす事になった。

 本当にどうしてこんないい子達に育ったんだろう?親として幸せ過ぎるだろ。


「なるほど。大体の歴史は分かりました。うちの子達と仲良くしてくれてありがとうございます」

「いえ!我々の先祖が助けられたのです!感謝するのはむしろこちらなのです」

「たとえそういう事実があったとしても、子供達を受け入れてくれたという事実が嬉しいのですよ。子供達はこの世界に受け入れられている、それが親としてとても嬉しいんです」


 そうグラスに注いだワインを見ながら言う。

 よく分からないが「なるほど。これが神ですか」っとタイタンさんは言った。

 だからこの場でライトさんにも言う。


「ライトさん。改めてブラン達の事を受け入れてくれてありがとうございます」

「おやめくださいドラクゥル様!!我々の先祖もブラン様達に助けられたのです。お礼を申し上げるのは我々の方なのですよ!」

「でもこういう時にしか言えないし……」

「では受け入れますから!受け入れますからこれ以上はおやめください!!」


 何故か顔を真っ赤にしながらこれ以上話をさせないようにするライトさん。

 何でだろうと思っていると、ブランも恥ずかしそうに言う。


「パパ。流石にこれは恥ずかしいよ……」

「そうか?子供が世話になっている人に礼言っただけなんだけどな」


 そんなに恥ずかしがるような事だろうか?

 そう思っているとライトさんが無理矢理話題を変える様にタイタンさんに聞く。


「と、ところで私もクレール様の神殿に参ってもよろしいのでしょうか?」

「ご安心ください。クレール様ご自身ご許可を出しております。妹君であるブラン様を信仰する者として構わないと」

「それはありがとうございます」


 トンネル内の等間隔に光るライトをぼんやりと見つめながら時間を潰すと、ゆっくりとリムジンが止まった。


「到着いたしました」

「ありがと」


 エルがそう言いながら後部座席の扉を開けてくれる。

 降りた先に見えたのは巨大な神殿。高さだけでも100メートルはあるんじゃないかと思う程に天井が高い。

 神殿は石造りの様で、1つの巨大な岩をくりぬいて作った様になっているが、入り口の柱には精密な彫り物がされておりただ太い柱があるだけじゃない。

 さらに海の光がどこからか入っているのでとても幻想的な姿を見せる。今日は月明かりがあるので余計に綺麗に見えるのだろう。


 そして神殿の入り口には2人の巨人が門番の様に待ち構えていた。

 俺は2人の前に行き、嬉しさと、申し訳なさを混ぜた声で2人に言う。


「久しぶりだな。エル・グランデ、アレクサンダー」

「お久しぶりです。父上」

「久しぶりだ。父よ」


 丁寧な口調で入口の右側に立っているのがエル・グランデ・ドラクゥル。SSランクモンスターのティターン種だ。

 先程言った様にティターン種は50メートル程の巨体であり、身体は戦士として筋肉が発達している。

 エル・グランデは女の子ではあるが、パワー系のスポーツファイターの様に筋肉モリモリだ。胸とかは女性らしいのだが、割れた腹筋に見事な手足の筋肉。

 筋肉のある女性が好きという男性にはたまらないだろう。それに巨人なだけあって胸とかもスケールが違う。文字通りお山が2つある。


 左側に居るのはアレクサンダー。こちらもティターン種でSSランクモンスター。

 エル・グランデとそう変わらない身長だがエルよりも筋肉は発達していない。どちらかというと水泳選手の様な筋肉の付き方であり、筋肉の盛り上がり具合ではエルに負けている。

 服装は映画で見たローマの剣闘士のような格好で、左手に丸い盾、右手にはモリのようになっている三又の長い槍を持っている。


「2人とも立派になったな。この世界はどうだ?狭くないか」

「狭くありませんよ父上。この大陸は我々が造った物、最初から狭いと感じる様な事はありません」

「それにクレールが人の姿になれる様にある程度サイズ調整が出来るようになった。今回は父と再会できるから元の姿のままで迎えたかっただけだ」

「そんな事が出来るようになったのか。それとこっちに居るエル・グランデは……」

「私の娘です。この世界で得た夫との間に出来た娘です」

「それじゃ……俺の娘であるエルはエルって呼んで、孫のエルはエルちゃんでいいか?」


 2人ともエル・グランデなので分ける必要が出た。

 反対されないだろうかと思っていると、意外と恥ずかしがることもなくエルちゃんは受け入れた。


「構いませんよお爺様。昔から私の事を知っている大人達だとエルちゃんと呼ばれていましたので、少し懐かしいです」


 眼鏡のクールビューティー秘書がちゃん付けって、なんか可愛い。

 とにかくこれで了承は得たのでこれからはエルちゃんと呼ばせてもらおう。


「それではクレール姉さんの元にご案内します。暗いのでお気を付けください」


 こうして俺達はエル達の案内で先に進む。

 先に進む間の感想は、まるで海の中を歩いているかのような幻想的な光景だった。

 石造りになっていたのは入り口だけで、他の通路はガラス張りだ。丸いトンネル状に造られており、海の上からさす月明かりと反射する魚がさらに魅力的な輝きを放つ。波によってゆらゆらと変わる光の動きも美しい。

 そんな幻想的な光景の中、俺達は話す。


「ところでエルの旦那さんは?挨拶しておきたいんだが」

「申し訳ありません父上。夫は10年前に他界してしまいまして、今はお墓です」

「え、あ、その、すまん」

「そう申し訳なくしないで下さい。夫は寿命で亡くなったのですから仕方がありません」

「それはそうかも知れないが……」

「でしたら一緒にお墓参りに行ってくれませんか。お爺様が来てくれたと父が知ったら喜んでくれます」


 エルちゃんがそう言ってくれた。

 そうだな。俺が出来るのはそれぐらいだよな。


「わかった。お供え物は何がいい?」

「そうですね……父の好物はクジラですね。よくモリを持って直接獲りに行っていました」

「流石巨人の話。物理的なスケールが違う。アルカディアで育てたでっかい魚とかでもいい?」

「あら美味しいそうですね父上」

「アルカディアの魚か……久しぶりに食うな~」


 この反応なら問題なさそうだと思いながら歩いていると、ノワールとブランが難しそうな表情をしながらエルとアレクサンダーに聞く。


「アレクサンダー。この奥に本当にクレールはいるのか」

「当然だろ兄貴。まぁ住んでるとは言わないけど」

「では聞き方を変えよう。クレールと出会う場所の手前に何がある」

「墓だ。俺達アルカディアで生まれ、育った俺達のための墓がある」


 その言葉につい俺は足が止まってしまった。

 この先に、子供達の墓?


「アレク!」

「どうせ通るんだから仕方ねぇだろ。それにみんな笑って死を迎えたんだ、嘆く事はない」

「それでもですよ!私達は彼らの終わりを知っていますが、知らない父上は傷付いていますよ!」

「大丈夫だエル。大丈夫、大丈夫だからアレクサンダーを怒るな」

「しかし!!」


 俺はそんなにひどい顔になっているのだろうか?

 ヴェルトがそっと俺を支えてくれる。

 そう言えば子供達の墓を見るのはこれが初じゃないか?

 ブランの所では基本的に天使という最初から寿命設定がない存在だけ、ノワールの所も同じように吸血鬼だから寿命がない、ヴェルトの所ではみんなSSランクになっていたので寿命はない。

 でも……巨人たちは全員SSランクまで育っていた訳ではない。Bランクの普通の巨人だっていたのだ。設定では500年ぐらいで死ぬ。だから単純計算すれば彼らのひ孫ぐらいが俺の目の前にいる訳で――


 そう考えている時にふと何か温かい物が流れ込んできた。

 ブランとヴェルトの回復魔法、ノワールの魂に関する魔法が俺に使われていた。


「ど、どうした?」

「パパ……顔色悪いよ?大丈夫??」

「……無理、ダメ」

「自身を責める感情が一気に噴き出していたぞ。深呼吸して落ち着け」


 そんなに動揺していたのか。まだまだ父親として半人前なのかな。子供達にこうして支えられるのは。

 俺はノワールの言う通りに深呼吸をして落ち着かせる。

 何度も深呼吸をしている間にエルが語る。


「確かに父上に会えず残念に思う兄弟達は居ました。でも責めてはいません。むしろ一緒に居ない間の思い出を教えてあげて欲しいと言われたほどです。必ず会えるから、必ず迎えに来てくれるから。みんなそう言って、笑いながら寿命を迎えました。ですから父上。どうか自身を責める事だけはしないで下さい。みんなのお墓の前で、迎えに来たと言っていただけないでしょうか」

「……そう……だな。俺はみんなの事を迎えに来たんだ。こんな事してらんねぇか」


 自分の感情を制御しながら、俺は前に進む。

 そして墓がある所は共同墓地の様な感じで大きな巨人サイズの墓が置かれていた。

 墓には『アルカディアで生まれた者達』と書かれている。

 俺はその前で手を合わせ、そっと呟く。


「かなり遅れてすまん。迎えに来たぞ」


 そう呟いた時、何となく誰かの笑い声が聞こえてきた気がした。

 1人だけではなく、複数の笑い声が聞こえた気がした。


「パパ……大丈夫?」

「何がだ?」

「パパ、泣いてるよ」


そう言われてから目元を拭うと、確かに濡れていた。


「あはは……カッコ悪いな。子供達の前で」

「ううん。カッコ悪いなんて事ないよ。泣いていいんだよ」

「……寂しい時、泣くの、自然」


そうブランとヴェルトに言われてしまった。

そうか……俺は悲しいだけじゃなくて、寂しいのか。

俺より先にこの世界に来て2000年。その本当の長さを実感した気がする。

そしてノワールが何か感じ取った様に言う。


「父よ。弟達はみなアルカディアに帰った。私には分かる」

「そうか……迎えに来れたか……」


 思わぬ形での墓参りになってしまったが、本題であるクレールの元に行かないといけない。

 すぐ先にある扉に向かって俺は歩き出した。

種族  ティターン

名前  エル・グランデ・ドラクゥル アレクサンダー・ドラクゥル

ランク SSランク


 巨人族の最終進化。

 身長50メートルを超える超巨体。種族的な特徴として男女関係なく筋肉質な身体になりやすい。

 生まれもっての戦士である事が多く、気性は荒い。

 武器や道具を綺麗に整備する手先の良さも兼ね揃えており、彼らの使う武器は100年を超える事も多い。同時に鍛冶に特化した個体もいると噂がある。


 補足

 エル・グランデは初の女性ティターンである。普段は丁寧な言葉使いだがキレると豹変する。

 彼女が愛用する武器は巨大なくぎ抜き付きの金づちであり、平たい部分で殴って相手を陥没させたり、釘を抜く部分で相手をえぐったりとR-18Gが付くような戦い方をする。

 アルカディアでは絶対に怒らせたくない相手トップランクの1人。


 アレクサンダーは王道的な戦い方をする。丸い盾と三又の槍で戦うまさに戦士と言う感じ。

 特技は泳ぎでよく海で遠泳すると言って泳いでいた。

 他の巨人たちに比べると細マッチョである事が悩みの種の様だが、泳ぎに適した筋肉になっていると言った時から気にしなくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ