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吹雪の元凶?

 雪合戦をしてダイエットに励むガブリエルだが、グリーンシェルの方は未だに吹雪。グリーンシェルの冬とはこう言う物なのかと若葉に聞いてみると違うという。


「確かに冬に何度か吹雪く事はありますけど、ここまで長いのは初めてだってグリーンシェルの人達が言ってますよ」


 との事。

 それでもアルカディアでは落ち着いた感じで穏やかに雪が降っている。

 超特大コタツに入る俺にブラン、ノワールに若葉、流石に吹雪がひどすぎてアルカディアに逃げてきたヨハネ達など名前持ちの子供達が多くいる。

 ちなみにガブリエルはサウナで汗をかいて来ると言っていたのでここには居ない。


「ヴェルトにヨハネ、ヴァルゴ達もこの吹雪は初めてか?」

「……ん」

「ここまで長引く吹雪は流石に異常だ。寒過ぎて俺達が音を上げる程だぞ」

「私達エルフはもっと先に音を上げましたよ。ヨハネ達の様に天然の毛がある訳じゃないんですから」


 でもこのマイルームを含む施設の温度は一定だ。住んでいる者達に合わせて最も適した温度に自動設定されるので何とも快適な空間だ。

 コタツに入りながらチェスをするブラドとジェンは真剣にチェスをしながら言う。


「ここまでの吹雪となると、我らの兄弟がかかわっているのではないか?父上」

「その考えには賛同します。1度グリーンシェルで本格的な調査をした方がよろしいのでは?」

「う~ん。そう言われるとそう感じるな……ヴェルト。何か感じないか?」


 そうヴェルトに聞くがゆっくりと首を縦に振った。


「……ん。でも、分かんない」

「子供達かどうかまでは分からないか……今のところどんな感じだ」

「……吹雪、魔力、混じってる」

「吹雪を起こすモンスターとなると……1番最初に思い付くのはやっぱり雪女か?もしくは雪ん子達が遠足にでも来たか?」


 雪女と雪ん子。

 かなり王道な妖怪だと思うが一応説明。

 雪女のランクはSランクモンスターであり、寿命は存在しない。アルカディアでは妖怪というジャンルは存在せず、どれも精霊と言う形になる。姿は肌は白く、髪は水系に属するからかかなり白っぽい青。服装は白と青の和服でぶっちゃけ見てるこっちの方が寒い。

 雪ん子はそんな雪女の進化前でCランクモンスター。小さな子供の姿でワラで出来た防寒着のような物を着こんでいる。無邪気な性格が多く、この雪ん子の知識と魔力量を上げる事で雪女に進化する。


「雪女……聞いた事のない魔物の名前ですわ」


 声は聞こえるが姿は見えないエリザベートはコタツの魔力に屈してコタツムリになってしまった。しかも服装もこの家にあるどんぶくやら何やらを着こんでいるのでかなり残念な姿になってしまっている。

 恐るべし、こたつの魔力。


「……エリザベート様、淑女がその様な姿で寝ているのはよくありません。せめて起き上がって下さい」

「で、出たくありません」

「十分温かい恰好をなさっているのですから起き上がって下さい!」

「あ、あぁ~」


 レディーに強制的にコタツの外に引きずり出されたが、すぐに戻っていくエリザベート。これ、他の吸血鬼達には見せられないな。

 でもこの世界で雪女を知らない?この世界に俺の子供達が紛れ込んでいるとすれば多分いると思うんだが。


「この世界だと雪女ではなく、地方によって様々な名称で呼ばれているので色々ありますよ。パープルスモックでは雪の女王、冬の女王などと呼ばれる事の方が多かったでしょうか」


 カーミラがそう説明してくれる。

 なるほど、場所によって呼び方が違うのか。でもそうなると探すのも大変そうだな。

 この辺りでは雪女の事を何て言うんだろう?


「だがこの辺りに雪女が来た事はないぞ。雪ウサギが大量発生した事件はあったが」


 雪ウサギは雪で作ったウサギの事ではなく、Eランクモンスターの方だ。

 見た目はまんま雪ウサギなんだが、普通に生きてるし、見付かるとかなりの勢いで逃げるので逃げ足だけはかなり速い。

 戦闘能力皆無のペット枠。


「あれは……大変だったね。あのウサギ、雪に隠れて逃げ回るから見付け辛いんだから」

「ランクが低いくせにすばっしこいから嫌になった」


 ゴールドとシルバーもその事件に駆り出されていたのか、そんな事を言う。


「それじゃ今度グリーンシェルで雪女でも探すか。雪崩達元気かな~」


 俺が育てた雪女の名前が雪崩。その妹として育てていた雪ん子がみぞれあられ

 滅多な事がなければ生きてると思うんだよな。精霊だから寿命ないし。

 とりあえず明日様子見としてグリーンシェルに行くか。


 ――


「ドラクゥル様、丁度良かった。これからあなた様をお呼びする様ご命令を受けたところです」


 次の日、白い迷彩柄のコートを着てグリーンシェルの城に着いた俺は、門番さん達の駐屯所でそんな事を言われた。


「この吹雪の中を?いくら近くと言っても厳しいんじゃないか?」

「ええ。ですのでそちらから来ていただき本当に感謝しています。どうぞこちらに」


 城を中心に張られた結界はヴェルトやブランが張る結界に比べると非常に弱いが、吹雪を少しは抑える効果があるらしく、城内は町ほどひどい状態ではない。

 門番さんに案内され、今日は珍しく直接王様の私室に通された。

 そこには既に王様と女王様、レオが居て暖炉の火で温まっている。

 それに温かそうな魔物の毛皮のコートまで来ているので完全防寒だ。


「ドラクゥル殿。このような姿で申し訳ない」

「この寒さじゃしょうがないですよ。これ、この間ガブリエルが作ったお汁粉です。温めて食べて下さい」

「ありがとうございます」

「お兄さんありがとう」


 女王とレオが動かない。やっぱり寒いもんな。


「それで、俺を呼んだって事はやっぱり魔物関連ですか?」

「そうだ。今この国には冬の女王と冬将軍が訪れ猛吹雪が発生している事が分かった。本来であれば我々が対処するべき物なのだが……頼まれてくれないだろうか」

「冬の女王に関しては丁度昨日子供達から聞きましたけど、冬将軍?」


 天気予報に出てくるあれの事でいいのか?

 アルカディアにもそれなりに冬限定のモンスター的な存在は居たが冬将軍なんていなかったぞ。


「冬将軍は冬の女王の伴侶と言われ、ここいらでは見かけない鎧を着ている。腰には我々の知る剣とは違う剣を差し、無礼者を斬る。逆に礼儀のある者には暴力的な事はしない、こちらから手を出さなければ何もしない事が特徴の魔物だ」

「なんか不思議な存在ですね。つまりその冬将軍と冬の女王の夫婦が来た事でこの猛吹雪が起きてしまったと」

「そうだ。そしてかなり重要な話なのだが――冬将軍と冬の女王は3組いる」

「思っていたよりも多いな!」

「しかもその子供もいるために余計に力を増している。冬の女王の子供に手を出せば国は氷漬けにされ、春の来ない地にされるとよく言われている」

「うわ~。うっわ~。この国危機的な状況じゃないですか」

「うむ。本来であれば少々の吹雪では冷気も通さない結界なのだが、流石に冬の化身と呼ばれる魔物達が3組も来るとは想定されていない。お陰でこの国は吹雪により機能が完全にマヒしてしまっている。この状況を打破しようにもこの吹雪ではこちらが凍ってしまいそうだ」


 どうやらその様で。

 部屋の中なのに外で着る様な服装をしているんだから寒いという感情がとても伝わってくる。

 考えてみればライオンの獣人が寒さに強いとは思えない。エルフ達だってほとんど人間と変わらないんだから、この吹雪の中で活動するのは無茶ぶりにも程がある。


「分かりました。それじゃちょっと冬将軍と冬の女王を探してきます」

「度々すまない。この国の恩人だと言うのに……」

「うちの子の可能性があるならどこにだって行くのが心情ですから。むしろ情報をくれてありがとうございます。早速探してみますね」

「よろしく頼む」


 こうして、この国で2組の冬将軍と冬の女王を探す事になったのだった。

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