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果樹園。順調に成長中

 国家事業なのに結構緩い感じでやっている果樹園製作。

 途中ライトさんが帰ったり、俺はこっちに残って果樹園製作に協力する事になったのでクウォンさんに手紙を書いて野菜は送る事にしたり、なんだかんだで色々やっている。

 そして1週間経った今日。果樹園の木々が最低限育った。


「う~ん。ここまで育つのに1週間かかるってやっぱアルカディアとは違うからかな?」

「いえ……たった1週間でここまで木が大きくなるのは凄い事だと思いますが」


 果樹園の木を俺と一緒に見ているのは女王さん。

 女王さんは誓いのバラの時に話したように植物に関してとても広い知識を持っている。国家事業なので最高責任者は女王さんになるそうだ。

 ちなみにノワール達と話した結果、アルカディアの事は教えておいた。今後の事も関係してくるし、俺がどこに住んでいるのか教えておくのは必須との事だ。

 そしていざと言う時、俺の事を呼べるようにしておきたいとの事。


「でもアルカディアだと季節に関係なく1週間で実を付ける所まで行けますから。それに多分この育成状態だと品質は普通、いくつかは高品質という感じになりそうです」

「以前わたくし共に分けてくださった果実の品質はどの程度なのでしょうか」

「高品質ですね。本当の事を言うとその上にもう1つ上のランクがあるんですが……こっちの人達に食べさせると奪い合いになりそうなんですよね……」

「果実1つでですか?」

「以前俺が住んでいる町の商業ギルドに売りに行った時、最高品質の物を試食していただいたのですがその時はみなさん夢中になって食べてましたね。今度渡すので食べてみてください」

「申し訳ありません。何だか要求してしまったようで……」

「そんなの気にしないで下さい。ただ条件として絶対に家族のみなさん以外に食べさせないでくださいね。生産という理由ではなくて、単に美味すぎるので」


 流石に何度も念を押すとそんなに凄いのか?っと言う表情をする女王さん。

 それに……


「それに、どれだけ環境をよくしてもおそらくこの果樹園で生産できるのは高品質まででしょう。その理由は以前言いましたよね」

「はい。ドラクゥル様より頂いた最高の肥料、これを作り出すだけでも我々には力不足かと」


 俺がアルカディアで作っている肥料は基本的に堆肥だ。つまりアルカディアに居る子供達の糞尿がそのまま肥料になっている訳である。

 ただ……問題はその子供達の種族だ。

 ドラゴン系モンスターの糞が5割、海獣系モンスターの堆肥2.5割、枯れた植物系モンスターの蔓や葉が1.5割、獣系モンスターの糞尿1割、天使系モンスターの糞尿0.5割という鬼畜な高難易度なのである。

 この世界のドラゴン系モンスターは世界中に居る事は居るが、1部の強いドラゴンは年中放浪しているので糞とかを拾ってくるだけでも超苦労するし、ドラゴン5割と言ってもそれは堆肥全体での割合であり、実は全属性のドラゴンの糞を混ぜたものを使用する。

 火、水、土、風、光、闇のドラゴン達の糞を全部集めるとか現実的ではない。

 俺はアルカディアと言う場所にいたからこそ出来たのであってこの世界じゃそれは不可能だろう。


 更に最上級の中でトップなのがブラン達SSSランクモンスターたちの糞尿で作った堆肥である。

 実は全員ドラゴン扱いだったんだよね~。

 SSSランクモンスターはどれも他の種族に比べるとかなり大きい方なので1度に排泄する量も結構多いのだが……それでも使い続けるとなくなるんだよね。1部補充出来ないから。


 当然この事までは話していない。

 だって神様たちの糞を使えば楽だよ!なんて言えるわけがない。

 ブランは今でも糞を採取する時に恥ずかしがるし。

 当たり前だけど。


「でもまぁしばらくは大丈夫だと思いますよ。ヴェルトの甲羅に近い部分の土を使えば品質はかなり良くなります。少し汚く聞こえると思いますが、人間でいう所の垢みたいなものを利用すれば元気に育ちますよ。そこまで掘るのは大変でしょうけど」

「ええ。それは最終手段として考えておきます。ヴェルト様は再び土の中にお戻りになりましたので」


 ヴェルトもゆっくりと穴を掘りながらまた前のように手足をしまった状態で土の中に帰った。

 その場所は前と全く同じ場所ではなく、ギルドから50メートル程遠ざかった場所に穴を掘ってまた埋まった。

 またギルドのすぐ近くで掘ると周囲の町も土を被ってしまうので少し離れて掘ったらしい。なので現在掘り返した土を再び平らにするために工事中だったりする。その時にヴェルトが触れた土がかなりの栄養を含んでいる事が分かり、グリーンシェルの研究者達にはちょっとしたお祭り騒ぎになったとか。


「しばらくはお目覚めになった際に落ちてきた土と、お戻りになる時の土で大丈夫でしょう。ご安心ください」

「それもそうですね。かなり大量にあるし」


 現在グリーンシェルではこのヴェルトの土を使って新しい肥料の製作中だそうだ。


「……このままいくと農業大国みたいになりそうだな」

「それはそれでよい事です。自国の生産性の向上は国として喜ばしい事ですから。そこから新たな肥料の生産などに繋がれば自国の農民だけではなく、他国に肥料を売る事も出来ます」

「肥料を買う国ってあるんですか?」

「しばらくは裕福な国か、大きな農場を管理している方々になるでしょうね。このまま順調に果実が実れば大きな利益になるのは目に見えています。しかしよろしいのですか?我々が果実を大量に作ってしまうと、ドラクゥル様の収入が減ってしまうのでは……」

「俺はあまりこの世界の物価に詳しくないので構いませんよ。それに俺がギルドに卸しているのは野菜、果物はお世話になった方などに送る程度ですので販売はしていないんですよ。前に同じ果物をギルドマスターに送った事があったんですが、その時是非売りに出したいと言われましたが断りました」

「それはまた……少々勿体ない様に感じますが」

「家で当たり前に食べている物を高く売ろうなんて思いませんよ。野菜の販売も元々他に金を稼ぐ方法が思い付かなかったからですし。正直お金儲けにはあまり興味がないんですよ」


 それにこの世界で欲しい物なんて滅多にないからな……

 そう言えば最後に金使ったの何時だ?家でアルカディアの管理をして、飯食って寝るの繰り返しだから金を使う場面が全然ないんだけど。食い物だって自主生産できるし。

 あれ、マジで最後に金使ったの何時だ!?ノワールの事迎えに行った時から金使ってないんじゃね!!


「ふふ、これほどまでに素晴らしい物をお作りになるのに金銭には興味がありませんか。それでは今回の報酬はどのようにお支払いしましょうか」

「別に要らないですよ。ヴェルトと会える事が出来ましたし、これ以上の報酬はないですから」

「ドラクゥル様。あまり欲がないとこういったお礼をしたい時にどうすればいいのか分からないので、もう少し欲を持っていただいてもよろしいでしょうか」


 そういう物だろうか?

 俺はとりあえず考えとくと先延ばしにしたのだった。

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