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案内人

 次の日、やっと世界樹の調査が出来ると思って朝早く城を出て向かうのはこの国のギルドだ。

 ここのギルドは近くにダンジョンがあるので非常に大きくて目立つ。というか木造3階建ての建物って元の世界でも見た事ないな。大丈夫なもんなのかね?

 そしてここに来たのは俺、ブラン、ノワール、護衛にこの国の騎士達。そして何故かレオ。


 最後に関しては予想してなかったな……だってこの国のお姫様だよ。普通付いて行くとは思わないじゃん。

 でも森の民に許可は一応もらっているものの、王族自ら改めて挨拶をしないといけないらしい。だからダンジョンを突破するのに十分な兵は借りているのだが……別件で行けよ別件で。

 ちなみにライトさんは普通について来なかった。多分それが普通だと思う。


「レオ、本当にお前が来ないとダメなのか?こう、手紙みたいなの送って終わりじゃダメなの?」

「ダメらしいよ。前にお手紙書いたけど、せめてちゃんと顔を見せなさい。だって」

「どこでもこう言う業務的な物は面倒なもんなんだな……」


 この世界にテレビ電話があれば違ったのだろうか。そう言う通信用の水晶的な物はないのかね。

 そう思いながらギルドに行くと、流石にこれだけの大人数、そして国の騎士が居れば目立つか。ギルド内の冒険者と思われる人達が一斉にこちらを見る。

 そしてすぐにレオに気が付いたのか、女性のギルド職員が走って頭を何度も下げる。


「お待ちしておりました!殿下を含め今回の事はお聞きしております。ワカバちゃん!国の人が来たわよ!!」


 ワカバ?ワカバってまさか若葉か?何だか日本人みたいな名前だな。

 ギルド職員に呼ばれてやってきたのはまだ若い女の子だった。年齢は多分中学2年生か3年生ぐらい、小柄なだけで高校生かも知れないが……多分中学生だと思う。まだまだ童顔で成長期と言う感じがする。

 可愛い感じの顔に見えるが、今は不機嫌なのか気だるげな表情でこちらを見る。明らかに嫌々この仕事を受けたというのが分かり、周りの護衛の人達から不機嫌な雰囲気を感じた。

 彼女はため息をついてから自己紹介する。


「初めまして、新人の若葉です。王族の人をダンジョンの奥に連れて行く仕事を渋々受けました。主にやっているのは採取と探索なのであまり力はありません。それでも良いのなら世界樹の元まで案内します」


 口調に覇気はないし、全力でやる気がない事をアピールしてくる。

 その態度を見て1番気に入らなそうにしているのは護衛隊長の人だ。


「貴様!こちらにおられるのはこの国の姫君、その事を知っていてその態度か!!」

「元々この仕事を受ける気はなかったんですよ。でもギルド長からどうしてもやってほしいと言われて仕方なくやるんです。嫌ならさっさと別な人に頼んでください」


 態度を改めない若葉に対して隊長さんは1歩前に出るがレオがそれを止める。

 そしてレオは若葉に聞く。


「どうして嫌なの?お金はいっぱい出すよ?それとも他に欲しい物があるの?」


 若葉はそんなレオに対して流石に子供相手だからか、俺達に話すよりは少し和らげて話す。


「もともと私はソロ、1人で採取とか探索をしてきたの。それなのにいきなり他の人の案内をしろと言われても出来ない事を無理矢理やれって言われたの。だから本当はやりたくないの。分かってくれた?」


 若葉はそうレオの身長に合わせてしゃがんでから言うと、レオは考えながら言う。


「それじゃお姉ちゃんは私達の事を案内出来ないって事?」

「そう言えるね」

「他に案内で来そうな人はいないの?」

「ギルマスが言うには私が1番いいだろうって勝手に決め付けられたの。私よりベテランの人がいるからその人達に頼んだ方がいいよ」


 そこでまたレオは考える。

 何かじっくりと考えている様だが……何がしたいのかはさっぱり分からない。

 とりあえず待っているとレオが口を開いた。


「それじゃ案内できそうな人の人数って何人?」

「それは……5人が限界。パーティーを組んで案内した事があるのが5人だからそれまでかな」

「じゃあレオと、お兄さん2人と、ブランちゃんの4人なら案内してくれる?」


 その提案に1番動揺したのはレオの事を護衛する騎士達だ。護衛のためについて来たのに、ここで分かれると言われればそりゃ動揺するだろう。

 当然護衛の人はレオに言う。


「殿下!ドラクゥル様方は当然として、なぜ我々が行ってはいけないのです!!これでは殿下をお守りする事が――」

「だってお母様が言うにはこの人の協力は絶対に必要だって言われてるんだもん。それに出来るだけ協力しなさいって。そのためには必要最低人数で行く必要が出来ちゃったから仕方ないよ。それにブランちゃんとノワールさんって強いよね」


 ふと話を振られたので俺達はつい顔を見合わせてしまう。


「え、これどう答えるのが正解?」


 つい俺は小声で2人に聞いてしまう。

 俺の不安をよそに2人は何て事のない様に言う。


「パパはブラン達の事よく知ってるから素直に言っていいんじゃないかな?」

「私も問題ない。私の力は分かり辛いし」


 う~んと、それじゃ簡単にいっていいのかな?


「え~っと、ブランは回復魔法が得意でノワールは魔法でも近接戦闘でも何でもできるぞ」


 ぶっちゃけ近接戦闘に関してはよく分からないけど。

 でもレオにとってはそれだけで十分だったのか、頷いてから護衛の人に言う。


「ほら、2人も十分戦えるみたいだし、私達5人で行くよ」

「しかし――」

「ダーメ。これはレオの決定なの。ちゃんと帰ってくるから待ってて」

「………………承知しました」


 渋々護衛の人は頷いた。

 その代わり俺達に頭を深く下げて言う。


「ドラクゥル様、ブラン様、ノワール様。姫様の事をよろしくお願いします」

「俺は戦闘能力皆無なんですが、ちゃんと面倒見ます」

「任せてくれて大丈夫だよ~」

「お任せください」


 こうして俺達は5人で行動する事が決まった。俺としては少しでも人が多い方が安心するのだが、決まってしまった物は仕方がない。

 こうして5人でダンジョンを超えて世界樹に向かう事になったのだった。

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