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みんな揃ったら

「ギ、ギリギリ間に合った……」


 ヴラドたちが引っ越してくる前に新しい屋敷が完成した。収納数1万と言う多さでありながら中身は完全防音の最高級ホテルの様なゴージャスな部屋。風呂とシャワー室、トイレなども完備。キッチンに冷蔵庫、テレビにステレオなどなど、とにかく贅沢だと言える物を突っ込みまくった部屋だ。もちろん庭にはプールもあるし、小さいが家庭菜園をするスペースまである。

 ついでに言うと4人家族が住める設計になっているので寝室も4つある。1人だと部屋を持て余しそうではあるがこれぐらいでいいだろう。

 ちなみに外見はヨーロッパ風のレンガ造り。鉄製の門があり、少し狭いが小さな庭もある。家族でバーベキューぐらいはできるかな?ぐらいの広さだ。

 それなのに部屋はどこの高級ホテル?と聞きたくなるような仕様になっているのでゲームのご都合主義は凄い。


 新しく作った方は使用人とか奴隷用にする予定だけど……めっちゃ贅沢だよな。まぁホワイト企業っぽいしこっちに来てから待遇が悪くなったみたいな感じ内なったらヴラド達の顔に泥を塗る事になりそうだから別にいいだろ。

 家族連れだっているだろうし。


 ちなみにパープルスモックとホーリーランドとの戦争は想像以上に早く終戦宣言がされた。

 その理由はパープルスモックから奪った人間牧場の人間達を移送するのに想像以上に手間取っていたからだそうだ。

 ホワイトフェザーからの監視役として彼らの健康診断をしたラファエルいわく、肉体的、精神的に異常は見られないがホーリーランドが思っていた以上に知能が低いらしい。どんな奴隷だって仕事をさせられるのだから文字が読めなかったり書けなかったりしても経験的な意味で知識を得ていくことは自然だ。

 だが人間牧場の人間達はとにかく生きて血を供給するために飼育されていたので知識らしい知識を持っていなかったそうだ。飯を食う時は手掴み、手を洗ったり自分で服を着る事も出来ない。ラファエルやほかの人達が見るとかなり大きな赤ん坊を見ているかのようだったと言う。


 なので馬車などに乗せても好き勝手に漏らしたり騒いだりするので本当に大変らしい。

 ちなみに今回連れ出した人間は約1万5000人。本当に何もできない人間を1万5000人も養うとなると相当大変な事になるだろう。ちなみにこの人数はノワール達が居なくなるのでいらない人間ばかりをしれっと奪われるふりして渡していたような物だそうだ。

 本当に価値のある人間、例えば上級の血袋とか、メイドや執事、護衛として使える奴隷は首都の近くにある牧場で育てているから損害は0。本当にうまいことやったもんだ。引っ越し前のいらない物を引き取らせたような物なのだから。


 ただパープルスモックから食人種が減ったので防衛システムなどの見直しも残った吸血鬼たちでしなくてはいけないので色々苦労しそうだ。ノワールと言う絶対的な強者が居なくなることからほとんどの者が残ってもらえるよう努力したらしいが、結局妥協案と言う事で本当にどうしようもないときは助けに行くと言う事を約束したらしい。

 ちなみにどうやって伝えるのか聞いてみると、ノワールの鱗を使って作った呼び鈴的な物があるらしい。それを使ってノワールにヤバい事が起きたと知らせることできるとの事。

 本当に緊急用として使うらしいのでそう呼び出されたりはしないだろうと予想している。


「そう言えば今頃式典はどうなってるんだろうな……あとどれぐらいで終わるんだろ?」


 そして現在はノワール達とパープルスモックに残る吸血鬼達が式典を開いている。

 分かりやすく言うとお別れ会だ。ノワール達はアルカディアに帰る前に感謝を込めて祭典を開いたそうだ。なのでアルカディアに帰ってくるのは少し時間がかかるかも知れないと事前に聞いていたがどれぐらいの規模なんだろうな。

 俺はノワール達が帰ってしまう元凶なので参加は止めておいた。ポラリスのみなさんも忙しかった1ヶ月の休息をとってそこら辺でゴロゴロしている事だろう。


 今日も畑の確認と、新しく植えたブラッディ・ピーチの状況でも確かめるとしよう。

 そう思って歩き出すとブランがドラゴンの姿で空からやってきた。


『パパ。お家やっと完成したんだね』

「おう。この家なら誰からも文句出ないだろ」

『だよね~。これで文句言ってきたらブランが浄化してあげる』

「仲間殺しだけは本気でやめてくれよ。それに文句出るはずないじゃん。こんないい所に住んで」

『パパはこう言う豪邸に住みたいって思わないの?』

「もう既に豪邸に住んでるから問題ない」


 そんな話をしながらブランは俺の前でじっと何か期待する視線を向けながら待つ。

 俺は少しだけ考えて、提案してみる。


「近くの湖でブラッシングでもするか?」

『する!!』


 こうして俺はブランの背に乗って家に1番近い湖まで乗せてもらう。

 この湖にはモンスターは住んでおらず、海のSSSランクモンスターがマイルームに来る時に使っていた湖だ。この湖の底から海に繋がっており、よく可愛らしい顔を見せてくれた。

 まだまだ子供達はアルカディアに帰って来れていないが、そのうちみんな揃って帰ってきて欲しい。事故とは言えお互いに不本意で離れ離れになってしまったのだから帰りたいと思っているのであれば帰ってきて欲しい。


『パパ』


 湖を見ながらそんな事を思っているとブランが早くブラッシングをして欲しいと翼を動かす。

 そうだな。まずは帰って来てくれた子との時間を大切にしないとな。


 俺はメニューからブラシを取り出してブランの羽を綺麗にブラッシングしてあげる。ブランほどの大きさになると手作業で行うのは大変なのだが、ゲーム的には本当に綺麗になっている訳ではない。ただブラッシングをしているという事で好感度が上がるというだけのちょっとしたミニゲームの様な物だ。

 だがこの現実と混じってしまった今は普通に汚れるし、こうしてブラッシングをすると綺麗になる。可愛い娘がより綺麗になるのは嬉しいし、こうした親子のスキンシップと言う物をするのも俺は好きだ。ふさふさで柔らかいブランに触れていると癒されるし。


 そんな感じで背中の翼から始めて胴体が終わり、手足の部分をブラッシングしようとするとブランは話しかけて来る。


『パパ。パパはお兄ちゃんとかお姉ちゃんとか、みんな揃ったら何したい?』

「突然だな。今のところ特にこれと言った事はないが……ブランはどうだ?」

『ブランはね、みんなと一緒に遊びたい。その後みんなでお昼寝して、ご飯食べて、お風呂入って、みんなで寝るの!』

「今とそう変わらない気がするが?」


 最近は俺だけではなくブランが生まれ育ったあの神殿でミカエル達と一緒に昼寝をしたりしている事は知っている。

 普段と変わらないなッと少し笑っているとブランは真剣な声で言う。


『全然違うよ!だって全員のお兄ちゃんとかお姉ちゃん達みんなと一緒にだもん!今よりずっと幸せだよ!!』

「確かに。みんな揃ったら幸せだろうな」


 昔の様に、ブラン達からすれば2000も前の事なのだろうが、俺にとってはついこの間の出来事なので鮮明に記憶に残っている。しかもブランが進化してまだ1ヶ月か2ヶ月経ったかどうかと言うほど短い期間だったので余計にあの後こんな事に巻き込まれなければどうなっていただろうと思う。

 でもその場合俺は直接このようにブラン達と触れ合う事が出来なくて、結局画面の向こうの話だと半分諦めて、そのうち疲れたり飽きたりしたら自然とやめていたのだろうか。

 そう考えるとこれはこれでよかった……とはやっぱ言えないか。

 1度家族とバラバラにされた事に関しては一生引きずる。しかも2000年もほったらかしにしてしまい、寿命を迎えてしまった子供達も居るのだ。せめて子供達が寿命を迎える前に迎えに行きたかった。


 手足のブラッシングを終え、最後に顔の部分を素手で整える。ブランは顔だけは道具などでブラッシングされるのを嫌い、顔だけは全て素手で行なっている。

 ブラッシングと言うよりはただ撫でている様な感じではあるが、ブランは心地よさそうに目を細める。尻尾が自然と揺れて喜びを表現しているのであれば何だか犬っぽい。ドラゴンだけど。


『だからさ、パパはみんな揃ったら何したい?』


 撫で終えるとブランはもう1度聞く。

 そして自然と俺のやりたい事が口から出た。


「またみんなで家族写真撮りたいな」


 たった1枚しかない家族写真を増やしたい。もちろん細かく言えば色んな子の成長アルバムはあるが家族みんな揃った写真は1枚しかない。

 だからこの先、家族みんな揃った写真を増やしていきたい。

 そう自然と出た言葉にブランは納得したように頷く。その優し気に見る表情は確かに女神様としての貫禄が現れている。


『それじゃ他のお兄ちゃんとお姉ちゃん達を見付けないとね』

「おう。っと言うか最低でも4人は確実に場所は分かってるじゃん。他のSSSランクモンスターの4人は」

『それでも細かい所で離れ離れになっちゃってるお兄ちゃん達は結構いるからね。地道に探すしかないよ』

「はぁ。子供達がどこにいるのか分かる機能でてこないかな~」


 なんてぼやいているとノワール達が後ろから現れた。

 思っていたよりも早く帰って来たので俺はつい確認してしまう。


「ノワール。思っていたより早かったな」

『だって彼らは式典と言ってずっと僕達の事をパープルスモックに留めさせようとしてたから面倒になっちゃって。家の方はもう完成してるんだよね』

「当然。元々ヴラド達が住んでた屋敷の隣りに建てておいたから好きに使ってくれ」

「ありがたく住まわせていただきます」


 ヴラドが吸血鬼を代表してそう言った。

 こうして俺の家族がまた少し帰って来たのだった。

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