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若葉への仕事の依頼

 あ~……眠い。

 昨日はちょっと頑張りすぎた。

 この国の食料改善案についてある程度まとめてきたが、最後の方眠くて適当な事書いてないといいけど……

 それから3時間ほど仮眠したあと戻ってきたスモッグゴーストとミクロマウスから情報が送られてきた。

 すべてスクショで撮影したものだが、希少そうな古い本に絵とよく分からない文字か書かれている。

 それが数百枚を超えているのだからあとで整理しないとな……


「ドラクゥル殿、あまり寝られなかったのですか?顔色が優れないようですが……」

「ええ少し作業をしておりまして。軽く資料の作成を」

「資料と言うとやはり農業に関する事でしょうか?」

「はい……魔物を使わない農業の改革についてまとめてみました。と言っても平均的な土地であることを最低条件にしていますのでこの国の土地をもっとよく知らないと正直言うと実用できるとは思えません。あとはこの国の土地についてよく調べてみない事には何とも」


 俺が欠伸をかみしめながら言うとホワイトフェザーの人は言う。


「少し資料を見せていただいても?」

「どうぞ。後半は眠くて訳の分からない事になっていないといいのですが」


 俺がそう念を押してから渡した。

 あ~ダメだ。

 めちゃくちゃ眠い……


「これは……素晴らしいですね。魔物の素材を使うのが主流になりつつ中、ここまで魔物を使わない生育方法を提示できるのはすごい事ですよ」

「そうですかね……?」

「そうですよ。基礎的な部分であったとしてもこれを基に実験を行う事も可能でしょう。ホーリーランドでは重要な資料になると思いますよ!」

「だといいんですけどね……」


 ふらふらとした足取りのまま交流会へ。

 あちこち歩いて技術を直接見たりすることが多かったのでどうにか寝落ちだけは避ける事が出来た。

 もちろんホーリーランドの人に例の資料を渡しておいたし、あとでどんな感じになるのかは明日確かめよう。


 ――


 眠すぎて忘れてたー!!

 昨日が交流会最終日じゃん!!

 うっわ~そうだった。昨日が最終日だから今日のうちにやっておかないとって思って仕上げたんだった……


 と言うわけで今日は挨拶して帰るだけである。

 あ~最後の最後にやらかした~

 例の古代神に関してもうちょい調べたかったし、旧パープルスモック周辺に関しても調べたかったな……

 なんて思いながらみんなで帰ろうとしていると正義君が走ってやってきた。


「ドラクゥルさん!!ちょっと待って!!」

「ん?どうしたの?」


 馬車に乗る前に声をかけられたので降りる。


「これ、お姫様がドラクゥルさんに渡して、だって」

「手紙か?ありがとな」

「それから……」

「ん?」

「困ったら助けてくれる?」


 正義君はすがるような眼で俺の事を見た。

 俺は正義君の頭をポンとおいてから言う。


「子供が大人に頼るのは当たり前。なんかあったら連絡くれ」

「や、やめてよ。これでももう中学生の年なんだから」


 そう言いながら正義君はどこか安心したような表情を見せるのだった。

 正義君に見送られながら帰る途中の夜、俺はこっそりとアルカディアに帰ってヴラド達に話を聞きに行く。


「お疲れ~、突然仕事頼んじゃってごめんね。今大丈夫?」

「父上、お帰りなさいませ。資料はすでにまとまっております」

「え、マジ?もう終わったの?かなりの枚数があったはずだけど……」

「基本的に農作業ばかりなのでたまにはこういった仕事もいいと思っていたらいつの間にか終わっておりました」

「やっぱ農作業とは違う仕事の方がいいか?」

「まさか。今の方が落ち着いて作業が出来るので心地いいと感じています。以前は腹の探り合いが多すぎたせいか少々疲れる事が多かったので」

「いやじゃないならいいが……古代神に関する情報は他にも見つけられたか?」

「はい。我々がこの世界に現れるより以前から存在していた吸血鬼達が知っておりました。しかしすべて口伝だったらしく、今回いただいたホーリーランドのような情報は発見できませんでした」

「私も同じです。今回のように古代神に関する情報は基本的に口伝だった場合が多いようですので資料らしい資料は残っておりませんでした」

「分かった。資料をまとめてくれてありがとうな」

「また何かございましたらお声がけください」


 ヴラドとカーミラはそう言ってからまとめてくれた資料を手渡してくれた。

 その資料を持って俺は1人の女の子に会いに行く。

 おそらくだがこの資料をうまく使いこなす事が出来るのはあの子だと俺は思っている。

 俺はその子がいる扉をノックした。


「はぁい」

「遅くにごめんね。ドラクゥルだ」


 俺がそういうと扉が開いた。

 その部屋の持ち主は若葉である。

 夜に来たお詫びも込めてガブリエル製のクッキーも持ってきておいた。


「どうしたんですか?もしかしてまたどこかに出かけるからついてきてほしいとか?」

「今回はそういう感じじゃないんだ。簡単に言うと調べてほしい事がある」

「はぁ?とりあえずどうぞ」


 若葉に言われて入った若葉の部屋は女子学生らしい部屋、だと思う。

 緑を基調として家具にベッドの上にぬいぐるみが置いてあったり、机の上に恋愛小説が置いてあったりと女の子らしい部屋と言える。

 リアルで女の子の部屋なんて見たことないから多分女の子らしい、と思う。


「それで調べてほしい事とは?」

「この古代神ってやつについて調べてほしいんだ。ホーリーランドで見つけたんだが、この古代神ってやつが俺達をこの世界に連れてきた張本人かもしれない」


 小さなテーブルの前に向かって座りながら俺は資料をテーブルの上に置いた。


「これは?」

「ホーリーランドに残っていた古代神に関する資料だ。他にも世界各地に古代神に関する情報は点在しているようなんだが……ほとんどが口伝、口でしか伝えられてこなかったらしい。だから明確に存在する資料は現状これだけなんだ」

「これ……見ていいんですか?」

「むしろ見てほしい。そう思って持ってきた」

「それじゃ……失礼します」


 そういってから若葉は資料を確認し始めた。

 すべてスクショで撮った画像なので細かい部分は分からないかもしれないが、さすがに国で保管されている物を盗み出すわけにはいかない。

 若葉が資料を確認していくのを黙ってみていると、ふと若葉は顔を上げて真剣な表情で俺に聞いた。


「ドラクゥルさん。どうしてこの資料を私に見せようと思ったんですか」

「え、それは……そういうのに詳しいと思ったから」

「もっと詳しくお願いします」

「えっと……前にってたじゃん。謎解き冒険系のゲームだって。それならこういう古い資料を見せたりすれば何かしらヒントのようなものを見つける事が出来るんじゃ二かな~っと思って見せようと思いました」

「なるほど。そしてこの資料を私に見せた後調べるように頼むつもりだったと」

「は、はい」


 な、なんだろう。

 若葉がいつも以上に真剣な表情で聞くからつい敬語使っちゃった。

 なんて言えばいいのか分からないが、空気が研ぎ澄まされていると言うか、空気がピシッとしていると言うか、いつもの若葉っぽくない。

 俺は正直言うと若葉は資料に手を置きながら言う。


「その仕事、私にさせてもらえませんか」

「……え、いいの?」

「はい。むしろさせてください」

「そ、そう?ありがとう。それじゃ具体的にいつごろから――」

「明日から早速調査開始していいですか」

「明日!?そんなすぐに動いて大丈夫なの?」

「はい。私、この仕事にすごく興奮しているんです」

「興奮?」


 俺が確認すると若葉から感じる空気がさらに研ぎ澄まされたような感じがする。

 目的を見つけてまっすぐ向けられる視線が非常に鋭い。


「私、本当は最初の頃興奮していたんです。もしかしてゲームみたいに謎解きをしながら冒険をするとばっかり思っていたんです。でも実際は違くて、実際はもっと現実的で、ダンジョンもとっくの昔に誰かが攻略しちゃって、つまらなかったんです。でも今、こうして最大のなぞに挑む事が出来ます。私達をこの世界に送った誰かの事を探し出す冒険ゲームがようやくスタートするんです。だから、この仕事私にやらせてください」


 ああ、なるほど。

 いったいどんな視線なのか少しだけ分かった気がする。

 若葉は今ゲームに熱中しているんだ。

 自分のやりたかったゲームをようやくプレイできる事に興奮しているだけなんだ。

 それなら俺もちゃんと手伝ってやらないとな。


「それならこちらからも条件がある」

「条件、ですか?」

「条件1、俺がカイネに戻ってきてから準備はしっかりと行う事。そうすれば必要な物、不要な物をちゃんと分ける事が出来る。条件2、必ず誰か家の子を連れて行く事。そうすればいつでもアルカディアに戻ってこれるし、補給だってかなり簡単に行える。危なくなったら逃げ帰る事もできるからな。条件3、まずは落ち着く事。普段の落ち着いた様子はどうした?そんな興奮していると簡単なトラップにすら見つけられずに失敗するかもよ?」


 俺がそういうと若葉はふと目が覚めたようにワタワタし始める。


「え、あ、私急にどうしちゃったんだろ?すみません。確かに急すぎますよね……」

「熱意があるのはいい事だ。でもそれ以外の事が見えなくなるのは危ないからダメね。元々その謎解き冒険系のゲームだって冷静に視野を広くしてプレイするものなんだろ?それなら落ち着かないと」

「うう、すみません……」

「いいって。それじゃ出発する日とかは俺が返ってきてから決めるとして、若葉ちゃんはどんな相棒が欲しいか考えておいて。出来るだけ理想に近い子を育てるからさ」

「あ、ありがとうございます。でも最初から育成すると時間がかかるんじゃ……」

「早く出発したいのは分かるけど、相棒と仲がいい事はきっと何か役に立つ。それにうちの施設を使えばすぐに大きくなるからあまり時間は取らせないよ」

「分かりました。確かに相棒はいた方が安心できます」

「それじゃどんな子がいいのか考えておいてね。仕事受けてくれてありがとう。お休み」

「はい。おやすみなさい」


 こうして俺は若葉に古代神に関する情報を集める仕事をお願いした。

 さて、古代神ってやつはいったいどんな奴なんだかな。

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