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販売と情報収集

 レオのお見合いが終わりロッゾ王子もカーディナルフレイムに帰った後王様が言っていた話を子供達に確認する。


「ホーリーランドがゴブリン帝国に偵察を送るって話は本当か」


 俺がそう聞くとブランがビクッと身体を震わせてから恐る恐る言う。


「その……まだ確証がなかったから、その……」

「別に責めちゃいないし怒るつもりもない。ただの確認。で、戦争は回避できそう?」

「まだまだ準備が整っていないから今は大丈夫だけど……そのうち起こる事だと思う。ホーリーランドが6大大国の1つになったからホワイトフェザー(こっち)の話を聞いたからと言っても必ず止めないといけないって感じにはできなくなっちゃったから」

「そうなの?」

「うん。戦争とか起きた時に治癒師を貸したりしてたから、勝てそうにないのに貸す訳ないでしょって言えば渋々引き下がってくれてたから。でも今は別の手段でその辺補いつつあるみたいだし」

「別の手段って?」

「ポーションだよ。グリーンシェルで作られた高性能のポーションを買って溜めてるの。治癒魔法使いも育ててるからある程度育つまで戦争は起こさないと思う」


 つまりすぐにではなくそのうちって訳だ。

 まぁ本当にヤバい感じだったらとっくに教えてくれていた可能性も高いが、血なまぐさい事に関しては俺から遠ざけようとすると思う。

 前に戦争の映像を見て吐いたし、向いてないのは分かり切ってる。

 だからと言って何もしない訳にはいかない。


「そうか。うちから食料欲しかったら渡すけどそう言う要望って来てないの?」

「念のための保険として検討されているくらいです。本来であれば補給面も自分達で補うのが国と言う物ですから」


 クレールが真剣な表情で言う。

 おそらくそれが国としての誇りと言うか、当たり前の事なのかも知れない。

 元々ゴブリン帝国は自分達だけで畑を広げたり、狩りをする事で大きくなっていった国だ。戦争が起きても問題がないくらいの蓄えは十分にある。

 と思いたい。

 もしかしたら本当に危機的な状況になったら頼んでくるかもしれないが、それじゃ遅いと思う。


「分かった。それでも本当に危ないと感じる前に、少し危ないかもって思ったら頼るよう言っておいて。食料を渡す事くらいしか出来ないけどさ」

「それで十分だと思います」


 クレールも納得してくれた。

 既に独り立ちしているとは言えどうしても守ってあげなきゃって感情が出てしまう。

 俺がいない間ずっと頑張ってきたのだから大丈夫なのは分かっているが……どうしても昔の感覚が消えない。


 そんな感情を落ち着かせるために今日は商業ギルドに来ていた。

 こういう時は仕事をして考える暇を作らなければいいのだ。


「これがその羊毛ですか。素晴らしい肌触りですね」

「ありがとうございます。ドリーミーシープの羊毛です」

「その羊の名は存じ上げませんが、確かにこれは他の羊毛より非常に優れているようですね。それで量はどれくらいになるでしょう?」

「1匹から取れる羊毛は約5キロ、それが50匹いるので年に250キロは採れますね」

「なるほど。しかしこれだけ良い羊毛となると販売は貴族向けとなりますがよろしいですか?」

「お願いします。それから布団にする技術などはないのですがその辺りはどうなるんです?」

「ご安心を。貴族向けに製作しているブランドがあります。その会社は布団やクッションと言った物を製作しており、信頼のおける会社です。そちらに卸し、販売しますので素材だけの販売となります。そのため少々買い取り額は低くなってしまいますが……よろしいでしょうか」

「お願いします。とりあえず今回は20キロお渡ししますね」

「お願いします」


 こうして羊毛を20キロとりあえず売ったのだが、それでも金貨が当たり前のように出てくるのが恐ろしい。

 そして商売が終わると始まるのはいつもの雑談だ。

 その内容には大抵裏に俺が居る事が多い。


「聞きましたか?カーディナルフレイムの第三王子とグリーンシェルの姫が見合いをしたそうです」

「はい聞いています。大国同士のお見合いって本当にあるんですね」

「ええ。本当はあまり良くない事と言われているのですが、どうやら第三王子は姫に相当惚れこんでいるようですよ」

「あまり良くない?」


 ロッゾ王子が惚れていると言うよりもあまり良くないと言う所に俺は気になった。

 クウォンさんはよく分からないかと言う感じで説明してくれる。


「景気の良い企業でもよくある事ですが、巨大な企業の子供同士を結婚させてさらに会社を大きくしようとすると他の企業から目を付けられるでしょ。それは国どうしでも同じ事。大国同士が血縁になる事でより大きな結束が生まれます。特にカーディナルフレイムは食料自給率が低い国、グリーンシェルは食料自給率の高い国です。カーディナルフレイムは安定して食料を手に入れる事ができるようになったと言ってもいいでしょう。そしてカーディナルフレイムの騎士や冒険者は非常に優秀です。冒険者に関しては金と内容次第ではありますが、それでもグリーンシェルは大きな戦力を手に入れたと言っていいでしょう」

「なるほど。お互いに大きな利益があると」

「はい。かの国に属する国は良いと思いますが、よく思わない国も当然ある訳です」


 やっぱりデカい国どうしが一緒になるのも問題点が出るって事か……

 個人的には知り合い同士の見合いが上手くいったらな~くらいの物なのに。


 クウォンさんそのまま声を潜めながら耳元で教えてくれる。


「それに最近ホーリーランドから食料の買取が多いのです。周りの者達はみな戦争の準備だと噂していますよ」


 なるほど。

 その噂はもう既に広まってるのね。

 それじゃただ単に俺が情報を集めてなかっただけか。


「それからですね、ホーリーランドは他の大国にあまりいい感情を持っていないと言う噂も広がりつつあるのですよ」

「それは何故でしょう?」

「もちろん魔物の完全排除をよしとしていないからです。ダンジョン都市と言われるグリーンシェルやカーディナルフレイムは当然ですし、ライトフェアリーとアビスブルーは関せず。ホワイトフェザーは辞めろと忠告している様なのです。ですから魔物の完全排除を目指している大国は1つだけなので中々協力してくれない他の大国を嫌っていると言う噂もあるくらいなのです」

「それは……確かに気に入らないと思われても仕方ないかも知れませんね」


 たった1つの国だけで頑張ってるとなればそりゃ協力してくれない国、無視する国は嫌われて当然か。

 でもあの国の王様がそんな事を言うだろうか?

 一目見ただけだし、俺と会話した事もないはずだが、王様として不用意な発言しない様な気がする。

 人間至上主義だからこそ人間同士の繋がりを大切にするような気がするし、人間同士の繋がりをわざと乱す様な事は言わない気がする。

 どれも予想だが多分その発言は別な人がしたんじゃないだろうか?


「ところで……ホーリーランドは本当に1国だけで魔物の殲滅を考えているのですか?」

「まさか。ホーリーランドの考えに共感し協力している国は当然あります。ホーリーランドのおかげで魔物の脅威が減った国や、強力な魔物によって大きな打撃を受けた国などが主で最近では殲滅派、などと言う派閥で呼ばれる事もあります」


 殲滅派ね……随分物騒な派閥だ。

 一回ホーリーランドに行って確認してみたいな。正義君がどうしているのかも気になるし。


「ところで話は変わりますが、大型保冷魔道具の方は大丈夫ですか?」

「いや~……だましだまし使っています。ホーリーランドがパープルスモックの技術を手に入れて直してくれると嬉しいんですけどね~」


 やっぱパープルスモックの技術はまだ手に入れてないか。


 よし。

 今度行ってみるか。

 ホーリーランド。

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