お見合い、始まりました?
俺もあまり理解しきれていないが、友達の娘の結婚が上手くいくようにフォローする日がやってきた。
カーディナルフレイムの方からは王様は来れない代わりに巫女さん達が来るらしい。
で、俺は一応グリーンシェルで果樹園や肥料の開発を手伝っている事からグリーンシェル側に居る事になった。
本当は中立でただの農家なんだけどな……
そしてやってきた王子君は……大名行列ってこういう感じなのかな?ってくらいの大軍勢でやってきた。
本当に長い列で巨大な蛇が這っているかのように見える。
本当に王族って色々大変なんだな。結婚相手としてふさわしいですよってアピールするためなのは分かっているが、本当に多い。
あの行列には騎士やメイドさん、料理人など生活に必要な人達の他にレオにあげるためのお宝とか色々詰んだ荷台もあるらしい。
「……壮観だな」
「そう?規模としては小さい方だけど」
俺の感想にレオが突っ込む。
え、あれで小さい方なの?
「あれ本当に小さいのか?」
「うん。と言っても大国同士での話だけどね。それに第三王子だからできるだけ規模を縮小したって理由もあると思う。元々国土も小さいし、あまり人は多くはないのかもね」
レオ……いつの間にそんな冷静に分析できる子になったの?
これもしかしたら相当難易度高いんじゃないか?
俺が知っているレオはもう少し子供らしいはずだったのに……
やっぱこの世界の子供達精神的な成長早くない?もう少し子供らしくしていいんじゃない??
「それじゃ私達もお迎えに行こうか。お兄さん」
この場限定の肩書だが、俺はレオの先生兼アドバイザーらしい。
実際に多様な事をしていたけど、農業に関する先生。と言う設定だ。
移動中も王子君の大名行列を見ていたが、国の人達が大歓迎をしている。
国民の人達はレオと王子君の婚約の話までは広まっていないが、純粋に他の大国と手を結ぶ事に喜んでいる感じだ。
でも勘の良い人は裏に何かあると感じている様で、色々察しているらしい。
もっとそういう良い感じの人を傍にいさせればいいはずなんだけどな。
何で俺だったんだろう……
そう思いながらもレオと一緒に謁見の間に行き、王子君を待つ。
そして始まる王子君と王様の謁見。
それが終わって表向きの仕事、カーディナルフレイムでも育つかもしれない植物の紹介をレオが行う事になっている。
「こちらの植物は元々乾燥地帯で育つ植物です。果実の方は非常に甘いですがあまり大きくはありません。こちらの植物は蔓科の植物で繁殖能力は高く、生産しやすいですがあまり美味しくはありません」
こんな感じで紹介しているが、一応お仕事ではある。
本当はこれでもデートのつもり、らしい。
いや、これでデートは無理がある。それとも王族ってデートも出来ないの?青春送ってない俺だけどこれが青春じゃない事は分かるぞ。
それに俺だけじゃなく護衛とかメイドさんとかも色々いるし、本当にこれをデートと言っていいのか……
レオの方は完全に仕事として対応しているし、王子君の方はソワソワしていつ口説くか待っているが……この様子だと一生チャンスないぞ。
もしかしてデートっぽい雰囲気にするのも俺の仕事?だとしたら完全に人選ミスだぞ。
リアルでデートなんてした事ないし、年齢=彼女いない歴だぞ。
精々知識はエロゲやらで知っているだけだ。
ナンパだってした事ないぞ。
これもう少しどうにかならないのかね……
「レオ。カーディナルフレイムに紹介する植物だけじゃなく、この辺りの植物に関しても紹介したらどうだ。植物園で栽培している植物とかはどうだ」
この程度でいいかと思いながら周りの人達に確認するとメイドさん達も護衛の人達もナイスっと親指を上げてくれた。
これでいいのならよかった。
なのに――
「いえ、今回はカーディナルフレイムでも育成可能な食料となる植物の紹介が先です。植物園などはその後でよいでしょう」
おいコラ!裏はレオとのお見合いのこと忘れてないか!?
さっさと仕事を終わらせて~って感じなんだよな?それとも別な所で見合いをするのか??
俺はグリーンシェル、カーディナルフレイムのメイドさん達に視線でこれでいいのかと聞くと、ダメだと首を横に振られた。
この様子じゃ全く興味ないのかな。レオ。
王子君の方は全く脈がないとちょっと引きつった笑みを浮かべるだけだし、ファーストコミュニケーションは失敗と言うしかない。
「失礼します。レオファリア様はご事情を知っておられないのでしょうか」
そっと巫女さんから確認されたがもちろん知っている。
だから俺も困惑しながら話す。
「いえ、知っています。本人も見合いなら構わないと言っておりましたのでそれはありません。おそらく見合いは別な所でお見合いだと思っているのではないでしょうか?」
「そのような話が出ているのですか?」
「あくまでもこれは予想です。でも多分……先に仕事を終わらせようとしているだけかもしれません」
具体的にいつ見合いをするのかは話されていない。
とりあえずデートもどきをさせてお互いに興味を引くようにして欲しいと言うのが王様達の頼みだ。
仕事と称して2人っきりにするのもいいかもしれないが……カーディナルフレイムの護衛の人達がそれを認めるかどうか。
でも確実に言える事は今はまだデートだと思っていない事。
お見合いらしくどっかの部屋に入れてあとは2人で~みたいな状況にしないとダメか?
「とりあえずお見合いだって分かる状況を1回作る必要があるかも知れません。そうしないと先に進まないと言うか」
「グリーンシェルの方と相談して進めましょう」
こうして裏の目的を達成できるようにグリーンシェル、カーディナルフレイムは協力して行う事になった。
まずはお見合いしやすい雰囲気と環境づくり、あとは……話題か?
話題がないと進められないし、お見合いなんだから仕事以外の話をするべきだろう。
それなのにレオは未だに仕事の話で本当に今日はお見合いをする気がないように感じる。
そう言えば。
聞いていなかったが王子君は何でレオに惚れたんだ?
そりゃエルフの血が入っているから幼くても将来美形になりそうだな~って雰囲気はある。
でもこの世界の人達って結構美形が多いんだよね。アニメでみんな美少女様イケメン様しかいない様な感じで。
特に貴族王族となればイケメン美少女は標準装備です、とでも言いたげなくらいに美形ぞろい。
そんな中で何故レオを選んだのかをまだ聞いていない。
植物に興味があったから?それとも単に国内でいい人がいなかったから?
三男と言っても大国の第三王子であり、他国の姫だったとしても結婚してくれと言えばすぐにお願いしますと言ってくれそうなお姫様でも良かったはずだ。
その中で何故レオを選んだのか気になりだした俺だった。




