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ご報告

「と、いう事でレオちゃんに求婚の話が来ました」

「ふむ。まずはその実力から確認しなければならないな」

「待ちなさい。とりあえずすべての話を聞いてから剣に手をかけなさい。それから私の杖を持ってきてください」


 カーディナルフレイムで酒吞の手伝いをした後にもちろんグリーンシェルの王様達に報告した。

 この場にいるのは俺と王様達、それからルージュとヴェルトもいる。

 ルージュは王子君の援護のために来て、ヴェルトは一応話を聞きに来た感じだ。

 そして話を聞いた王様が剣を持ち、女王様は杖を要求した。

 うん。武装はもう少し後にしてもらいたい。


「一応向こうからの話だが、王子君はこの国に婿入りしたいらしいです。第3王子で王位継承権は低く、カーディナルフレイムでは王様になれないからグリーンシェルで王様になりたいようで。あ、でも国を発展させたいって欲はあるけどカーディナルフレイムみたいに武力に集中させるつもりはないそうです」

「お父様。簡単に言い過ぎです。ロッゾは植物に関して強い関心があります。同じダンジョンをきっかけに大国となった国として関心と好奇心があり、決してこの国をカーディナルフレイムの様にしようとは考えておりません。むしろカーディナルフレイムを変えるための切っ掛けを探していると言えます。レオファリア様に関しては真剣に考えていると断言できます。どうか考えてはいただけないでしょうか」


 ルージュの言葉を聞いた王様と女王様達は少し考えた後に王様は聞く。


「赤の女神さまのお言葉、信じたいと思います。しかし婚姻となればいろいろ事情が出てきますが、それ以前にレオの意思を尊重したいと思っています」

「大国同士の婚約。これは他国にも大きな影響を与え、今後大きくなる事でしょう。しかしこれはあくまでも親としての意見ですが、あの子の未来が幸せな物になるように最善の選択を求めています」


 それは当然の言葉だろう。

 国と言う大切な物もあるが、子供の方が大事と言う方が好感が持てる。


「それじゃ婿入りの話は?」

「一度自分達の目で見てみないと分からないと言うのが正直なところだ。ドラクゥル殿とルージュ様の言葉を信じない訳ではないが、やはり我々の目で直接見てから判断したい」

「それも当然ですね。それじゃこっちに来るのは構わないって事でいいですか?」

「それは認める。大国同士の交流は必要であるし、カーディナルフレイムの文化なども興味がある」

「マグマスラッグから作られた肥料と火山灰を混ぜた肥料、この両方を安定して輸入できればこちらにもメリットはあります」

「ではそう伝えます。レオには何て言います?」


 王子様の本当の目的、レオとの結婚だがレオ自身はどう思っているのだろう?


「レオの結婚願望は?」

「そろそろ見合いをしたいとは伝えてある。だがその時の反応は……」

「あまりいい物ではありませんでしたね。見合いをしたくないと言うよりは、現在続けている肥料や植物の研究を断念しなければならない状況を嫌がっていたと言うべきだと思いますが」

「本当に研究熱心になりましたね……」

「ドラクゥル殿が切っ掛けではありませんか」


 それを言われたら……うん。どうやっても否定できない。

 植物に関する研究はほとんど俺が切っ掛けだし、今もたまに研究に行き詰った時にアドバイスを求めてくる。

 それに全部俺が答える様な物は求めず、あくまでも解決の切っ掛けだけを求めている様な感じなのでちょっとここを見直してみたら?くらいで十分らしい。

 俺からするとその切っ掛けがあれば簡単に修正できるレオの方が凄いけどね。俺は何百回失敗した事か。


「そのレオの趣味……とは言えない規模になってますけど、それは辞めたくないと」

「うむ。と言うよりはレオの研究はこの国に大きな利益をもたらしている。ヴェルト様の土を利用した新たな肥料、昆虫などを利用した新たな無農薬栽培の確立、農薬に関しても自然に優しい新たな農薬を開発したりとこの国の重要な地位を築きつつある」

「まさかあの子がここまで研究に没頭するとは思ってもみませんでした。私の誓いのバラを開花させる研究も眺めてはいましたが、翌日にはすぐに飽きて二度と見に来る事はありませんでしたから」


 少し寂しそうに言う女王様。

 それは……まぁあれだ。研究と言うのは途中過程が面白いのであってほぼ完成している状態だとつまらない物だ。

 それに自分の手で一からやり始めた研究となればさらに力が入るのも当然と言える。


「あはは……きっと畑違いだったのでしょう。それに国に貢献でいるのであれば何でもいいと思いますけど……」

「とにかく、レオの研究はこの国に大きな貢献をしている。その研究を辞めさせるのは大きな損失となる」

「分かりました。その事はきちんと伝えておきます」


 レオの研究そのレベルに到達してたか。

 既に国に貢献している研究って成長速度ヤバすぎない?何でそんな速度で成長出来んの?

 これが子供の成長速度か。


「ロッゾには私の方から話します。ご協力いただきありがとうございます。ヴェルトもいいわね」

「……いいよ」


 ルージュとヴェルトはこの短い言葉だけで通じ合う。

 流石姉妹。


「それじゃレオ自身にも聞いてみていいですか?」

「ドラクゥル殿からお願いしてもよろしいでしょうか。私達も説明しますがドラクゥル殿からが最も話し易いでしょうから」

「分かりました。俺から話させてもらいます」


 とい訳でレオが居る研究室に向かう。

 ここからは俺とルージュだけで向かう。

 王様達は仕事があるし、ヴェルトは王子様を直接見るまでは傍観すると。

 なので俺とヴェルトがレオの研究所に来たのだが……


「ドラクゥル様!ルージュ様いらっしゃい!ようこそ私の研究室へ!!」


 レオは明るく言ってくれるが、想像以上に研究所だぞこれ。

 白衣を着た獣人やエルフ、人間達がそれぞれ研究機材を使ったり、魔法を使って実験を繰り返している。

 設備はおそらくアビスブルー製の物と、パープルスモック製の実験器具だろう。俺が誓いのバラの開花条件を探している時に魔力関連を調べていなかったからさらに調べられるように購入していたらしい。

 そんな機材がずらりと並べられている研究室。それをまとめ上げているレオ。

 大物になり過ぎじゃね?


「レオ……お前本当に凄いな」

「そう?ただ好きな事を続けてるだけなんだけど?あ、それよりもドラクゥル様!今農薬による昆虫への被害実験をしているんだけど、特定の昆虫だけを避けられる農薬の開発って出来るのかな?」

「ん?特定の昆虫と言っても同じ種族、タニシとか蚊とか大雑把な感じなら出来るぞ」

「う~ん。そうじゃなくてもっとこのタニシだけ追い払う農薬って出来ないかな?最近タニシによる被害が出て来ちゃって」

「う~ん。農薬で一種類だけっていうのはかなり難しいな。今度そのタニシを食べる生物探してみるか」

「そうだね~。最近は果樹園の他にも野菜とかもかなり作れて来てるから、その分動物がやってくるようになっちゃったの。だからその対策が大変になって来ちゃって」

「動物だけか?魔物関連も来てるんじゃないか?」

「そっちは冒険者のみなさんが頑張ってくれてるから大丈夫。むしろ安定して魔物を倒してお金に出来るから良いって言ってる人もいるの。それに最近はレアな魔物が現れる様になったとかでそれ狙いで魔物を倒そうとしている人がいるくらい」

「魔物の方は大丈夫だけど、普通の動物被害の方がおろそかになっている訳か。確かに対策が必要だな。外来種が襲ってきたら厄介だろうし」

「ガイライシュ?」

「国外からやって来た動物の事だ。もともと住んでいた動物を食べたり棲み処を奪い取ったり、対策が面倒なんだよ」

「それって悪い事?」

「既存の生態系を守るためには必要な事だな。でもうまく共存できるパターンもあるがほとんどは共存できずに縄張りの奪い合いだな。既存の生物の方が強ければ何の影響もないが、外来種の方が強かったら既存の生物は最悪、絶滅する可能性も出てくるけどな」

「……誓いのバラを咲かせるフラウの種は弱いから対策が必要かも。今度お父様たちに企画の提案をしておかないと」


 完全に社会人の発言だぞレオ。この間まで子供らしい姿を見せていたレオはどこに行ったの?


「ところでドラクゥル様達はどうしてここに?」


 レオにそう聞かれたので俺は休憩室で本題に入る。


「実はな、カーディナルフレイムの第3王子からレオに求婚の話が出てな、レオはどう思っているか教えて欲しい」


 突然そんな事を言われても困るだろうが、他に聞き方が分からなかった。

 なのでダイレクトに聞いてしまったが……意外と動揺みたいなのは見えないな。

 少し待つとレオは何事もないように言う。


「とりあえずお見合いまでなら受けるよ」

「いいのか?かなり突然だと思うんだけど」

「そろそろ婚約とか考えておかないといけない時期なのは分かってたからね。むしろ向こうから来た事にラッキーくらいの考えかな?」

「実感湧いてなさそうな言い方だな」

「グリーンシェルの貴族から適当に選ぶと思ってたから意外と言えば意外だよ。まさか外国の、しかもカーディナルフレイムから求婚されるとは思ってなかった」

「それなのに……お見合い受けるのか」

「遠く離れた大国同士のお見合いだから都合いいとも言えるからね~。グリーンシェルに所属している他の小国の王子様とかに求婚されるよりはいいと思うし」

「それは政治的に?それとも個人的な感情?」

「個人的な感情だよ。正確な日付ってこれから決めるんだよね?」

「そりゃそうだ。今日相談したんだから正式な使者が来ると思うからその時からスタートだな」

「分かった。でもその王子様に言っておいてもらってもいいかな?」

「何を伝えればいい」

「研究は辞める気無いってって伝えておいて。国益だけじゃなくて自分の趣味でもあるから」

「国益になっているから止められそうないないと思うけどな……」


 ここまで立派な研究室をもらっているのに結婚するから研究を辞めろとは言われるとはとても思えない。

 王様達も辞めさせるつもりはないみたいだし、大丈夫だろう。

 王族の結婚って大変なんだな~。

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