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閑話 それぞれの正月

あけましておめでとうございます。

今年も応援してくれたらうれしいです。

 正月休みと言うのは地域や国によって違うものだが、異世界となれば日本と大きく違うのは仕方がない。

 簡単に説明すると1週間自分達が崇める神様に1年間ありがとうございました、本年も見守っていてください。と言いに行く感じ。それが終われば家族で過ごすと言うのが一般的だ。


 まぁこの辺は神社にお参りに行くような感覚だから俺にもなじみがあるが、うちの子供達が神様やっているのでかなり忙しい。

 俺としては正月からみんなでコタツに入りながらおせち囲んでお年玉……はかなり大変なのでみんなで寝正月の予定。

 だったんだけどな……

 ゆっくり寝正月をしているのはノワール達だけ。ヴラド達が居る屋敷で新年会で大はしゃぎしている。

 ワインをラッパ飲みしてバカ騒ぎしている。

 俺だけかなり暇だ……テレビがないから紅白もないし、笑ってはいけないもないし、本当に寝て過ごすだけ……

 これはあまりにも勿体ないし、俺自身暇すぎる……


「と言う訳で巻き込んでみた」

「はぁ」

「これってパワハラ?暇な上司に無理矢理付き合わされてるからパワハラでいいかな?」


 気の抜けた声を出すのは若葉、そして俺の社会的地位が危なくなる発言をしているのがアオイだ。

 同じように暇だと感じている同じ世界組を巻き込んだ。


「あの~アオイさん?危険な発言は止めていただきませんか?女の子達がしっかりしてきて暇だとうかがったのですが……」

「それでも妹達と離れ離れになるのは不満と言いますか~、せっかくの休日を潰されたと言いますか~」

「妹さん達にお年玉じゃダメですか」

「全員なら許します」

「じゃあそれで」


 アオイの買収完了!

 これで何の問題ない。


「はぁ。お二人がそれでいいのならそれでいいのならそれでいいですが、ドラクゥルさんは3人で何をするつもりなんですか?」

「やっぱ新年と言ったらお参りじゃん。だから今忙しくしてるSSSランクの子供達と周りにいるみなさんに弁当と言う名義でおせちでも持って行こうかと」

「それでは6大大国を巡ると?」

「うん。最初にノワール達の様子を見てから行くつもり。まぁホーリーランドは行かないけど」

「裏で敵対している国に堂々と行くほど能天気じゃないですよね」

「敵対……ていう程なのかどうかまでは分からないけど、とりあえず各地巡って神様に健康祈願でもして来ようや。うちの子だけど」

「ご利益ありそうですね」

「直接神様にお願い言えるしね~」


 こんな感じでお参り、うちの子達におせちを持って行く事にした。

 最初はおせちを持って行く必要のないノワールの所から。


「こ、これは……」

「いや~すごいね~。これは」

「本当にな」

「…………………………」


 ヴラド達の屋敷に行ってその様子をうかがっている。

 ちなみに無言になっているのはノワールで、この惨状を嘆いている。

 惨状と言うのは俺が育てた吸血鬼、黄の世界の吸血鬼関係なくほとんどの連中が泥酔状態である事。

 まともなのは給仕をしている奴隷達だけで、すでに酒でダウンしてしまった吸血鬼他達を介抱していたり、メチャクチャになっている食器などを片付けていたり、掃除している。

 そしてよっている吸血鬼の中にはヴラドにカーミラ、ジェンにレディーも潰れてしまっていた。


「おひいさま~?ようこひょおいでくたさいまひた。いっぱいやるか~?」


 エリザベートも呂律がおかしくなっている状態でワインボトル片手に言う。


「あけましておめでとう、エリザベート。新年早々景気が良さそうだな」

「そりゃー領民だー、牧場だーって無駄に使うお金が減りましたもん。いらない奴隷はぜ~んぶホーリー……何だっけ?とにかくバカな所に全部ポーンですもん。ポーン」

「無駄な浪費がなくなっただけで景気が良くなるとは、良い事だ」

「いい事れひゅよ~。だからみんなでワインとピーチを浴びてるんでふよ~。あ、おひい様もあびまきょ?」

「いや、俺はこれから他のみんなにもあいさつしに行くから帰ってきてから参加させてもらう」

「わかりまひた。おまちしてまーす」


 泥酔状態のエリザベート。これ多分レアだな。あとでまとめてこの辺のデータ回収しておくか。

 絶対楽しい事になる。


「それで、父さん達はどうしてここに?」

「この世界の神様巡り」

「……私だけではなくブラン達もか。ブランとヴェルトの所は混雑していると思うぞ。早めに行かなくていいのか?」

「多分大丈夫でしょ。なんだかんだでみんなのおかげで俺のゲーム能力も日々更新されてるし、行ける行ける」

「そうか。なら構わないが……若葉さんとアオイさんは何故私に向かって祈っている?」

「一応神様だから」

「……2人の願いは分かった。あとで教師の真似事でもしよう」

「分かんの?」

「分かる。これでも魂を司っている訳だからな、この程度造作もない」

「そんじゃ俺からのお願いは新しく生まれた子達が中途半端な知識を得て暴走しませんように、で」

「……本格的に教師でも目指してみるか?」


 軽い願い事を言いに来ただけなのに随分真面目そうな返事をしたな。

 ノワールはこの後酔いつぶれた吸血鬼達をまとめるために残り、俺達は次はどこに行くか相談する。


「出来るだけ空いてそうな所が良いよな……」

「空いてるのはやっぱりカーディナルフレイム(うち)じゃない?基本的に教会は全国各地にあるし、本山でお参りする人は巫女さんとか真面目に信仰してる人達だけだし」

「え、ルージュって人気高かったの?」

「ルージュさんの場合は人気もありますが、戦いの神と見ている人達が多いのが理由です。この世界には冒険者も戦士も多いですから、戦う職業を持つ人達に深く信仰されています。あと鍛冶師のみなさんが火の扱いを上手くなるために信仰している、なんて話も聞きます」

「なるほどね。それじゃ次はカーディナルフレイムに行くか」

「あ、でもその穴って最後に自分が出入りした所にしか開けられないんでしたよね?行けるんですか??」

「その辺は何かアップデートされてた。新しい子供達が増えている間に俺のメニュー画面も更新されているみたいでさ、子供達がいる国にならどこでも転移可能だ。と言っても子供達の目の前に穴をあける感じだけど」


 メニューが強化された事によりアルカディア内限定ではなく結構外の世界にも干渉出来るようになってきた。

 と言っても基本的に子供達が居る所、もしくは子供達に何かを渡す事ができると言う機能だ。

 俺の穴は子供達が居る所になら穴をあけらるし、メニュー画面から直接アイテムを送る事も出来る様になった。

 え?それならおせちも送ればいいって?それじゃ風情がないじゃん。それに顔を見るための口実だし。


「チートが……チートが強化されている……」

「だよね~。ドラクゥルさんってマジで魔王になれるんじゃない?魔物の王様」


 若葉とアオイが何か言っているが気にしない。俺はルージュの近くに穴をあけルージュの顔を見に行く。


「ルージュ。おせち持ってきたぞ~」


 ひょっこり顔を出すとそこには多くの信者のみなさんが勢ぞろいしていた。

 土下座のような姿でルージュに向かって頭を下げ続ける。服装も豪華な物であり、ただの信者ではない事は見てすぐに分かる。


「我らの父よ、どうなさいましたか」


 よくカーディナルフレイムに来るとルージュと一緒に居る巫女さんが声をかけてくれた。

 若葉とアオイもこの光景に驚きながらも俺の後ろから離れない。


「もしかして儀式中だった?邪魔しちゃった?」

「構いません。ルージュ様の父は我らの父、邪魔などと思う者は存在しません。どうぞこちらに」

「失礼します」


 土下座している人達の中心を歩き、ここルージュが通るための道だよね?って雰囲気だけで分かる。

 しかも視線はないが明らかにどう下座している人達がこちらに気が付いており、誰だこいつ、気に入らねぇって空気が俺達を包む。

 俺は慣れてしまったが若葉とアオイはビビってる。

 でも案内されているので俺は堂々とルージュの前に来た。

 今のルージュは人型ではなく本来の姿に戻っているので下半身はマグマに浸かっている状態だ。


『……お父様。あまり突然来ないで下さい。この通り現在信者のみなさんの前ですので』

「悪いな、思い付きで来ちゃって。忙しそうだから後でこれみんなで食べてくれ」


 そう言ってから俺はおせちの入った重箱を2つ置く。重箱は5段重ねでご飯物からエビとかカズノコとか、縁起物が入った段も当然ある。

 もう1つの重箱には餅が入っており、醤油餅、きな粉餅、納豆餅、あんこ餅、ずんだ餅の5種類が1段ごとにびっしり入っている。

 ちなみにルージュの好みは醤油。


『……ありがとう』

「あとちょっと神様だからお参りさせてくれ」

『……簡単なのにしてちょうだい』


 その後若葉とアオイがどんなお願いをしたのか知らないが、俺は健康祈願にしておいた。

 次に空いてそうなのは……アビスブルーかな?観光都市だから休日でも関係なく働いているのは知っているが、子供達も多く働いているのでおせちの差し入れと行こう。


「これはこれはドラクゥル様。新年おめでとうございます」


 アビスブルーで最初に会ったのはタイタンさんだ。その手にあるのは恐らくこの辺りの正月料理だろう。海の上にあるからか船盛の様に見えるが、サイズは巨人様なので本物の船の上に刺身を乗っけている感じだ。


「あけましておめでとうございます。クレール達にちょっと差し入れに来ました。あとお参りに来ました」

「あまりクレール様が願いを叶えてくれる風には感じませんが……神である事は変わりませんからね。ご案内いたします」


 と言う訳でアビスブルーで新年を祝っている会場にやってきた。

 会場にはアビスブルーの従業員だけではなく、おそらくどこかの国の貴族や豪商達もいるのでどっかの会社同士の新年会の様な感じだ。

 ノワール達の様に泥酔状態ではないのでまだマシだが、その代わり商人同士の目に見えない殴り合いを見ている様に感じる。

 そんな中海入りの優雅なドレスを着て、シャンパンを片手にクレールがこちらにやってきた。


「お父様。新年あけましておめでとうございます」

「おめでとう。今日はそっちの姿なんだな」

「今日は歌姫として参加中です。何かご用事ですか?」

「いや、1週間忙しそうだからおせちの差し入れ。片方がおせち料理で、もう片方がモチが入った重箱」

「ありがとうございます!ところであんこは……」

「入ってる。お前本当にあんこ好きな」


 クレールは大のあんこ好きだ。

 あんこを求めて他の兄弟達と大喧嘩した事がある。事の始まりは同じようにあんこが好きな子供が1つあんこ餅を食べた事から始まった。

 別に1人何個と制限をかけていた訳ではないので好きなだけ食えって感じだったのだが、クレールがそれに激怒。ブチギレて本来の姿に戻り誰彼構わず水の砲撃をぶちかました。

 これはのちに『水神の怒り事件』と俺が録画してクレールの黒歴史となる。

 食い物の恨みは恐ろしいと言うが、これほどキレるとは思わなかったな……


「足りなかったら家にまだあるから食いに来いよ」

「ありがとうございます。これはみんなで食べさせていただきますね」


 あんこ餅以外だろうけどな。

 絶対あんこ餅だけは独占する。親としてそれは分かる。


「それじゃ最後に海の神様にお参りさせてもらってもいいか?」

「あら?できるだけ私に出来る事にしてくださいね」


 冗談を言う感覚で俺達に聞くクレール。

 俺はどうしようかな~っと軽く考えていると若葉とアオイは真剣な雰囲気を出しながら大真面目に拝んでいた。


「クレールさんみたいに綺麗な女性になれますように!!」

「クレールさんみたいにお金稼げますように!!」

「欲望丸出しだなお前ら!?それじゃ……俺も商売繁盛しょうばいはんじょう?」


 若葉は多分スタイル、アオイは女社長であるクレールに憧れているって感じか?

 まぁ俺も適当に商売繁盛と言ったが、アビスブルーと言う観光都市を成功させているので間違っていないと思う。


 と言う訳で次。

 次はグリーンシェルでヴェルトに会いに行く。

 と言っても忙しいのはヴェルトではなく使えている王様達が大変らしい。

 前にヴェルトが顔を出して卵を産んでから信者が増えたらしく、農業関連の人達から支持が凄いそうだ。さらに年初めにヴェルトの森に入ると縁起がいいと誰かが言いだしたらしく、年初めにヴェルトの背中に向かって国中の人達が行進するようになってしまったため、今じゃ王様達とヨハネ達が協力して入場制限を敷いているそうだ。


 なので後の方回していたのだが……


「なんか聞いてたのと様子が違うな」

「本当ですね~。聞いていたよりも森の方に入っていない様な……」

「現実逃避は止めましょう。見えてますよね」


 うん。見えてる。

 久々に見たヴェルト本体の顔。体は埋まっているままなので被害が出ている様子はないがその顔の前で拝んでいる人が大量に居た。


「神様の御尊顔を見れた人が滅茶苦茶拝んでますね」

「お供え物もいっぱいありますね。でも野菜ばっかり?」

「ヴェルトは野菜好きだからな。まぁ農作業している人達が多いだろうからだけど。とりあえず並ぶか」


 騎士の人達が列を作っているので俺達も並んだ。

 何というか人気の神社に来てお参りしている様な感じだな。お守りとか売っている出店もあるし、ここだけ日本の神社関連に近いな。

 祭り要素が強めの気がするけど。

 大人しく並ぶこと数十分。俺達の番になると両隣に居る黄緑と薄緑がゆっくりとやって来て小さく鳴く。


「黄緑薄緑、お前達も祀られる側か。でっかくなれよ~」


 頭を撫でるとヴェルトも顔をよせてくれる。


『……いらっしゃい』

「様子見に来たぞ。素顔を見るのは久しぶりだな。おせち持ってきたから後で食べてくれ」

『……ありがと』


 そう言うと分身体、見る事の多くなった人間の女性の姿の方のヴェルトが現れておせちと餅の入った重箱を受け取った。


「……みんなで食べる」

「そうしてくれ。あと俺から神様に頼むのは他の人達同様に豊作で」

「……ん。みんなに会う?」

「忙しそうだからまた今度。今度ゆっくりしようや」


 ヴェルトの所は忙しそうなので結構あっさりと済ませた。

 で、次はブランの所……


「こ、これは……」

「やっばいね。え、これ大丈夫なの?」

「これはまた……世界一も納得ですね」


 ヴェルトの居る教会、それどころかホワイトフェザーと言う国以外からも人を呼んだのではないかと言えるくらい人でごった返していた。

 このままではブランと会う事すら出来ないと言えるくらい人で溢れ返っている。


「どうします?日を改めますか?」

「そんなことしたらブランの我儘が爆発する。こういう時はお偉いさんの力を借りるに限る」

「お偉いさん?」


 メニュー画面を開いてこの国で1番偉い子に連絡する。


「あ、ブラン。今ホワイトフェザーにいるんだけど、入れそうにないから力貸して」

『は~い。今すぐ人出すね~』

「こ、これが権力者!ドラクゥルさん、恐ろしい人!!」

「アオイは本当にノリがいいな~」


 そんな感じで少し待つとライトさんが偉い神官さん達を連れて俺達の前に現れた。


「新年おめでとうございます。ドラクゥル様、若葉様、アオイ様」

「おめでとうございます。ライトさん達も申し訳ありません。お忙しい中突然来てしまって」

「新年なのですからこうして顔を出していただきありがたく思います。どうぞこちらに、関係者用の通路がありますのでこちらからお通り下さい」


 と言う訳でお偉いさんに守られながら俺達はブランの元へ。

 ブランがいるのは大聖堂の外にある裏山の中にあるブランの部屋に居るらしい。

 そこでは神聖な儀式をしているらしく、結界に不備がないか細かくチェックする日の様な感じらしい。その間ライトさん達はブランのお世話。食事を持ってきたり、身体を拭いてあげたりしていると言う。

 今日は他の信者さん達から様々なお供え物をもらえるので食料は問題ないらしいが、作るのは色々大変だらしい。

 何せ信者さん達が持ってくるからどうしても偏りが出てしまう。

 そのありあわせの食材で料理を作らないといけないので調理係は献立に大変なのだ。

 ちょっとしたハイキング気分で舗装された山を登っていると。


『お腹空いた~』


 声は大きいがどこか力のない声が山を響かせた。

 その声にびくっとなった一部のお偉いさん達。あの人達が食事係なんだろうか?どこか落ち着かない様子だ。


「ブランの奴腹減ってたのか」

「も、申し訳ありません!!ブラン様にはきちんとお食事を出しているのですが、結界の細かい修繕はお腹が減るらしく、細かくお食事を出しているのですが……」

「丁度良かった。ブラン達におせち持ってきたんで、それを食べさせましょう」

「おせち?それはどのような物でしょう」

「地元の正月料理の詰め合わせですね。ブランが好きな物もあるので少しは満足するかも」

「ありがとうございます。ドラクゥル様の料理ならブラン様も満足する事でしょう」


 おせち持ってきたのが丁度いいと言われる日が来るとは思ってなかった。

 こうして初めてやってきたブランの仕事場。ブランが住んでいるだけあって入り口から通路まで大聖堂の様に豪華だが、生活するための家と言う感じがあまり感じない。

 生活感があるのは一直線先にある部屋だけで残りの部屋はあまり感じない。

 一応今は人が行きかっているので生活感がないと感じないが、普段はあまり使われていない感じがした。


 そんな道を通りながらブランの部屋に入る。

 ブランは部屋の中心で祈りを捧げながら神聖な雰囲気を出している。力を効率よく出させるためか、真っ白い翼を出し、ドラゴンの象徴である角も出しているがほとんどの部分は人間の姿のままだ。

 その姿は誰の目から見ても女神と言うにふさわしい。

 周りがその雰囲気にのまれている中、俺はブランに話しかけた。


「ブラン。おせち持ってきたよ」

「パパ~……お腹空いた~……」


 その声は年相応の子供らしい態度であり、神聖な雰囲気はどこかに吹き飛んだ。

 全く……大人っぽくなったと思ったらまたすぐこれだ。


「はいはい。餅とおせち、どっちから食べたい」

「お肉~……」

「はいはい。1人で食えるか?」

「食べさせて~……」

「全く……」


 そう言いながらも俺はおせちと餅を用意する。

 あとはもらった小皿によそってからブランに食べさせる。


「あ~……癒される……ガブお姉ちゃんのご飯も美味しいけど、やっぱりパパのおせち食べないとお正月が来たって感じがする~」


 ……いつの間にかブランが俺の膝の上に座っている。


「いい加減親離れしろよ。さっきまでの神様らしい雰囲気はどうした」

「休業ぉ~。パパの前で神様らしい雰囲気出したくない~」

「全く。みんなで食べる様に持ってきたのに1人で食べそうだな、こりゃ。もう何度かおせち用意しないとダメか?」

「そうかもね~。他のお兄ちゃんお姉ちゃん達にもおせち持って行ってあげたの?」

「当然だろ。他のみんなにも食わせてやりたかったからな」

「多分お兄ちゃんお姉ちゃん達が全部食べちゃったんじゃないかな?ブランも全部食べたいくらいだし。あ、次醤油餅食べたい」

「はいはい。やっぱまた作らないとダメか……お前達の仕事が終わったら改めてゆっくり寝正月でもするか」

「それ良いね~。でも5日目にはゆっくりできると思うからその時ゆっくり改めておせち食べたい」

「今は?」

「栄養補給目的」

「分かりやすい」


 その後しばらく言われるままにブランの口の中に料理を突っ込む。

 本当に1人でほとんどの料理を食べ尽くしそうになっている時に俺はブランに言う。


「そろそろ帰るか。ブラン、神頼みいいか?」

「良いよ~。パパのお願いなら何でも聞いてあげる」

「別に大した事ないが……これからも家族仲良くしたいな」


 ブランの事を抱きしめながら言うとブランは満面の笑みを浮かべた後に、そのまま真面目な声色で言う。


「うん。ブランもその願叶えたいな」


 若葉とアオイもブランに何か願った後に俺達はアルカディアに帰ってきた。


「いや~これでお願い何か1つくらい叶うんじゃないかな~」

「叶うと言うか……あの5人にお願いすればどんな願いもかなえてもらえそう」

「そうですね。知力、武力、財力、権力、多少のズレはあるでしょうがどの国もトップクラスです。相当無茶な願いでなければ本当に叶えられそうなのが怖い所です」

「でもなんか忘れてる様な……」


 SSSランクモンスターの子供達は6人で、会ったのは5人。

 あれ?1人足りない??


「誰のこと忘れてるっけ?」

「え~っと、あの人!唯一神様じゃない人!!」

「あ、最後の人ですね。名前は……」


 唯一神様じゃない……

 誰だっけ?

 そう思っていると上から声が聞こえてきた。


『お~い、親父~!正月休みだから来たぞ~』


 あ、忘れてた。


「クラルテ……お前仕事は?」

『仕事?どの国も休みの日に仕事がある訳ないだろ??』


 我が家で唯一正月休みをしっかり休めるのは悪い事ではないのだが……他の子達が働いていると思うと何と言えばいいのか分からない気持ちになるのだった。

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