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2回目の収穫祭

「………………う~ん」

「どうかしたのパパ?」


 ブランが俺の隣で手伝いをしながら俺に聞いてくる。


「いやさ、なんで俺こんなことしてるんだろうな~って思って」

「何でってライトお姉ちゃんのお願いを聞いたからでしょ?あ、お一人様大銅貨5枚で~す」

「その辺は分かってるし、覚えてる。でもさ、なんか規模、おかしくね?俺小さい出店のつもりだったんだけど」

「お父ちゃん!無駄話してるならキャベツ切って!!焼きそばとお好み焼きのキャベツ足りなくなってきた!!」

「なんでそんなにキャベツ多めばっかりチョイスしたんだよ、ルージュ」

「少しでも量が多い方が売れるでしょ?それにちゃんと量は同じにしてあるから大丈夫」

「どっかの関西人か。俺東日本出身なんだけど」

「は~い。ブルーハワイでお待ちのお客様、どうぞ~」

「アルファはキャベツの千切り、ベータはシロップの補充を頼む。父さんは呆けてないで動いてほしい」

「あ、うん。分かった」


 こうして俺は考えることをやめてひたすら手を動かす。

 現在俺達家族は、ホワイトフェザーの収穫祭でで店を切り盛りしています。


 ――


 何でそんなことをしているのか、それは1週間前までさかのぼる。


「魔物のせいで来るはずだった出店の人が来れない?」

「はい……情けない話なのですが、今回の収穫祭で皆様が期待してくれていた出店の方々が魔物の影響で食材が手に入らなかったり、屋台を壊されたことで今回は参加できそうにないと報告がありました……」

「でも魔物ってホーリーランドが倒しまくってるんじゃ?」

「倒していると言ってもパープルスモック周辺の土地の話であり、諸外国では大型の危険度Sに指定されている魔物を中心に倒しているので村の周辺にいるほとんど普通の動物と変わらない魔物ですから、対策外の魔物ばかりでして……」


 それを聞くと捕食生物が減ったせいで増えすぎた鹿みたいに聞こえるな。

 あいつらも天敵がいなくなったせいで大繁殖したみたいだし。

 そのSランクの魔物がどんなもんだか知らないが、減らし過ぎたんじゃねぇの?


「それで、俺達は具体的に何をすればいいんですか?」

「減った分の出店手伝ってください。このような事をお願いするのはお恥ずかしいのですが……」

「別にいいですよ。これだけは欠かせないってものだけ教えていただければこちらで用意します」

「欠かせない物となりますと……やはり目玉の出店でしょうか」

「何を出すつもりだったんですか?」

「氷菓子です」


 …………氷菓子?


「どんな氷菓子ですか?」

「みなさんで言うところのかき氷です」

「……かき氷」


 出店の定番と言えるが夏限定のイメージが強い。

 海の家でなんかめっちゃ高い本当に氷削っただけだろ?と言いたくなるかき氷。

 それともあれか?ちゃんとした店みたいになんかこう、厳選した氷を使って頭が痛くならない氷でも食べさせるとか?

 もしくはちょっとオシャレにフルーツを乗せた感じのとか?


「それって何か特別な感じのかき氷ですか?」

「特別……皆様の前で言うのは失礼ですが、氷菓子、かき氷と言うだけでこの世界では特別なのです。今回の出店で持ってくる氷も高い山で保存されていた氷なのです」

「あ、なるほど」


 この世界では氷を保存するだけでも大変なのか。

 魔道具で食材を保存するだけでもギルドと言う巨大組織が関わらないといけないくらいなのだから、個人で氷を持ってくるだけでも大変だったんだ。


「かき氷ならこちらで用意できます。他にも何かありますか?」

「あと2つ、食べ物系の出店でお願いしたいのですが、こちらは特に指定はありません。ただ大勢の方がこられると予想されますので大量に用意できるものがよろしいかと」

「了解です。それではこちらで用意させてもらいます。それから出店の大きさも確認させてください」


 細かい話を詰めた後に家族会議。

 と言うか何を作るのかはもう頭の中で決まっている。


「出店でお好み焼きと焼きそばですか」

「できるだけ食材が同じで大量に作れると思ったのがこの2つだ。キャベツに小麦粉、紅ショウガにベーコン。簡単に作るから食材も簡単なものにしよう。あ、お好み焼きはベーコンと一緒に焼いた豚玉もどき一品でやる」

「それならまぁできそうですね。それで出店の手伝いをする人はもう選びましたか?」

「さすがにそれはまだ。あ、でもクレールにはカキ氷用の氷用意してほしいから準備お願い」

「嫌です」

「………………え」


 え?なんで断られるの?

 俺なんか怒らせるようなことしたっけ??


「氷だけではなく屋台の手伝いも一緒ならお手伝いします」

「え、あ、ああ。それじゃ頼む」

「私も手伝うよお父ちゃん。鉄板を使った料理なら作れるし」

「あ!お姉ちゃんたちが手伝うならブランも手伝う!!」

「なら私も手伝おう。現場を指揮する者が必要だからな。父さんは料理に専念してほしい」


 なんかうちの子のほとんどが参加することになっちゃったな……

 まぁ土壇場の突然出てくる出店にそんなに客は来ないだろうし、のんびりやりましょ。


 ――


 なんて思っていた時期がありました。

 色々抄訳して簡潔に言うと俺の事を覚えている人が想像以上にいた。

 どこで覚えていたかと言うと感謝祭とダブって盛大に祭りをやっていたあの時だ。

 何故だかは分からないが俺が肉を仕入れて配布していたことを一部の人が覚えていたらしく、その人達がはしゃぐと周りの人達も思い出したと言う訳。


 と言ってもかき氷以外は見たこともないよく分からない料理だからそんなに売れないだろうと思っていたが、何故か売れる。

 どうやらソースの香りに引き寄せられた客たちが多く、最初の内はお好み焼きはよく分からないけど、焼きそばは何かの麺料理と見た目で分かったようなので最初はそちらばかり売れていた。

 しかし一部の見た目にとらわれないお客さんがお好み焼きを食べ、うまいと絶賛しているうちにお好み焼きも自然と売れるようになっている。


 で、現在焼きそばとお好み焼き、かき氷の3つをフル回転させて売りまくっていた。


「いや~でもこれどうよ?普通はもっと慎重に来るものじゃない?」

「慎重?」

「初めて見る、初めて食べる物だぞ。普通警戒しない??」

「そこまで変な形じゃないから大丈夫だよ。はい2人分で大銅貨10枚です。ありがとうございましたー」


 ブランも売り子が板についてきた。

 そして緊急用の手伝いとして若葉とアオイ、そしてアオイと一緒に居る女の子達にも手伝ってもらっている。

 最初は俺とブラン、クレール、ノワール、ルージュの5人でやっていたがこれでは手が足りないという事で急遽10人追加して合計15人で店を回す。


 ノワールは指示を出しながら料理の仕込み。

 ブランはお好み焼きの売り子。

 ルージュは焼きそばとお好み焼きの調理担当。

 クレールはかき氷の売り子担当。

 俺は各料理の仕込み全般担当。

 若葉は焼きそばの調理担当。

 アオイは焼きそばの担当。


 こんな感じでキャベツを千切りにしたりざく切りにしたりする。

 あれ?俺キャベツ担当になってない??

 まぁ食材がダブるように考えたのは俺だけどさ、それでもやっぱり消費量多くない??

 と言っても自分で提案し、自分で売ると決めたのだから切り続けるしかない。


 その結果と言うかなんというか、めっちゃ売れた。

 ちなみにこの売れた金はバイト代として若葉たちに渡す予定だ。

 元々はたいして売れないだろうと思っていたので売り上げはライトさんに寄付と言う形で受け取ってもらおうと思っていたのだが、それはバイト代を払った後の残りでいいか。

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