反省
ライトさんの強烈な一撃によりホーリーランドの勢いは一気に削がれた様に感じた。
自分が信仰している宗教に、お前下手な事考えているならぶっ殺すぞ。みたいな事を言われたらそりゃ普通はビビる。
多分ホーリーランドは神を殺すと言う事をこれからも全否定していくだろうが、ライトさんはライトさんで魔物を殺すつもりならうちの神様も殺すつもりなんだろ?と言い続けるつもりの様だ。
つまりこれはホーリーランドが魔物を絶滅させるという公約を破棄しない限り、ライトさんは神を殺すかも知れない危険人物として接していくつもりだと言っているらしい。
この辺はノワールとかが分かりやすく言ってくれたので何とか理解できた気がする。
とにかくホーリーランドはホワイトフェザーの逆鱗に触れてしまった国として力のない小国はホーリーランドを支持する事をやめる可能性が非常に高くなったらしい。
新しい英雄よりも重鎮を怒らせる方が恐ろしいと感じる人の方が多いだろうとの事。
なんにせよ魔物を絶滅させてくれる存在だと安易に飛びつく可能性はかなり低くなった様だ。
それがこちら側にとって都合が良い事は分かるが……他にやり方なかったの?
圧倒的な攻撃過ぎて周りの人達ドン引きしてたぞ。
「まさかとは思うけど、この攻撃他の6大大国もやる訳じゃないよね?ね?」
「それはホーリーランドの出方次第、だろう。それに少しでもこちら側に陣営を増やしておかないといけない」
「何でだっけ?」
「この会議で各国の王達7割が賛成した場合ホーリーランドも大国の1つになってしまうからですよ」
クレールの説明によるとこの会議に参加している国の7割が賛同すればホーリーランドは目で立つ6大大国の仲間入りを果たすらしい。
何度も言うが6大大国に数えられる国が変更する初めての事態なので6大大国に数えられるためのルールは慌てて作られた。
そのルールが会議に参加している各国の王達7割から認められる事となった。
他の案として6大大国全てに認められる事と、他の王様達9割から認められる事に最初しようとしていたらしいが、流石にそれは条件が厳し過ぎると言う事で7割になった。
なのでビビりな国がこれでホーリーランドの味方をしなくなったらかなり優勢に働くらしいのだが……
本当に大丈夫?やり過ぎてない??
最近のライトさんはブランの事を守るために結構過激な発言をしている様に感じる。
だからそんなライトさんに対抗して各国が協力する。と言う状況になったら不味いのではないだろうか?
「でもこれって本当に大丈夫なのか?ライトさんスゲー好戦的なんだけど」
「ライトお姉ちゃんはわざとやってるみたいだよ。ブランに敵対心があるのか、本当に世界の事を考えているのか、色々確かめたいから厳しくするって言ってたよ」
「そうなの?俺の目にはやり過ぎている様に見えるから不安なんだよな……」
あまりにも刺激し過ぎて怒りみたいなものを持ったら怖い。
煽り過ぎ注意報出てると思いますよ。
そんな会議から戻ってきたライトさんは小さく息を吐いて一言。
「……やり過ぎたかもしれません」
「ほら!ご本人が言っちゃってるじゃん!!」
ご本人が気にしてるって結構な事だと思うよ!!
俺だってあんな雰囲気の中心人物になりたくないわ!!
「ライトさん……なんでやり過ぎちゃったんですか」
とりあえずホットミルクに少し砂糖を足した甘いホットミルクを差し出す。
ライトさんはうつむきながらホットミルクを受け取り、ちびちびと飲みながら教えてくれる。
「だって……魔物絶対ぶっ殺す国の国王ですよ。いつかブラン様のことも狙うかもと思うとつい……」
「それは確かに考えておかないといけない事ですが、今は大丈夫だと思いますよ。ご本人もブランの事を魔物ではないから狙わないと言っていたじゃありませんか」
「ブラン様の言葉を否定するわけにはまいりません。ブラン様は確かに神ですが、魔物でもあるのです。それはミカエル様達も同じ。その事を受け入れ、それでも共存する必要があるのです。ですから私はつい……」
ライトさんなりに信念と言う物があったのは分かったが、それでもやっぱり今回はやり過ぎだ。
俺だってつい興奮して強く言ってしまう事はあるけど、権力なんて物はなかったからそれなりに平和だったと思う。
これに対してはグリーンシェルの王様やタイタンさんもやり過ぎだと言う表情をする。
「ある程度の脅しなら分かるが、あれはやり過ぎだな」
「ホーリーランドは元々はホワイトフェザーの属国だったのですから、むしろ都合よく利用する方が得策では?」
その言葉にライトさんは何も言い返せずにうつむいていた。
やっぱり信仰心の深い人ってのは自分が信じている神様の事をバカにされたりするとこれくらい起こる物なんだろうか?
俺はあまり神様について真剣に考えた事がなかったからあまり言えないけど、ちょっと怖かった。
こういう事があって派閥と言う物が生まれるんだろうな~っと何となく思った。
「俺に何か言える権利がある訳じゃありませんが、とりあえず明日以降は強くやり過ぎないようにしましょう。ね」
「ドラクゥル様……申し訳ありません」
さて、あっちはどんな風に感じているのか、確かめておきたいな。




