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ライトフェアリーは潔癖のような気がする

 もうしばらくライトフェアリーで色々と国の様子を眺めながら観光をしているとやっぱりやる事がなくなってくる。

 いや、いつでもアルカディアに帰れるから基本的にはアルカディアで仕事を終わらせた後にライトフェアリーの様子を観察しているんだけどさ。

 でも基本的に学校とか病院とかの公共施設ばっかりで遊ぶところと言ったら公園ぐらいしかない。しかも子供が遊ぶような遊具の公園ばかりなので、俺のような大人が講演ではしゃいでいるとなったらかなり奇妙だろ?

 まぁこの国の大人は精神年齢が低いせいか、それとも子供に合わせているのか一緒に遊具で遊んでるけどな。


 とにかくこの国は潔癖症と言ってもいいぐらい人間の汚い部分をできるだけ排除した、という印象を受ける。

 例えばタバコや酒の類は売っていない。まったく無いわけではないが酒類はすべて調理酒だ。嗜好品としての飲んで楽しむ酒とは違う。


 そして当然のようにタバコも一切売られていない。

 この世界では禁煙と言う言葉は一切ない。他の国ではタバコと言うよりはキセルとかパイプと言う方が正しいようだが、タバコをふかして街を歩いているのは普通と言っていい。むしろ貴族社会ではタバコを吸わない大人はいないという印象すら受ける。

 おそらくだがタバコによる体への悪影響を知らないのだろう。


 ある程度はクレールの影響で科学的な文明は少しずつ浸透しているが、病気に関する知識があるのかないのか、そのあたりはぶっちゃけよく分からない。

 一応病気に対して薬草を使う。それぐらいは見たことがあるがその薬草として使っている者が本当に治療の役に立っているのかどうかは不明だ。

 俺達の場合はアルカディアで使わている薬を使っているので正直この世界の薬がどれだけの効果があるのか知らない。

 多分ラファエルかドクターあたりに確認をとれば分かるんだろうが、わざわざ聞くほどの物でもないしな……


 まぁとにかく、この世界ではアルコール中毒とかニコチン中毒とかそう言った物が知れ渡っているとは限らない。

 と言うか聞いたことない。


 そんな世界の中、タバコやら酒やらが一切ない国と言うのは本当に奇妙に感じる。

 こういってはいけないがタバコと酒って異世界だろうが大昔だろうが絶対にある嗜好品と言っていいはずだ。ヨーロッパでは汚い水を飲むよりも酒に変えた方が安全だとか何とかで、水よりもビールを日常的に飲んでいたとテレビで聞いたことがある。

 だからまぁ酒=よくない物とは言い切れないはず。

 でもそれが一切ないなんてな……のんべえや喫煙社会に逆らう人達にとってあり得ない国だよ本当に。


 あ、ちなみに俺は吸ってないよ。娘たちにタバコ臭いと言われて嫌われたくないから。


「それにしても……何もない」

「それはそれで失礼じゃない?確かにただで遊べるけどちょっとインパクトが弱いよね」


 隣でソフトクリームを食べながら言うブラン。

 暇そうにしているのは精神的にこの程度の公園の遊具では遊び足りないからだ。

 やっぱりアビスブルーとかの遊園地を知るとこの程度じゃ遊び足りなくなるよね。しかも行こうと思えばいつでも行けるし。

 しかもクレールがサービスしてくれるのでただで乗り放題だ。

 そのうちアオイの子供達も連れていきたいと思っているが、今は外の世界に触れるのが楽しいらしく、カイネでお使いに行ってもらったりして少しずつ慣れてきている。

 まだアビスブルーは刺激が強すぎると周りに言われているのでもうちょっとだけ待ってもらっている。

 もう少し慣れたら連れていく予定だ。


「……俺も子供の頃はこんな感じの遊具で満足してたのにな……いつの間に飽きちゃったんだろ?」

「それが成長ってものだよ。生きている間に同じことを繰り返している間に自然とそうなっちゃうものだから」


 ブランよ。やっぱその見た目で大人発言はちぐはぐだぞ。

 俺だってそれなりに成長しているけどさ、まだその領域にたどり着いてないから。仕事してそれなりに時間経つけど、結婚したり子供出来たりした人以上の発言だと思う。

 いや、俺も子供はいるんだけどね。まだ20代だから。


「で。ブランの方は何か分かったか?」

「あ~うん。多分だけどティターニアが中心なのは確実だと思うよ。この国の人の事を考えてるけど過保護すぎ。国の運営も正直ダメだよ。自分たちで働いてないも同じ」

「どういうことだ?一応畑仕事したり、木の管理をしたりしてるんだろ?」

「うん。でもね、普通ならほかの国に売るためにいっぱい作ったりするけど、この国じゃ自分たちで食べる分しか生産できてないの。主な収入源は裏カジノばっかり」

「え。てことは俺が潰した裏カジノは……」

「ライトフェアリーの収入源の1つだね。かなり大きな規模だったから収入もかなり大きかったと思うよ」

「良く規模までわかるな」

「そのあたりはクラルテお兄ちゃんから聞いた。あとでちゃんとした国の人が調べてくれたらしいから正しいと思うよ。クラルテお兄ちゃんの所は警備員の人らしいけどね」


 国によって警察のみなさんの違いがあるのは知ってたけど、クラルテの所は警備員さんなんだ。

 そこは普通に警察でもいいんじゃない?


「クラルテの奴は気が付いてるよな。絶対」

「気が付いてるよ。そのうえで属国としてお金をライトフェアリーに送ってるから多分潰した分のお金は渡してるんじゃないかな?」

「それはそれで何がしたいんだ?わざわざ俺に潰しておいてその分金渡すって何?何がしたいの??」

「たぶん一応ライトフェアリーにこれ以上は止めろって言いたかったんじゃないかな?それでも一方的に攻撃したお詫びとしてお金を渡した、て所かな?」

「……なんにしても俺が間を取り持たたないといけない事だけは分かった気がする」

「それからこの国が悪いことをせずに大国でいられる政策もね。どうする?グリーンシェルの時みたいに果物でも育てさせる?」

「それはやめとく。グリーンシェルの王様たちにも悪いし、他の方法でいいんじゃないか?」

「例えば?」

「……やっぱ花売ればいいんじゃないか?なんだかんだで花って売れるんじゃないか?」


 やっぱ思いつくのはそれだ。

 花は色々な贈り物の代表の1つだろう。

 恋人に贈る、お世話になった人に贈る、祝い事に花を贈る。

 こんな感じで花を贈る場面は非常に多い。

 だからこそ確実に売れるし、フェアリーが作った花や花の種は特殊な素材になることもある。あとは単にフェアリーが育てた花と言うところが興味を引き付けることが出来るだろう。

 フェアリー製の花束と聞けば欲しがる人はかなりいると思う。

 俺の言葉にブランは何度も頷く。


「確かに花なら問題ないかもね。もう既に生産しているものだし、売ろうと思って育てればできるかも。でもフェアリーにとって花って結構重要だよね?」

「俺から見ればそんな大したもんじゃないんだけどな……」


 甘い物ばかり食べるフェアリーにとって花の蜜と言うものは重要なエネルギー源であり、自身が暮らす家でもある。

 だから家兼食料である花を大切に育て、そのために魔法を使って住み心地をよくしているので特別な花になるのだ。

 どの花を住処にするかは個性による。だから花そのものは特別な物ではなく、フェアリーが育てたから特別になったと言った方が正しい。

 だから他の国には決してまねのできない唯一無二と言っていいいい商売だと思う。


「問題はフェアリーたちがやる気を出すかどうかだが……」

「それなりの報酬、お菓子とか用意しないと多分まじめにやってくれないよね」

「だろうな。稼いだ金で菓子でも食えばいいと言いたいところだが、この世界の菓子って基本的に甘ったるいんだよな。ブランはどうよ?女の子代表」

「私の舌でもすごく甘いって思うよ。甘ければ甘いほど高いお菓子っていうのは知ってるけど、やっぱり甘すぎ」

「フェアリーに口に合うかね?」

「……可能性はないとは言い切れない」


 そう言って一緒にため息をついた。

 どうやらティターニアが中心にこの国をこんな形にしたみたいだが、とりあえずアドバイス。

 子供はいつか巣立ちするものだ。

 だからずっと親のそばにいるように育てているのは間違っている。

 そう伝えに行かないといけないな。

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