子供達がこの世界に与えた影響を考えてみた
意外とあっさり入ることが出来たオベイロンとティターニアがいる国会議事堂もどき。もどきと言うだけあって外見は国会議事堂に似ているが中身は全く違った。
なんか知らないけど途中にある中庭には花や背の低い木などが整えられて植えられているのを見ると植物園と言う方が正しいと思う。気温は植物が育ちやすいようにか、少し高めの気温を保っている。
真正面から議事堂もどきに入ると、受付にいた何かは丁寧に頭を下げる。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょう」
またこいつか。
例の裏カジノのオーナーと似た感じの人間に近いけど別な感じのする奇妙な気配。今回は女性のエルフを真似た様だが、やはり奇妙な感じはぬぐい切れない。
なんというか、ちぐはぐな感じがしてすごく気持ち悪い。見た目と言動が違う人を見ている感じがするというか、ネトゲーで明らかにリアルの性別と違うキャラ使ってるなっと分かるような、そんな感じ。
「オベイロンとティターニアに会いたい」
「申し訳ありません。王と女王は現在重要な会合に出ておりますので現在は不在です」
どうやら今はいないらしい。
ノワールにそっと視線を送ると彼女の言葉を肯定するように渋々頷いた。
「分かりました。それじゃあ帰ってきたら俺が来たことを伝えていただきますか」
「どのようにお伝えすればよろしいでしょうか?」
「『ドラクゥルが来た』っと言えば分かってくれると思います。あ、それから少しここを見て回ってもよろしいでしょうか?」
「それはご自由にどうぞ。あ、でも花などを勝手にちぎって持っていくようなことはしないでください。妖精のみなさんが困りますので」
「分かりました。眺めるだけにしておきます」
そう言ってから俺達は植物園を見て回ることにした。
植物園と言ってもやはり花の方が圧倒的に多い。その理由はフェアリーは基本的に甘党だからだ。
女の子の夢に出て来る様なフェアリーが多いため、基本的には鼻の蜜や樹液を好んで食べる。液体系の食事を好むと言う点では吸血鬼達とあまり変わりはない。体が小さいせいなのか、少量で大量のエネルギーを得る事の出来る糖分を非常に好む。
肉や魚というたんぱく質でも大丈夫なはずなのだが、種族的な物か、それとも遺伝的な物なのか分からないが糖尿になるぐらい甘い物が好き。
一応フェアリーにも雌雄は存在しているがどちらも甘党だ。
そんな花畑にしゃがみながらアオイは指を差しながら言う。
「ねぇねぇドラクゥルさん。今度うちの小さい子達にここ連れてきてもいいですか?あの子達喜びそう」
「いいんじゃないか?アオイの所は女の子ばっかりだし、やっぱりこういうファンタジーな光景は好きなの?」
「そう言うのもありますね。それにカーディナルフレイム出身だと植物が珍しいんですよ。綺麗な花なんて基本的に造花でしか知りませんし、本物は貴族か王族に送られる非常に高価な贈り物としてしか知らないですから」
「あ~。お国の事情か。というか逆にカーディナルフレイムにあってこっちにはない物ってないの?そろそろ逆パターンも聞きたい」
俺がそう聞くとアオイは少しだけ考えた後に手を打ってから言う。
「あ。そう言えばこっちだと魔物系の素材が非常に高いですね。なんでですか?」
「何でって……若葉」
俺はよく知らないので若葉に説明を頼む。
若葉は仕方ないな、という表情をしてから説明をしてくれる。
「はいはい。アオイさん、一般的には国や町などから一定の範囲内に魔物が入り込まない様に魔物や動物の排除を目的とした魔物の討伐を行います。そのため人間が住む国や町には滅多に魔物は近寄って来ません。村の場合は防衛面が少し弱いのでたまに近くまで来ますが、やはり滅多に起こる事ではありません。もし被害が起きたとしても遠くからやってきた魔物、それも強い魔物が迷い込んできたパターンが非常に多いですね」
「排除ってそんな簡単に出来るの?」
「もちろん時間はかかります。基本的に年単位での計画ですから。いくら弱い魔物と言っても最初の頃は縄張りを取り返そうと襲ってくる事も多いですし、村などを作るとなれば戦える冒険者だけではなく農家の方や大工さんなどもいますから全く被害が出ないと言う事はありません。就寝中に襲われた、なんて話もよく聞きますから」
「…………若葉ちゃんってなんでそんなに詳しいの?」
「最初の頃ギルマスに色々教えてもらっていましたからね。ですから完成して何年も経った町の近くに基本的に魔物はいません。すでにそこは人間の縄張りであると知っているからです。なので冒険者が魔物を狩るためにはそれなりに離れた所に行かないと魔物と出会う事すら基本的にはないんですよ」
いや~……ほんと若葉ってこういう知識かなりあるよな。冒険者絡みとの時は基本的に若葉に聞いてるし、我が家の常識担当でもあるから凄く助かってる。
うちの子達も2000年この世界に住んでるから一般常識はあるんだけど、何となく上流階級の一般常識って感じがするんだよな。
だからこういう話を聞くときはやっぱり若葉に頼ってしまう。
やっぱもうちょい給料増やしておくか。
「もしかして、それが普通?」
「おそらくこっちの方が普通だと思いますよ。カーディナルフレイムはダンジョン都市と言われるだけあってダンジョンが近いですが、他に聞くのはグリーンシェルぐらいです。他のダンジョン都市と言われる町や国であっても最低1時間は歩いた先にダンジョンがあると聞いています。それでもゴブリンとか弱い魔物が出るダンジョンばかりらしいですが」
「魔物が近くにいるのが自然すぎて知らなかった。やっぱり普通は魔物が近くにいないよね」
「私も最初の国がグリーンシェルだったのでダンジョンが一般的な物かと勘違いしていましたが、ダンジョンの数は元々そんなに多くはないみたいですよ。単に魔物が大量に住んでいる土地の事をダンジョンと呼んでいる地域もあるらしいですし」
「なんかゲームみたいにダンジョンの中だけで生きている生物、みたいな感じだと思ってたけど、普通の動物みたいにママから生まれるからあまり動物と変わらないのかもね」
「そう考えている方が自然だと思いますよ。特殊な進化をした動物、と考えるほうがいいでしょうね」
若葉とアオイの会話を聞きながら俺なりにこの世界の魔物について少し疑問点がある。
それはうちの子達の影響がどこまでこの世界の生態系に影響を与えているのか。
子供達が現れたのは約2000年前。
それ以前に魔物がいることは最低でもブラン達の出会いを書いた白夜教の教本から読み解く事ができる。
ではブラン達が現れたことでどのような影響が出たかと考えると非常に大きな影響を与えたと俺は考える。
まずブラン達SSSランクの魔物がいる国は6大大国と言われるようになり、人間に大きな影響を与えている。クラルテの場合はよく分からないけど。
それぞれブラン達を中心に、危機的な状況から助けられた種族は非常に多い。
ブランは魔物におびえる人間を救い、ノワールは食人種に安住の地を作り、ヴェルトはダンジョンと言う恵みを与え、クレールは巨人族たちに土地を与え、ルージュは危険な火山がある場所に国を築いた。
うん。ものすごい影響を与えているってバカな俺でも分かる。
さらにクレールに関しては文明の部分で非常にこの世界に貢献していると言っていい。
それ以前に機械文明、いや科学文明と言うものが存在していたとは思えないので科学を知るきっかけを与えたと言ってもいいのかもしれない。
ブランは言わずも知れた世界最大の宗教団体を作り上げたわけだし、影響ありすぎない?
ノワールは食人種の管理をしてたような感じだからもしかしたら食人種による影響を事前に抑えていた可能性がある。
ヴェルトだってグリーンシェルに行かなかったらグリーンシェルと言う国そのものが大国にカウントされることすらなかっただろう。
ルージュの火山の力を抑えるのは人や動物たちが生きていく上で必須と言える。
こうして考えてみるとやはり子供達の影響は非常に大きな物となっている。
仮に子供達がこの世界に来ていなかったら、どうなっていたんだろうか。




