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裏カジノ、ほぼ壊滅?

 最初にちょっとだけ遊んだ後、次の日から俺は裏カジノに通い詰めてボロ勝ちし続けた。

 クラルテの予想通り魔物、正確にはモンスターに関する知識だけでかなりの危険なギャンブルを攻略していった。

 砲弾牛に追いかけられるのに似たゲーム、大型犬に追いかけまわされるゲームでは服従させる。

 なんかマ〇オに出てくるパ〇クンフラワーに似た植物の前で食べられないようにじっとするゲームでも勝ち、巨大プールの中でサメに襲われないようにするゲームでも普通に勝ち、どんどんチップを稼ぎ、景品を分捕っていく。


 ちなみに手に入れた景品に関してはほとんど廃棄している。

 大麻系のヤバい草は栽培しても意味ないし、すでにいつでも手に入れることが出来るクレールの枝とか俺の中では価値が低い。

 でも中には本当に裏ルートでしか手に入れらない物、例えば絶滅した植物の種とか、俺の知らない魔物のはく製とか、そういう物に関してはちゃんと保管している。


 そして日に日に俺が大量の景品を分捕っていくので景品の補充が間に合わない。

 それによりほかの客は不満を覚え、少しずつ客足が遠のいていく。さらに俺が動物系のゲームに出場すれば必ずと言っていいほどに俺に賭けるので運営は大損し、俺が勝つと分かってる感じがしてつまらないと感じるようになったのか、一部の客が静かに消えていった。


「申し訳ありません。カジノはしばらく休業させていただきます」


 そして今日、裏カジノに来ると休業させてもらうと入り口の人達に言われた。

 理由を聞くと景品を補充するのに時間がかかるのでそれまで休みだと言われた。

 それ一緒に聞いたクラルテは気分よさそうに一緒に帰る。


「いや~ほんと親父様様だよ。1度も負けずに相手の懐をすっからかんにしちまうなんて、親父って容赦ないな!!」

「別に、勝てるゲームで勝ちまくっただけだ。それよりそっちでブラン達が大暴れしてるって聞いてるが?」

「………………まぁ親父を借りた分の金を払ったってことにしておくよ。こっちはこっちで景品の補充が大変だ」


 そう言いながらさっきまでの楽しそうな表情はどこに行ったのか、ため息をついて疲れた表情をする。

 しかしすぐに表情を元に戻してスキップしながらカジノに帰って行った。

 俺はクレールと顔を合わせ、ちょっとだけ言ってみる。


「次はクラルテの所で遊んでみるか」

「ふふ。お父様も意地悪ですね」


 こうして無事裏カジノに大打撃を与えたことをライトさんに伝えた。

 ライトさんも違法物がホワイトフェザーに持ち込まれる要素を少しでも排除したかったらしく、ひと段落したら教えてほしいと言われていたので教えておく。


「そうですか。客足が遠のき、景品もドラクゥル様に奪われて撤退したのですね」

「一時的かもしれませんがそういう事です。次に再開されるのはいつになるのか分かりませんが、それなりに時間は稼げるでしょう」

「ちなみにですが、その会場にホワイトフェザーの物が紛れてはおりませんでしょうか?」

「う~ん。さすがにそれは……」


 俺は元々興味を持たないと人の顔や名前を覚えられない質だ。

 そのため学校に通っていた時もクラスメイトの名前なんてほとんど覚えていない。


「それならご心配いらないかと。一部の位の高い貴族、枢機卿の顔は覚えておりますが、今回の会場では見かけておりません」

「それは本当ですか?非常に助かります」

「クレール?なんでお前がホワイトフェザーの貴族とか枢機卿の顔知ってんの?」

「あら、これでも世界最高の観光大国、アビスブルーの長ですわ。相手の顔を1度で覚えるのは義務であり、当然の技術です」

「あ~。なんか旅館の女将とかそういう人が出来るイメージあるわ」


 なるほどなるほど。それで相手の顔を覚えていたからここしばらくは来ていないことを確認できたと。


「てことはホワイトフェザーのお偉いさんって結構アビスブルーに遊びに来てんの?」

「はい。安定したいいお客様達ですよ。枢機卿の方々も元はホワイトフェザーの貴族、スイートではありませんが一般向けの客室に泊まり、ご家族と過ごされる方が多いですわ。特にお孫さんを連れた枢機卿が多いですわね」


 おじいちゃんが孫と一緒に遊園地に行っている感じだろうか?

 最高の観光都市に行くってのが凄いけど。元の世界だとデ〇ズニーランドに行く感じか?

 タイミングとかお金の事情とか色々大変そうだけど。


「俺てっきり枢機卿とかってそういうの興味ないんだとばっかり思ってた」

「お孫さんを楽しませるのが目的でしょうから、プールなどに来ても枢機卿は近くのパラソルの下でお孫さんを見舞っている方の方が多いですわ」

「たまに長期休暇を取りたいと言うときは大抵アビスブルーに行きますから、休暇中の調整が大変です」

「あ、それから盗品だっていう奴はライトさん経由でお返ししてください。俺には必要のない物ですから」

「承知しました。責任をもってお返しします」


 景品の中にはどこかの盗賊だか泥棒だかが盗んで売ったという剣や楯などがあった。

 これなんだろうと思ってライトさんに聞いたら盗まれた物だと聞いたので返却する。俺が泥棒だと思われたくないし、宝石の類は価値がよく分からん。

 ルビーがいる火山の近くか、ノワールがいる洞窟で宝石は採取できるのでぶっちゃけ手に入れようと思えばいつだって手に入れることが出来る。

 そして返す相手は俺というどこの誰とも分からないやつより、白夜教の教皇が返した、の方がちゃんと信じてくれそうだし。一応俺の事も伝えるかどうか相談されたが、裏カジノの景品として出てたのを分捕ってきたと伝えるのはどうかと思うし、伝えなくていいと言った。


「それにしても結構あるもんですね。盗品の景品」

「もっとも手に入りやすい物だから、でしょう。こういった名のある盗品は堂々と表で売る事は難しく、裏でしか売られません。しかし知名度があまりにも高すぎる場合には裏でもごく一部の者しか買い取ってはくれませんので自然と流れ着いた、と言えるでしょう」


 それ盗んで意味あんの?

 盗んだ物を堂々と家の中で飾るのもなんか違う感じがするし、本当になんで盗むんだ?


「…………なんで盗むのか理解できませんね」

「理解できない方が自然ですよ。小さな子供がおなかをすかせて食べ物を盗んだ、その方が分かりやすいです」

「それはそれで理解したくありませんけどね。自分の子供が腹を空かせて物を盗むなんて状況は」

「そうですね。そうならないように私達は頑張っています。残念ながらブラン様達にまだまだ頼っておりますが」

「そのうち自立できるようになりますよ。それに俺から見れば十分やっていけている気がするのでそんな風に思わなくてもいいと思います」

「ありがとうございます。それではこちらの盗品は後日こちらから各地に返させていただきます」


 こうして俺はライトさんに報告し、ゆっくりと眠ることにした。

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