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ギャンブルとは、知識で攻略するものです

 クラルテに案内されてやってきたのはカジノから結構離れた普通のビルと思われる場所に俺、クレール、クラルテの3人はやってきた。

 カジノから結構離れているせいか、街灯もなく、中心部が明るいせいか余計に暗く感じる。

 そのビルの中に入り、地下につながる道をひたすらに下っていく。


「おいクラルテ。本当にここで合ってるのか?随分下りたが地下深くに裏カジノがあるのか?」

「正確に言うと地下でもないけどね。この道はただ単に客や僕の様な連中に対してどこにあるのか分からない様にするために、長くて暗いトンネルを歩かされてるだけ。実際にはどこかの地上だよ」

「全く。下らない事をさせますわね。真っ当な商売をしていない証拠ですね」


 クレールはそう吐き捨てる。

 それに関しては確かに思う。わざわざご丁寧に自分が今どこにいるのか分からない様にするとは手の込んだ事だ。

 そう思っている間に今度は緩やかな登りになり、さらに進むとそこには意外とちゃんとスーツを着た男達が門の前に立っていた。


「いらっしゃいませ。ごゆっくりとお楽しみください」


 そう一言だけ言ってボディーチェックすらなく意外とあっさりと裏カジノに入る事ができた。

 裏カジノは意外と広く、クラルテが言っていた様に魔物を使った命懸けのゲームが多い様に感じる。


 例えばスペインの闘牛の様なステージには牛型の魔物の他に複数の人が入っており、牛に追い掛け回されている。ステージに居る人には安全を守るための防具の様な物は一切なく、簡素な服とゼッケンを着ているだけ。すでに死者が出ているらしく、ステージの内側には牛にひかれた人の死体が転がっている。


 次に目に付いたのは土管の様な物の中に人が入って行く。

 どうやらその土管の中にはタコ、もしくはイカの様な生物が入っているらしく、その生物が入っている所に入ってしまった人は必死に逃げようとするが、触手に捕まり引きずり込まれていく。


 他にはタコ焼き?の様な物を食べ続ける人達が居る。

 食べるだけなら楽そうと思ったが、どうやら劇物が入っている様で、口に含んだ物を慌てた吐き出したり、悶絶して苦しんでいる人達が見えた。


 そして最も異常に感じたのはそれを見て楽しんでいる紳士っぽい誰か達。彼らはステージに居る人達が必死に足掻く姿を見て楽しんでいる。

 やはりこういう人間達は苦手だ。

 自分達は何もしないのに、ただ適当に外から観戦して人の生死を娯楽として楽しんでいる。

 これだけは良くない。これだけは認めるつもりはない。


「ようこそお客様。初めてのご入店の方ですね」


 ふと声をかけられたので振り返ってみると、そこにはマスクを付けた誰かが居た。

 スーツで目元だけを隠すタイプのマスクを身に着けた男性。丁寧にお辞儀をするが、どこか違和感を感じる男性だ。


「あなたは?」

「初目にかかります。わたくしはこのカジノのオーナー、ディープと申します。ここではそちらの方が運営される表のカジノでは味わえないようなスリリングなゲームで歓迎いたします」

「ふ~ん。それで、ここではこのチップが使えるのか?」

「はい。賭けは表で使っているチップのみ使用可能となっております。この国の金であり、最も信用の出来る物ですから」


 クラルテの事を最初から知っていると言う事は変装の意味なくね?

 クラルテもそんな風に感じたのか、少し不満そうな表情を作っている。


「そうか。俺はこいつの父親なんだが、真正面からこのカジノを潰すことにした」

「それはどのような方法でしょう。見たところ頃このカジノを潰せるほどの財力や権力を有しているようには感じられませんが。それともこのカジノを買い取るおつもりですか?」

「こんな悪趣味な場所を買うつもりはねぇよ。でも商売を破綻させる方法は知識として知っている。このカジノが誰かだけを優遇してる、そう感じさせることさえできればいいだろ?あとは単に勝ちまくってこのカジノの売上全て分捕る」

「それは面白い。つまりゲームで勝ち続けるという事ですね。ありとあらゆるイカサマは通じませんよ。何せ相手は獣と自然とできた毒物ですから」


 オーナーは笑みを隠さずにニタニタと笑う。

 そして俺はこう言っておく。


「後それからこれは俺からの頼みなんだが、オーナー自らこのギャンブル場を案内してくれないか?そこでゲームをしよう」

「承知いたしました。ではまずは軽くあちらからいかがでしょう」


 そう言ってオーナー自ら案内してくれたのはたこ焼きのような丸い食べ物が並んだゲーム場。

 すでに周りにはこのたこ焼きのようなものを食べて悶絶したり、苦しんでいるプレイヤーと、それを見て楽しむ観客がいる。


「まずはこちら、毒物除けゲームです。このボール状の食べ物の中に即死するほどの強力な食べ物が隠されております。それを避け、どれぐらい食べられるのか当てるゲームです」

「数は全部でいくつだ」

「全部で50個あります。その中で20個のハズレがあります。そのハズレの中には弱い毒もありますから、死ななければ大丈夫ですよ」

「そうか。それじゃいただこう」


 そう言って俺はステージの上に上がった。

 そのことにオーナーは非常に驚き、観客も俺の登場に驚いた。


「まさかあなた自ら挑戦されるおつもりですか?本当に死んでもこちらで責任は負いませんよ」

「別にいい。皿もってこい」

「お父様!!」


 クレールが心配して叫ぶが、俺は笑って手を振って答える。


「クレール。俺に30個食べられるに全チップをかけろ」


 このゲームは本当に楽勝だ。

 だから俺はクレールに食べる前に伝えておく。このゲームはチャレンジャーと言われるプレイヤーがいくつ食べられるのか先にかけるゲームだ。あとからいくつ食べられるかかけられたらそりゃ不公平だよな。

 だがその前に俺はオーナーに言う。


「皿を2つくれ」

「え、ええはい。もってこい」


 他の従業員に伝えて俺は早速たこ焼きもどきを食べ始めた。

 当たりの中身は特に何もなく、ただの丸いパンを食べている感じだ。むしろモサモサして辺りを30個食べる方が辛い。

 そう思いながら俺は順調に当たりだけを食べていく。

 観客は俺がいくつ食べられるのか少ない数で掛けた人はすでに予想を外したと残念がっている。


「飲み物くれ」


 そう言うとお高い感じのシャンパンが渡された。

 酒はさらに喉が渇くからあまり好きじゃないんだけどな……仕方ない。

 シャンパンとボールを順調に食べ続け、17個を食べ終えたときに周囲は奇妙な空気に包まれた。

 ハズレを全く引かないことに対しておかしいと思っているんだろう。

 だが残念。これの攻略法は知っている。


 このパンの中に入っているハズレのほとんどは即死系の猛毒。たとえ見た目に変化がなくとも、甘い匂いがほんのりとしたり、少し舐めると刺激的な味がする。

 おそらく毒と言っているのは麻薬の類だな。まったく摂取していない大麻などを一気に大量に摂取すれば死ぬよな。

 でもこれはまだ中ぐらいの脅威。もっとヤバいのは多分普通に暗殺とかで使う毒物も入ってるな。最も弱いのはただの激辛スパイスっぽい。

 俺はたまに当たるハズレを別な皿に避けて食べ続ける。

 そして30個目を無事に食べ終えた。


「ごちそうさまでした」


 そう言った後、観客から大歓声が起こった。

 どうでもいい奴からの歓声なんぞどうでもいい。

 俺はクレールに確認する。


「クレール。今ので何倍になった」

「30個ハズレなしで倍率は1万倍……」

「良し。チップをもらったら次のゲームに案内頼む」


 オーナーにそう言うと、オーナーは少し呆然とした後、ハッとしてから案内を再開する。


「い、今のは簡単すぎたでしょうか?ではお次はこちらはどうでしょう。運だけでは勝てませんよ」


 1万倍に一気に増えたチップをもそうに運ぶ従業員を引き連れ、次のゲームはタコかイカがいるゲームの奴。


「ルールは」

「あの土管の中に入り、金のデビルフィッシュを連れてきてください。これは力のある冒険者でも失敗するほどの難易度ですよ」

「クレール、全チップをかけろ。もちろんそこの1万倍のチップもだ」

「お、お父様?」


 俺は迷いなく土管の中に入り、金のタコを探す。

 捜索中に現れた巨大なタコ、クラーケンの雄と出くわしたが、特に何もない。お互いにスルーして先を進む。

 そして1番底のタコ壺の中にクラーケンの雌と金のタコを発見した。

 金のタコとはクラーケンの子供の事だ。生後1日以内のクラーケンの子供は金色に光り輝く。おそらくこれがお目当ての物だろう。

 もちろん子供を連れ去るなんて親クラーケンが許す訳がない。俺の事を触手で叩き潰そうとするが、俺は口笛で止めた。


「一緒に来てくれ」


 口笛の後に言うと親は警戒しながらじっとこちらを見る。

 少し探してクラーケンの子供の中でも特に小さくて未熟児と思われる子を発見し、とある特別な牛乳を与える。

 それを飲んだクラーケンの子供はさらに輝きを増す。しかしそれは目に痛くない、優しい光だ。

 強く発光したのは健康の証拠。さらに元気に動くようになったので親も何となくうれしそうにしているように見える


 俺はそのクラーケンの子供を1匹だけ抱えて、親と一緒に土管から出た。

 もちろん親の登場に観客は悲鳴を上げながら逃げて行ったが、俺はオーナーに向かって言う。


「これで俺の勝ちだな」


 呆然とするオーナーに対して俺は特に何もしない。

 ただ子供を親に帰し、親がそっとタコ壺に帰っていくのを見届けた。

 そしてさらに10万倍に膨れ上がったチップ。どうやら危険なゲームほど倍率は高くなるらしい。


「オーナー。一気に勝負をつけよう。あれが1番難しいじゃないか?」


 俺が指を差した先にいるのは闘牛場。

 あ、また牛にひかれて人が死んだ。

 俺の猛攻に震えていたオーナーは歯ぎしりをしながら言う。


「い、良いでしょう。さすがにあの猛牛に勝てるはずがない!!先ほどの液体も謎ですが、小細工でどうにかなる相手ではありません!!」


 と言う訳で他の冒険者たちと一緒にステージに入ろうとする前にクレールに声をかけられた。


「お父様!少し聞いていただきたいことがあります!!」

「どうした?心配なら無用だぞ」

「このゲーム限定で全員が生き残ったら1000万倍だそうです!!」

「よし。やる。みなさんも俺が前に出ますので暴れたりしないで信じてください」


 怯える冒険者達は疑心暗鬼のようだが、他に縋りつくものもないからか素直にうなずいた。

 そして現れる5メートの巨大な牛。アルカディアにいるDランクの牛、砲弾牛だ。

 その巨体からは想像もつかないほどに突進する速度はすさまじく、ひかれたら確実に死んでしまう。


 と言ってもアルカディアではこれもただのデカいだけの牛。

 扱いは慣れている。


 オーナーも本気を出してきたのか、5メートル以上の巨大な砲弾牛を用意してきたが走り出す前に俺は仕込みを終わらせた。

 それは口笛。対象の動物が好む音を口笛で出し、リラックスさせて興奮させないようにする。

 このゲームに参加する前に30分という時間が設定されていたが、おそらく30分砲弾牛から逃げ切ったら勝ち、というゲームだったんだろう。

 だが俺が落ち着かせてそのまま眠らせてしまったのでもうゲームにならない。観客がヤジを飛ばしたり、大声を出して砲弾牛を暴れさせようとするが、失敗に終わる。

 30分後、借金で出場されたり、観客が連れてきた奴隷達にもチップが支払われた。

 まぁ借金の人達に関してはすべて借金の返済に充てられるんだろうけど。


 呆然としているオーナーの前で俺は普段通りの表情で言う。


「勝ったぞ。チップをよこせ」

「………………はい」


 完全敗北という表情だ。

 うなだれて膝から崩れ落ちるというものを初めて見た。

 さっきから全部をかけたばっかりだったのでどれだけの稼ぎになったのか分からないが、とりあえずこれ全部違法品と変えるか。


「オーナー。このチップをすべて使って景品に変えてくれ」

「す、全てですか?」

「少しでもチップが戻ってくるのと、景品が減るの、どっちがいい?」

「………………ありがとうございます」


 こうして順調に裏カジノに打撃を与えることが出来たのだった。

 さて、どれぐらいでこのカジノ潰せるぐらい稼げるかな?

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