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裏カジノに乗り込みます

 クラルテの発言にあまり深く受け取っていない俺達家族。

 好き勝手にお茶とお茶菓子を食べながら緊張感なく普通に聞く。


「何で俺らが手伝わないといけないんだよ。どうせクラルテなら簡単に潰せるだろ?」

「出来るならとっくにやってる。と言うかメチャクチャくつろいでない?一応ここ僕の部屋なんだけど」

「まぁいいじゃん。あ、このお茶淹れていい?」

「いいけど……それ王族用のお茶っ葉……」


 開けてみるとかなり良い匂いがする。

 この匂いを損なわないためには……60度ぐらいがちょうどいいかな?


「ルージュ、60度ぐらいのお湯沸かして」

「は~い」


 ルージュならその辺の微調整も簡単にできるから本当に助かる。

 全員分のお茶を淹れ直した所でクラルテは言う。


「はぁ。まぁいいや、そのままお茶飲みながら聞いて。違法カジノは借金まみれになった冒険者と1部の金持ちから運営されてる。ゲーム内容は借金まみれの冒険者が命がけのゲームに参加させられて、どれぐらい生き残れるのかっていうゲームもあるぐらい。つまり冒険者達は命をかけさせられていると言っていいんだ。僕はこのやり方が気に入らないし、この国のイメージもダウンするから早急に潰したい所なんだけど、どの作戦も失敗。潰す事は成功してもまたどこかでちゃっかり運営しているから、いたちごっこの繰り返しになってるんだよ」

「お前がそんなに苦戦してるなんて本当に珍しいな。具体的にどんな連中が賭け事に参加してるんだ?」

「悪名高い性悪貴族とか、裏社会の大物とか、そんなところ。裏の景品は違法な物も多いからそれがこの国から広まった、何て噂になったらかなりヤバいからね」


 ため息をつきながら疲れたように言うが俺達は普通の反応。

 普通の反応ではないのはライトさんと若葉、アオイだけ。

 この温度差が妙な感じがするが、そんな深刻な事だろうか?


「なんかヤバい事ある?」

「十分ヤバいと思うのは私だけ?若葉もライトさんもヤバいって思うよね??」

「私もヤバいと思うよ。裏社会の大物とか本当にいるんだって思うし、本当にドラマとか映画に出てくるような人がこの国にいるなんて……」

「さらに危険なのは裏取引されている景品です。具体的にどのような物が景品になっているのですか」

「分かりやすい物だと大麻みたいな禁止薬物です。他には禁止されている動物や魔物の取引、もっと分かりやすいのはその子に居るヴェルトの姉貴の枝です」


 ヴェルトの枝?なんでヴェルトの枝が禁止されてるんだ?


「ヴェルトの枝って危険物に指定されてんの?」

「危険物ではなく、指定持ち出し禁止物に指定されています。これはグリーンシェルから正式に禁止されており、許可なく持ち出した場合は大罪人として極刑を言い渡されてもおかしくありません」

「極刑!?」


 まさかヴェルトの枝1つで極刑とはどんだけ厳しんだよ。

 確かにヴェルト、正確に言うと世界樹はグリーンシェルの象徴であり神として祀られている。神様として祀られている木の枝を勝手に盗んで持ち出したとなれば確かに大罪なのかも知れないが、そこまでするか?

 俺はヴェルトに聞く。


「お前の枝ってなんかヤバいの?」

「……ん~?」

「指定されている理由はその効果が凄まじいからです。枝は魔法使いの力10倍にするとまで言われています、そしてその葉は煎じて飲めばありとあらゆる病が治るとまで言われています。それ故に世界樹を狙う物が現れてもいいようにこのような法を敷いたと聞いております」


 確かにヴェルトの葉には薬効があるが、あれちゃんとした製法で作らないと薬にはならないぞ。

 この世界にそれ程の製法技術があるとは思えないし、多分劣化版だな。

 アルカディアだったら失敗扱いされる薬だろう。


「誇張が凄すぎないか?この世界にそれ程の製法技術を持った奴いるの?」

「恐らく作っていたのはヴァルゴ達ではないでしょうか?ある程度劣化は免れませんが、それなりの効果が残っているものは作れるかと」


 クレールがそう言ったが、多分そうだろう。

 薬を作る技術はヴァルゴならあり得る。必要な道具に関しては自分で作ったか、ある程度妥協してなんかこう、上手い事いったのだろう。


「でも万能薬からは程遠いし、どんな病も治るってのは大袈裟だと思うけどな」

「それは確かに。精々大怪我辺りでしょう」


 クレールも冷静にそう言う。

 そんな様子を見たクラルテがため息をつきながら言う。


「その程度の薬でもこの世界ではかなりの効果だから。とにかく、そんな感じで違法取引がされてるから潰して欲しいの」

「そんなに厄介なんだな~」

「親父……のん気すぎ。一応相手は裏社会のヤバい連中ばっかりだからな?」

「そのヤバい連中が居る所に行って潰して来いって言ってる息子が何言ってやがる。それにギャンブルの腕が必要なら俺居なくても大丈夫じゃね?」

「……親父以外に誰が止められるんだよ」


 それは……確かに。

 いざという時に誰かがブラン達を止める事ができる人物は必要だ。

 そしてそれは俺以外ありえない。


「そうなると俺はまたお客さんで終わりそうだな」

「そうでもないよ。むしろ今回の賭けは親父が1番勝ち越しそうだ」

「何でだ?」

「借金を抱えた冒険者が参加してるって言っただろ?そして命懸け。その理由は毒物が混じった食べ物を避けて食べたり、危険な魔物が居るステージの中に放り込まれる。武器や防具は一切なし、ただ魔物達から逃げ回るだけ。ある程度準備をすれば親父が参加して直接潰す事ができるかも知れない。僕はそう思ってるよ」


 魔物に囲まれたり、毒物が含まれていないものを狙って食べる、ね。本当に博打じみた事ばっかりやっているんだな。

 そして魔物や毒物に関する知識なら確かに俺以上に持っている相手はいないだろう。

 でも見ず知らずの魔物に会って生き残る可能性は低いんじゃないか?

 俺の場合は自分で育てた子供達だし、襲われないのも当然。それを前提にするのはどうかと思う。


「本当に俺にそんな事できるのか?」

「僕が知っている限りは出来る。ランクも持ち込めるようにDランク程度の魔物しか出てこないから大丈夫だよ」

「へぇ~へぇ~。断らせる気はないんだな。それじゃいっその事やってみるか」


 俺がそう言うとブラン達が一斉に止めにかかる。


「何言ってるのパパ!?毒なら私自分で解毒できるから大丈夫だよ!!」

「……危ない」

「危険な魔物なら私が倒せるから!!」

「とりあえずその会場は海に沈めますからお父様は何もしなくても大丈夫ですわ」

「父さんは普通の人間なんだからそう言うのに参加しちゃダメだって!」


 ブラン、ヴェルト、ルージュ、クレール、ノワールの5人がそう言うが俺としては子供を危険にさらす方が嫌なんですけど。

 俺は5人を制止しながら言う。


「今回は俺みたいなのじゃないとダメだって。それ以前に子供が危ない目に遭わせる訳にはいかないだろ」

「だが自分から危険に飛び込むような事もしなくていいだろ」

「ちょ~っと遊んで来るだけだよ。あとそれからライトさんに若葉とアオイは待機な。そんな危険な所に教皇様と従業員を連れて行く訳にはいかないから。普通にこのカジノで遊んで待ってて」

「いえ、そんな訳には――」

「護衛にノワールとクレールを連れていく」

「え!?ブランは!!」

「今回ブランはなし。そんな危険な所に子供が付いて行けるわけないだろ」

「ぶ~。2000年生きてるのに~」


 ブランは頬を膨らませているがこればっかりは仕方がない。

 ブランほどではないけどクレールもある程度回復系の魔法が使えたはずなので代わりに連れていく。

 ノワールは普通に雰囲気づくりのため。やっぱりこういう場所に相応しい雰囲気の場所の人はいると思うしね。


「あ、ノワール兄の代わりに僕が行く」

「クラルテ?お前行けないみたいな事言ってなかったか?」

「変装していくから大丈夫。それに道案内も必要だろうからね」

「あっそ。それじゃ道案内と護衛、あと逃げる時は力貸せよ」

「分かってる。それじゃ早速行こうか」

「早速って、すぐに行ける物なのか?」

「僕が居れば大丈夫。それじゃ行こ行こ」


 こうして俺とクレール、クラルテの3人で違法カジノに乗り込む事になったのだった。

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