勝負スタート!!
寝台列車に乗ってネグルに到着すると、そこは目が痛くなるほど輝いている場所だった。
ネオンの様な物が町中に存在し、チカチカと光っているので目が痛い。
駅から降りると、他の国とはまた違った夜の店が多く並んでいる。簡単に言うと高級キャバクラみたいな雰囲気の店とか、お高そうな料理屋、お高そうなバー、そして大小様々な宿泊施設。
特に宿泊施設が多いのが特徴的に感じる。流石にホテルは落ち着いた雰囲気があり、派手なネオンなどはなかった。
「パパ。ここは目がチカチカするね」
「もうちょっとだけ我慢してくれ。もうすぐ予約してたホテルに着くから」
俺はブランの手を引きながら言う。
確かにこの様子だと子供が安心して遊べる場所はなさそうだ。
それに……貧富の差とは違うだろうけど、ギャンブルで勝った負けたの差がはっきりとしている。
ここは大通りだからか様々な光が混じって目が痛いが、少し道から外れるとホームレスみたいな恰好をしたみすぼらしい人達がいる。
多分あの人達はギャンブルで大負けしたのだろう。
鋭い眼光で誰かから金目の物を盗もうとしているのがよく分かる。もしくはすでに死んでいる様な目で虚空を見つめている誰かも居た。
流石にこんな所にクラルテはいないだろうと思い始めながらも今日宿泊するホテルに泊まった。
俺達が泊まったホテルは最も普通のホテルでビジネスホテルの様な感じ。と言ってもこの世界の普通の建築物なので5階までしかないけどね。
それにホテルの値段というのはカジノに近ければ近いほど値段とグレードが上がっていく。
このネグルの中心の存在している超巨大カジノ、グレートジャーニーというカジノがこの国で最も巨大なカジノらしい。
それなりに離れているこのホテルでもかなりの大きさに感じられるので近付いたらもっと巨大に感じるだろう。
とりあえずこの日は全員休み、明日から文字通り勝負をしよう。
――
「やってきました!!世界最大のカジノー!!」
「のー!」
「父さん。恥ずかしいからやめてくれ」
俺とブランでお約束のノリでやってみたらノワールが恥ずかしがった。
周りには他にもスーツやドレスを着た人達が居るから場違いに思ったんだろう。
と言うか場違いだと知りながらやった。こうでもしないと自分がここに居ていいと思えなくなるから。
「滑ったネタはとりあえず置いておいて。それじゃ予定通り軍資金は配ってあるからとりあえず勝ちまくろうか」
「普通こんな簡単に大金を出せないはずなんですけどね……」
「だよね~……金貨が1万円ぐらいって言うの知ってるんだけどね……数が凄いよね……」
俺がそれぞれ渡した金貨の数は1人100枚、つまり1人100万の軍資金を用意しておいた。
しかし俺とブラン、ライトさんは3人で行くので3人で100万円。他のみんなにはちゃんと100万円ずつ渡したのでその辺はちゃんとしている。
「それじゃ行こうか」
いつも通りにしていると自然と緊張も抜けてきたので長い入り口を俺達は進む。
こんなただの通路も金ぴかで下品に感じる。派手過ぎるのもダメだな。
床は真っ赤な絨毯でちょっとだけレッドカーペットっぽい。
そんな入り口は特に身体チェックはなく、あっさりと通れたのは正直意外だったが、中に入ると納得した。
カジノの中には武装した冒険者と思われる人達もおり、その人達は礼服を着ずに遊んでいるのでどうやら礼服を着なければならないという訳ではないらしい。
「へ~。冒険者も結構いるもんだな」
「ここで一攫千金を狙っている人も少なくないですからね。絶対に噂の裏VIPエリアにはたどり着けなさそうな人達ですけど」
若葉さん。それ結構毒突いてません?
流石に絶対って事はないでしょ。多分。
「さてと、それじゃそれぞれ分かれて好きに遊びますか。金をチップに変える場所はどこだ?」
「こちらですよお父様。みんなで交換してしまいましょう」
こうして全員金をチップに交換するとそれぞれ分かれた。
「とりあえず俺とライトさんとブランは一緒に居る訳だが……なんで若葉とアオイも一緒に居るの?」
「だって不安じゃないですか。私は本当にクラスメイトと遊びでポーカーをやったり、七並べとかしたぐらいですよ。いきなりは怖いです」
「私もそんな感じですね~。一応日本のパチスロは1回だけやった事ありますけど、それ以外はダーツぐらいしかやった事がありませんね」
「ダーツもギャンブルになるのか?」
「友達同士でお酒を飲みながらやってたぐらいですよ。ここまで本格的なカジノは初めてです」
「私も賭け事は遊びでもした事がありませんので、どれから遊べばいいのでしょう?」
何て言う若葉にアオイ、そしてライトさんがあちこちを見ながら不安そうにしている。
まぁ俺もゲームのミニゲームぐらいでしかやった事がないので不安なのは変わらない。でもいくつか初心者向けと思えるゲームはあったのでそれをやればいいんじゃないだろうか?
とりあえず対人系、カードゲーム系は避けておく方がいいよな?そうなると機械系?でもパチンコとかは流石に……
「パパ。ブランあれやりたい」
そう言って俺のズボンのすそを引っ張ってから指差したのはルーレットだ。
ルーレットなら転がる玉がどこに落ちるのかを予想するだけだ。
これなら初心者向けだろうと思いながら頷いてみんなを促す。
「ブランがルーレットやりたいって。まだ決まってないならルーレットにしないか?」
俺がそう言うとみんな頷いてルーレットの台に向かう。
初心者向けの台と書かれている所に向かい、他にもお客さんが居たので俺とブランでルーレットの席に座っる。
ディーラーと思われる人も、他の席に座る紳士淑女も子供を連れて現れた事に意外そうにしていた。
俺が座った席の上にブランが座ると、初心者用の台という事もあったからか意外とあっさり笑顔に変えた。
「いらっしゃいませ。娘さんと一緒に挑戦ですか?」
「はい。初めて来たのでルールの説明などをお願いできますか」
「承知しました。では簡単にルールをご説明させていただきます」
教えてもらったのは本当に簡単なルールだけ。
まずディーラーがホイールと言われる赤と黒のルーレットを回す。その後ボールを転がしてどこにボールが入るのか予想し合う。
簡単に言うとこんな感じだ。
あとはどこにチップを置くと何倍になるのか、みたいな事を教えてもらって終わった。
一通り説明を聞いてからディーラーがベルを鳴らした。ディーラーがホイールを回してプレイヤーに言う。
「それではみなさん。ボールがどこに入るのか予想してください」
ディーラーの言葉を聞いて他のプレイヤーも考え始める。
俺は特に考える事もなく、ブランの考えに任せる事にした。
「ブランはどこに入ると思う?」
「…………17番」
ブランは随分と真剣な表情で数字を予想した。
当たる確率として1つの番号を言った。17番は黒だったので俺は黒に賭ける。俺が賭けたのは黒色の場所にボールが落ちると予想した。
ブランの場合は当たれば36倍、俺の場合は当たる確率が非常に高いので2倍だ。
流石に初心者向けだからか、ほとんどの人が赤か黒にチップを置く。数字の部分に賭けたのはブランだけだ。
ディーラーが全員賭けた事を確認してから綺麗な手さばきでボールを投げ、ベルを2回鳴らしてベットを締め切った。
他のプレイヤー達は自分が選んだ色にボールが入る事を祈ったり、ハラハラと見つめている。
しかしブランだけはただボールをじっと見て、結果を待っている。
そしてボールが入ったのは、黒の17番だった。
「おお!ブラン凄いな!!いきなり決めるなんて!!」
俺が驚いてそう言うと、ブランは落ち着いた様子で息を長く、細く、吐き出してから真剣な表情を見せる。
「ルールは分かった。それじゃ、大勝ちしようか」




