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この世界の普通

 女の子達にはちゃんと家を建てて水道、電気、ガスとかの使い方を教えながら部屋の機能などについて教えていく。

 今回用意したのは小さなマンションタイプの家で、5階建ての4LDK。トイレは2つ、風呂は普通の一般向けの浴槽。1人で暮らすための部屋、というよりはルームシェアを前提とした感じの家である。

 何故今回この家を建てたかというと、単に幼い女の子達が圧倒的に多いからだ。

 もっとも年上なのはアオイで大学生だが、それ以外の女の子達で1番年齢が上なのが12歳、そしてほとんどの女の子は年齢一桁なので1人暮らしするのは難しいのでルームシェア、という形で大きめの家にみんなで暮らす事を選んだのだ。


 本当は1人1部屋使えるぐらい広くしたのだが、まだ1人で寝るのは怖いという女の子も居るのでいつの間にか2人で1つの部屋で寝ていたりする。

 最初こそ1人1つの部屋に喜んでいる女の子達の方が圧倒的に多かったが、その日の夜には寂しくなって、そして慣れない環境になったので結局みんなで雑魚寝したとアオイが話していた。

 でもそれは寝る時だけで昼間などは普通に自分の部屋で本を読んだりしているらしい。


 あとやっぱりこの世界の人達は蛇口をひねるだけで水が使えたり、ガスと電気が使える事に非常に驚く。

 元の世界とこの世界の差と言う物を強く感じる。

 まぁ日本が先進国であるって所も理由なんだろうけどさ、それでもやっぱり今まで普通に使っていた物が驚かれるって事が俺にとって驚きなんだよ。水道水は飲めて当然。暗くなったら電気をつける。飯を作る時はガスを使う。それが普通じゃない状況の方が想像し辛い。

 イメージできるのはテレビなどで災害に遭った際のニュースぐらい。大変だな~っと思いながらも自分自身がそう言った環境に突然なるとは思えない。


「なので一般常識を改めて教えてください」

「そうおっしゃられましても……どこからどう話せば……」


 ブランと一緒にやってきたライトさんは困りながら言う。

 そんなライトさんの周りにはポラリスのみなさんも一般人代表として改めてこの世界の常識を聞こうとしている。

 でもやっぱり白夜教の教皇と言う世界でもトップクラスの人が近くにいるのは緊張するらしい。特にディースさんはずっと落ち着かなさそうにソワソワしている。


「この間カーディナルフレイムの人から女の子達を預かった事は話しましたよね?」

「はい、ブラン様からも聞きました。そしてホワイトフェザーへの移住も視野に入れていると聞いてますのでその辺りのお話もしました」

「その子達に対してなんですが、やっぱりアルカディアの生活と元の生活のギャップが激し過ぎるみたいでゆっくりできている感じがしないんですよ。なのでこの際改めて一般常識などについて確認しておこうと思いまして、ご協力していただけないでしょうか?」

「それについては協力を惜しみません。ドラクゥル様にはその辺りの事を確認していただきたかったので」


 最後にぼそっとライトさんがそう言った。

 やっぱりこの世界の常識と違うせいか迷惑をかけていたのかも知れない。

 ライトさんは咳払いをした後、俺に聞く。


「それでは、まずドラクゥル様はどのような事が分かりませんか」


 まるで学校の先生のような雰囲気を出しながら言うので、何だか少し懐かしい感じがする。

 俺は少し考えてから手を上げながら聞く。


「この世界の一般家庭における生活水準ってどんな感じですか?」

「そうですね。まず水道、電気、ガスは存在しません。これぐらいは……分かりますよね?」

「まぁ子供達の反応とかで大体は。でも普通は薪でご飯作ったり、水瓶に水を溜めておくって言うのはマジですか」

「マジです。普通は薪を使ってスープを作るのが一般的です。もちろん貴族などになれば魔道具、このアルカディアでいう所のコンロの様な物はありますが、一般の方が手にする事が出来るほど安価ではありません。燃料も炎系の魔石を手に入れないといけませんし、定期的に購入するとなると一般家庭では非常に難しいでしょう」


 魔石。

 このアルカディアでは存在しないアイテム。入手方法は様々で、炎系の魔物の体内から発見されたり、鉱山のように岩などに混じって現れる事もある。


 1番安定しているのは魔石の鉱脈から魔石を掘り出す事であり、そこから不純物を取り除いて販売される。

 鉱山から発見された魔石の利点は属性が固定されていない事。

 属性の固定とはモンスター達の属性のように火、水、風、土などの属性を固定する事で魔石を素材として使う事が出来るらしい。

 魔石を火の属性にすればさっきライトさんが言った様にコンロのように使ったり、水の属性にすれば水道のように使える。

 デメリットは出力が弱い事と、消費が激しい事。これに関しては研究とかしているわけではないので詳しい理由は分からない。


 そして魔物の体内から手に入る魔石のメリットは高い出力を安定して使い続ける事が出来る。火の魔物から火の魔石を手に入れたり、水の魔物から水の魔石を手に入れることが出来る。

 デメリットは必ず入手できるという保証がない事と、魔石のサイズなどが安定していない事。

 魔物の体内から手に入る魔石は必ずこのサイズになっているという事はなく、同じ魔物であっても魔石の大きさは様々だ。砂粒ぐらいの小さい物から、握り拳ぐらいの大きさの物まで本当にバラバラだ。なので安定した魔石を供給するという点から非常に難しい。

 それに大きめの魔石を狙うとなるとその分体の大きな魔物を倒す必要がある。フレイムサウルスを倒すだけでもこの世界の人達は大変なのだからそれ以上に強い魔物、カーディナルフレイムで言うとドラゴンレベルを倒せるぐらいじゃないと大きめの魔石なんて手に入らない。


「聞いてはいますけど、そんなに入手困難な物なんですか?」

「非常に困難です。鉱脈から取れた魔石ならある程度安価ですが、一般家庭の方が定期購入するには非常に難しいかと。それに魔物から採取する際には運も必要ですから」

「運?」

「この辺りは冒険者の方々に直接話していただいた方が詳しいと思います」


 ライトさんがそうポラリスの皆さんに話を振ったのでポラリスの皆さんは慌てふためく。特にディースさんのうろたえっぷりは凄い。

 唯一いつもの落ち着いた感じでいたメルトちゃんが話す。


「魔物から必ず魔石が手に入るという保証はない。魔石のない魔物もいる」

「へぇ。魔石って魔物から必ず採れるわけじゃないんですね」

「うん。だからゴブリンを倒したとしても10匹の内2匹ぐらい魔石が取れなかったりする」

「取れない確率は意外と低いんですね」

「少し違う。ゴブリンはいっぱい居るからそんな感じ。強くて数の少ない魔物、ドラゴンだともっと低い。せっかくドラゴンを倒したのに魔石がなかったって話はたまに聞く」

「ドラゴン倒せる人いるんですか?」

「たぶん嘘。大昔の話を誇張してる」


 ドラゴンは最低でもCランクスタートとなっている。その理由は空を飛べるから。

 この世界では空を飛ぶ生物に攻撃を当てるのはものすごく難しい事とされている。魔法があるんだから簡単に当たるんじゃないの?と俺も思っていたが、魔法は基本的に直線にしか飛ばないし、ホーミング機能が付いた魔法は聞いたことがない。

 それに速度は銃弾より遅い事の方が多いし、ブランが使う光の魔法の劣化版みたいな魔法も見たことあるが、速度が変わらない代わりに体の表面を少し焦がすぐらいの威力しかない。

 それに普通に射撃センスみたいなものも求められるらしい。なので魔法=万能と言う訳ではないらしい。


「それじゃレアな魔物を倒しても必ず手に入る訳じゃないんですね」

「うん。ランクとかは関係ない。だから運。ゴブリンでもたまに少し大きめの魔石が取れることもある」

「ところで魔石を狙う理由は?」

「1番買い取り額が安定してる。魔石の価値はほぼ一定、だから安定した報酬が欲しいときは大抵魔石を狙う」


 なるほど。いろんなところで需要があるんだな。

 安定した収入は魅力的だよな。

 色々この世界の常識について聞くが……結局アルカディアの設備は普通じゃないってことだけは分かったな。

 色々と文化とか、常識が違うせいだろう。俺はこの生活が当然だから何とも思わないけど、突然訳の分からない環境になれば戸惑うよな。

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― 新着の感想 ―
[一言] ライトさん的には アビスブルーの文明力はアルカディアと同じ特殊枠で 存在しない扱いなんだな あそこなら水道ありそうなんだけど無かったことにしちゃったよ
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