次はギャンブルの国
さて、ルージュは無事家に帰ってくることになり、カーディナルフレイムの問題も片付けたのでそろそろ次、つまりクラルテを探しに行きたいのだが……どこにいるのかさっぱり分からない。
ルージュに聞いても分からない。いろんな人に聞いても分からない。
あの最も自由気ままな次男がどこに行ったのかさっぱり見当すらつかない。
「どこ行ったんだろうな……あいつ」
アルカディアの草原で寝っ転がりながら俺はあいつの性格を思い出し、どこら辺に居そうか想像してみる。
まずあいつは風の属性のSSSランクモンスターなので気持ちのいい風が吹く山か草原である可能性が高い。
次にありえそうなのは娯楽施設が充実している場所。スポーツ系ではなくカードとかルーレットとかギャンブル系。
あとは……誰も知らない絶景のある場所?たま~にあいつ急に旅行といって遠出するからな。これは参考にならないけど。
とにかくあいつは自由気ままで気分屋、あいつの考えていることを当てるほうが難しい。
しかし娯楽施設と簡単に言ってもこの世界は魔物という存在がいて娯楽が十分に発展しているとは言えない。
もちろんテレビゲームなんてない。ボードゲームと言ったらチェス、カードゲームと言ったらトランプという具合に娯楽は非常に少ない。
そうなるとやっぱりどっか風の気持ちいいところにいるか、どっかの秘境にいるのかもしれない。
…………やっべマジで面倒くさい。
クラルテの奴、普段は思いっきりインドア派のくせに急に外に出て旅に出ますって言うんだから行動が読めない。さらにノワールとかクレールと頭脳系ゲームを挑んだり、突然ルージュをからかって撃ち落されたりと本当に何がしたいのかさっぱり分からない。
とりあえず風が気持ちいいところか、娯楽施設が整っている国がないか調べてみよう。
――
「なくはありませんよ、娯楽施設が集中している国は」
晩飯中みんなに聞いてみるとクレールがそう答えた。
「え、マジで?クレール以外に遊園地とか作れる技術力ある国あるの?」
「娯楽施設をすべて遊園地などと考えている時点でお父様は少しずれています。その国は主にギャンブルを中心とした国です」
「ギャンブル?アメリカのラスベガス的な?」
「見方を考えればそのような感じですね。アビスブルーは高級ではありますが家族連れで楽しむことを前提としているので畑違いという奴です。運営初期はギャンブルも考えてはいましたが、それで破産してはまた次来てもらうことが出来ないので止めておきました」
「破産って……マンガとかでしか聞いたことないんだけど。え、何。それじゃその国だとギャンブルで破産している人いっぱいいるの?」
「色々聞きます。もともと少ないお金で一発逆転を狙ってきて結局負けたとか、ギャンブルにはまりすぎて中毒になったとか、借金とギャンブルの自転車操業を繰り返している方がいるとか。私の国のお客様も何度か潰されましたわ」
なんというか、そんなマンガでしか聞いたことがないギャンブルに負けて落ちぶれていく国が存在するだなんて思わなかった。
でも確かにクラルテが好きそうな国でもある。
あいつギャンブル好きだからな……
「穏やかじゃないな。それじゃその国も大雑把にはクレールの所と同じように観光業がメイン収入か?」
「一応そういうことになります。ですがこちらはお客様を楽しませた対価としてお金を支払っていただいているのです。あのようなゲスな笑みを浮かべる連中と一緒にしてほしくはありませんわ」
「ごめんごめん。ただ広い意味で観光業といっただけだよ」
クレールをなだめながら言ってから考える。
確かにクレールの観光業とその国の観光業はかなり違う。
遊園地を穏やかな時間を過ごせる場所と例えるのであれば、ギャンブルは刺激を楽しむための場所だと俺は思う。
勝つか負けるか、そのハラハラ感などで楽しませて負けたら負けたで仕方ないだろうという。もちろん挑戦していく人達は勝つ気でいるんだろうが、勝ちまくって調子に乗ったところで一気にドボンとなればそれで人生終了だ。
正直本当に人生がかかるほどの大金をかけているのかどうかは怪しいが、とにかくクレールの遊園地などの営業とは全く違うことは分かった。
「とにかく、確かにそこならクラルテがいるかもしれないな」
「遊び人だもんね」
「ダメ男だから」
「クズですから」
「……ダメダメ」
「楽することしか脳にないからな」
……ブラン、ルージュ、クレール、ヴェルト、ノワール全員に言われてしまったクラルテ君。みんなからの評価低いよね、本当に。
「で、その国の名前は何て言うんだ?」
「ギャンブル大国、ネグル」
ネグルね。
それじゃ次の目的地はそこだ。
俺は我が家で1番自由奔放なSSSランクモンスター、クラルテがいるかもしれないのでその国に向かうことにした。




