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大掃除終了!!

 卵があった場所に関してはヴェスヴィオが守っていた卵以外はすべて冷えてただの石になった。

 これを見て素人はマグマスラッグの卵だったとは思わないだろう。全ていびつな丸い岩のようになっており、これをまた温めたからと言って復活することはない。


 さて、目的は果たしたわけだがまだヴォスヴィオだけ残っている。

 こちらに向かって攻撃してくることはないが、今も必死に卵を守りながらこちらを警戒している。

 ノワールの威嚇で戦意を失っているとはいえ卵を守る意思は消えていない。なので2匹は卵だけは絶対に守り抜こうと卵からくっついて離れない。


「…………」

「パパ?何か変なこと考えてない?」


 別に変なことは考えていないが、考えていた事を言う。


「このままヴェスヴィオを放っておくのも後々問題になりそうだからさ、アルカディアに連れて帰っちゃダメ?」


 俺がそういうとみんななんとなく分かっていたというような表情をした。


「あれ?俺そんなに分かりやすい表情してた?」

「表情というよりは言うと思ってたって感じ。でもどうやって連れて帰るの?ものすごく警戒されているけど」


 確かに警戒されているがやりようがないわけではない。

 俺はヴェスヴィオの下のほうにアルカディア行きの穴をあけてからヴェルトに言う。


「ヴェルト、あいつら卵ごと落として」

「……ん」


 そう言われたヴェルトはヴェスヴィオがくっついていた天井の岩ごと落とした。

 もちろん飛ぶ力なんて全くないヴェスヴィオ。落ちた先は一応アルカディアの火山エリアだが今あそこには特にモンスターはいないのでそのうち勝手に住み心地のいいところにたどり着くだろう。


「よし。それじゃみんなの手伝いに行こう。どこに行こうか?」

「分かれたほうがいいと思う。私は冒険者達のところに行こう」

「なら私は騎士団のほうに行きましょう。数が少ないほうが精神的に助かります」

「……ドラゴン達の所」

「それじゃブランはルージュお姉ちゃんのところに行くよ。パパはどうする?」

「なら俺もルージュのところに行く」


 ノワールが冒険者達のところへ、ヴェルトがドラゴン達のところへ、クレールが騎士団のところへ、ブランはルージュのところへ行くことがあっさりと決まった。

 あまりにもあっさりと決まってしまったので俺はルージュのところにする。

 1人で戦っている娘が1番心配だ。他の人達には悪いけど。


「あまり心配しなくてもいいと思うけど……ヴェスヴィオの事も言っておかないといけないし、ちょうどいいかもね」

「ではここから移動するとしよう。君達は先に戻れ」

「よろしいのでしょうか?」

「構わない。君達は十分仕事を果たした。休むと良い」

「ありがとうございます」


 奴隷の子供たちはパートナーを連れて帰っていった。

 本当に自分たちだけ先に帰っていいのかという表情をしていたがこれ以上は危険かもしれない。

 クレール達の加護があるとはいえ本来であればこの辺りは普通の人間には立ち入ることのできない場所なのだから少しでも安全なところに早く移動してほしいという気持ちがあった。

 それにパートナーのモンスターたちは全員腹いっぱいになっているのでこれ以上食べるために戦うことはしないだろう。

 なのでちょうどいいタイミングだった。


 子供たちが先に帰ったのを確認してから俺達もそれぞれみんなのサポートのために向かった。


 ――


「なんて言って来たけど……終わってるな」

「さすがルージュお姉ちゃん。1番多いのに周りへの被害なしで全滅させたよ」


 俺とブランがルージュの所に着いた時にはすでにマグマスラッグ達は全滅していた。

 ルージュは派手で広範囲の攻撃は一切していないようで、周りの気温は普段より少し高いぐらい。ルージュやクレールの加護がなくても問題なく行動することが出来る。

 そしてルージュは疲れた様子もなく、水筒に入っている紅茶を飲んでいた。


「お父ちゃんにブラン。こっちはちゃんと仕事を終わらせたよ」


 どれだけの軍勢だったのか分からないが、ルージュはなんてことない様に言うので本当に大したことがなかったのではないかと勘違いしてしまう。

 それに倒したはずのマグマスラッグの死骸がない。あれ乾燥させると良い肥料になるんだよな。だから一応冒険者達には持って帰ったらボーナス弾むと言ってある。

 でもその死骸が1つもない。なんでだ?


「ルージュ。マグマスラッグの死体は?」

「…………」

「……またやりすぎちゃった?」


 ブランが首を可愛くこてんとかしげると、ルージュは視線をそらした後、俺に顔を見せないように抱き着きながらボソッと言った。


「……ごめんなさい」

「まぁ良いよ。絶対ってわけじゃないし、冒険者の人達のところにノワールも行ったからある程度は手に入るだろ。ならみんな無事に帰ってくるのを待とう。ブランは一応みんな帰って来た時にケガしてる人がいたら治してくれ」

「分かった」


 こうして3人でしばらく無駄話をして待っていると、最初に戻ってきたのは騎士団の人達だった。

 ただなんというか……最初とだいぶ違う。

 いや、誰かが大怪我してるとかそういうことはないんだが……彼らが即席の神輿みこしのような物を担いで行進しているのが気になった。

 神輿は兵士達が持っていた槍を数本利用して端にし、マントを集めて槍に巻き付け、盾を集めてマントの上に岩をくりぬいて作ったような椅子があり、クレールはその椅子に座っている。


 なんというか……男だったら漫画に出てくる暴君か、奴隷を扱き使うやばい奴に見えただろう。

 そしてクレールの場合はまさに女帝。屈強な男達を従わせている女帝のように見える。


 その姿を見た俺達は茫然となり、見られた騎士団は汗をだらだら流している。

 彼らに何らかの事情があったのかどうか分からないが、見られて不味い状況なのは想像に難しくない。

 実際ルージュは不機嫌そうに身体から熱を発生させ始めた。

 それを見て面白がっているのはクレールのみであり、他の俺達はこれからどんなことが起こるのか不安しかない。


「クレール・ドラクゥル。その者達は私の兵、何をしている」

「あら、彼らが苦戦しているところに出くわしたから助けた礼をこうしてもらっているの。疲れたから私の事をこうして運んでと頼んだだけよ」


 くすくすと笑いながら言うクレールは上品だがどこか闇があるような、裏があるような笑い方をするから余計に悪役っぽくなってる。


「ならすぐにそこから降りなさい。あなたたちも何をしているのです。降ろせ」

「サー!!」


 騎士団たちは慌てながらもそっとクレールの事を降ろしてくれた。

 降ろされたクレールは優雅に「ありがとう」とだけ言ってこちらに帰ってきた。


「お前……無駄に場をかき乱すようなことはするなよ」

「あら、あれはただのお願いよ。国家間の問題にするようなことにはしないわ」


 確かに俺達にとってはただのじゃれあいぐらいのものだが、お前らの場合規模が違うんだよ。規模が。

 あとはおとなしくしてくれていたクレールだが、ルージュはその場で騎士団に説教開始。本当にクレールはどうしてルージュの事をからかって楽しむんだろう。

 助かるのは本当に嫌がることはしない点だが、悪い言い方をするとそのギリギリを見極めているとも言えるのでやっぱり腹黒い感じがする。

 娘のこんなことを言ってはいけないんだろうが、やっぱり知能派だ。ノワールとはまた違った意味で。


 そう思っている間にヴェルトとドラゴン達も帰って来たのだが……


「何してるのヴェルト?」


 ドラゴンの子供に乗せてもらいながら帰ってきた。

 子供は嫌がっている様子はないが、ヴェルトの事を落とさないようにそっと歩いてくれている。


「ありがとうな」

「うん。お姉ちゃん寝ちゃった」


 そっと話すドラゴンの子供からヴェルトを受け取り先にアルカディアに帰しておいた。

 一応この姿は分身なんだけどな……本体は今どうなってるんだろ?


 さらに待つと冒険者達が袋を担いだり、両手で持ってマグマスラッグの死骸を持ってきてくれた。おそらく時間がかかったのはマグマスラッグの死骸を集めていたからだろう。

 マグマスラッグは死ぬと体重の半分以上の水分が自然と排出されるので意外と運べる。

 といっても欲張ってそれなりの数を一気に持っていこうとしている新人君が、よたよたと歩いているのはちょっとほほえましい。

 それとどういう訳かベテラン冒険者とアレスさん達が落ち込み、女性達がノワールの周りに集まっている。

 ノワールは俺に会おうと向かうが女性陣がそれをブロック。ノワールは戸惑いながらも無理やり通ることはせず、1人1人対応しているのでなかなか進めない。

 どうなっているんだろうと思っていると落ち込んだアレスさんと、落ち込んだアレスさんを励ますライナさんが俺達にたどり着いた。


「ご依頼のマグマスラッグです。これはいったい何に使うんですか?」

「干して乾燥させて、細かくすると畑のいい肥料になるんですよ。ちょっとグリーンシェルにお土産感覚で持っていこうかと思って」

「マグマスラッグにそんな用途があったとは知りませんでした。畑の肥料になるんですね」

「餌が火山地帯の栄養満点の岩石やらなんやらだからですから。といっても火山地帯から遠い場所じゃ持ってくるのも時間がかかるし、知らない人のほうが圧倒的に多いだろうから仕方ないでしょうね。そしてアレスさんは何でこんな風になっているんです?」


 正確にいうとアレスさんとベテラン冒険者達。やけにノワールに嫉妬深い視線を送っている。

 まぁ周りの女性達や女の子たちに囲まれているからうらやましいというのは仕方ないと思うが、それにしてはずいぶんと強い気がする。

 分からない事は知っている人に聞くのが1番だ。

 そう思って聞くとライナさんは恥ずかしそうに言う。


「その……ノワールさんが途中で参加してくれたおかげで残りのマグマスラッグも順調に倒すことが出来たのですが、その時我々は皆疲労困憊で、ノワールさんが来てくれて本当に助かりました。ですが……その時に女性達がノワールさんにその、好意を抱いてしまったらしくて……」

「あ~……ピンチの時に駆けつけてくれた王子様って感じですか」

「そんな感じです。ですのでそれ以前に頑張って女性達にアピールしていたアレスやほかの冒険者たちにとっていいとこどりされたように感じてしまったようで……」


 あ~うん。イケメンには勝てねぇよ。

 女性囲まれて困っているノワールに対して、アレスさん達は悔しそうに表情をゆがませるのだった。


「それでは皆様、お疲れさまでした。報酬はドラクゥル様からいただいてください」


 冒険者たちに向かってルージュが言うと、俺は早速冒険者たちに持ってきてくれたマグマスラッグの数だけ金を払って終わった。

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