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トレーニングルームで特訓中

 ルージュと戦わざる負えなくなってしまったので現在トレーニング室で俺のトレーニングをしている。

 と言ってもまぁ本格的に相手を倒そうとするとかではなく、日ごろの運動不足を解消するような感じでトレーニング器具の上で走ったり、自転車をこぐやつをやったり、サウナに入って汗を流したりしていた。


「パパ。それトレーニングって言わない。ただの運動」

「その通りです」


 首にかけていたタオルで汗を拭き、スポーツドリンクを飲んでいるとブランに突っ込み入れられた。

 そう答えるとブランは呆れながら俺に言う。


「パパ。パパにとってはルージュお姉ちゃんも子供だからって甘く見てるのかもしれないけど、そんなんじゃルージュお姉ちゃんの攻撃に一撃も耐えられないよ。もっと戦闘ってところを意識してトレーニングしないとダメだよ」

「大丈夫だ。耐えられるように防御系のトレーニングもしてるから大丈夫だって」


 実際このトレーニング室の器具はすべて最高ランクまで引き上げている。前に暇だから、金が有り余っているからという理由で初球の危惧から中級の器具まで10個ずつ全て揃っている。

 そんな最高ランクの1つを俺がずっと使っているので他の子たちにちょっと迷惑していないだろうかと思ってしまうほどだ。

 独り占めダメ。

 ちなみに体力を上げる器具はルームランナーで、防御力を上げる奴は巨大なボクシンググローブを受け止めるというトレーニングだ。


「それだけじゃダメに決まってるでしょ。戦うんだから体力と防御力だけじゃなくて、色々他にも――」

「これでいいんだよ。これで」


 ブランは他の器具のことを言おうとしたが俺は止めた。

 俺には1つの考えがある。ルージュと戦えという内容ではあるが、どのように勝つかはもうすでに決めている。


「これでって……まさか……」

「3分間生き残る。方法はこれしかない」

「まさか、本気でルージュお姉ちゃんの攻撃を全部受け止める気なの!?」


 ブランはそう絶叫した。

 俺には正直これしか勝てる方法はないと思っている。

 どこかの森の中だったら逃げ回って勝つ方法もできたかもしれないが、戦う場所は闘技場で遮蔽物は一切ない。3分間走り回ってもそのうち体力が切れて攻撃を一発食らえば簡単に負けだ。

 それにルージュにはおそらく広範囲攻撃がある。戦いとなると非常に冷静なルージュのことだ、ある程度攻撃力が下がったとしても必ず攻撃が当たるやり方を見つけているに違いない。


 ではどうやって勝つかと言われれば耐えるしかない。

 耐えて耐えて耐えて耐えて耐えて、3分間守り切る事でしか勝てない。

 その時はその時で強力な攻撃をしてくるだろうが、それでも耐えきれるように限界まで体力と防御力を上げるしかない。


 といっても本当に耐えきることが出来るのかどうか分からないけど。

 元々このトレーニング器具は子供達、モンスター向けの器具なのだ。モンスターどころかただの人間でプレイヤーである俺がこれらを使って鍛えたからと言って本当に効果があるとは限らない。

 それどころかまったくの無駄で終わる可能性のほうが高い。

 だからせめて効果がありそうな体力と防御力系でトレーニングしていたのである。


 まぁみんなには言ってないけどもう1つの理由のほうが俺にとって重要なのだが。


「そうだよ。他にいい方法思いつかなかったし」

SSSランク(私達)の中で1番攻撃力の高いルージュお姉ちゃんの攻撃を耐えるだなんて……現実的なんて言えないよ」

「だからってルージュと殴り合うなんてさらに現実的じゃないだろ。それならまだ頑張って耐えるほうが現実的だ」

「でも逃げ回るとか……」

「闘技場でやるから逃げ回る場所なんてない。隠れる場所もないし、3分間走り回る体力なんてないよ。だから消去法でも耐えるしかないってわけ」


 そういうとブランは考えながら言う。


「それでも……ルージュお姉ちゃんの攻撃を受け続けるなんてもっと現実的じゃないよ。ルージュお姉ちゃんが私達の中で1番強いの知ってるでしょ」

「それでもだ。頑張って耐えれば帰ってきてくれるのなら、頑張るだけだよ」


 俺がそういうとブランは心配そうに言う。


「それなら余計に私達の加護を使えば……」

「ルージュがそういうの嫌がるのは知ってるだろ。俺とルージュが真正面から向かい合うことが1番今回のことに必要なんだと思う。だから俺の事を心配してくれるのは嬉しいが、今回は加護を受けて耐えちゃいけないんだよ」


 諭すようにブランに言うとブランはあきらめたようにため息をついた。


「死にそうになったら試合なんて無視して助けに行くからね」

「ああ、それは頼む。ズタボロになるのは目に見えてるからな」


 試合後の治療をブランに任せて俺は少しでルージュの攻撃に耐えられるように頑張るのだった。


 ――


「それじゃよろしくお願いします」

「いや……よろしくお願いしますと言われても……ものすごくやり辛いんですけど」

「俺もだ……」

「……メルトも」


 トレーニング室だけで強くなれているのかどうか分からないので実戦で通用するのかどうか確かめたくて若葉、アレスさん、メルトちゃんに俺の事を一方的にボコれと頼んだ。

 子供達でもよかったのだが、戦闘という面でもはいきなりすぎではないかと思ったのでこの3人に頼んだのだ。

 ちなみになぜこの3人なのかというと、若葉は連撃が得意なのでその防御、アレスさんは重たい一撃を耐えられるか、メルトちゃんには炎の魔法を使って俺の事を燃やしてもらう予定。


「いや、でもこれぐらいできないとルージュの攻撃は耐えきれないだろうし……子供達だと遠慮して全然痛くないし……おチビ達だとただじゃれてくるだけだし……」


 ちゃんと戦ってくれる人はいないっというよりは色々と戦ってくれないのと戦いが分からない子供達しかいないのだ。

 だからある程度手を抜きながらちゃんと攻撃してくれそうな人はこの3人だけなのである。


「それは分からなくもありませんが……でも従業員に社長を武器使って一方的に攻撃し続けろって……私だって断ったじゃないですか」

「ほかに頼める相手がまったくいないんだよ。頼むって」

「俺達も今居候みたいな感じでやりたくないんだが……」

「ご飯も毎日もらってる」

「耐えきる自信はあるから、今回だけだから頼む!」


 拝むように頼むと3人はしぶしぶ承諾してくれた。

 俺は全身に力を入れて、顔を守れるように腕で顔を隠すように守る。顔以外は素人丸出しのとにかく全身に力を込めて守るという舐めプと思われても仕方がない事だが、その辺は本当に素人なので許してほしい。


 そんな感じで始まった実践訓練。

 まず若葉の連続攻撃は想像以上にキツい。正面からふとした瞬間に消えたかと思うと背中、脇腹、足などいつの間にか木刀が当たっているという状態。でも力加減はしているので少し痛いぐらいで済んでいる。

 でも相手が突然いなくなる恐怖というのは非常に大きいことが分かった。これは精神的に来るな……焦ったりすると余計に体力を消耗すると聞いているし、これはこれで非常に難しい。


 次にアレスさんの攻撃を受けてみるが、これはこれでキツいな……

 若葉のように突然消えたりすることはないが、やはり攻撃力が高いと精神にも響いてくる。単に殴られる恐怖、相手が武器を振り上げることを見るたびに内心ビビり続ける。

 殴られれば当然体に痣ができるし、じわじわと痛みが広がっていく感覚もまるで自分が死に向かって行っている感覚のように感じてしまう。

 確実にダメージを負っているのは確かだと教えてくれる。


 最後にメルトちゃんに攻撃魔法を使ってもらったが……意外とこっちは我慢できたな。

 炎の魔法限定ではあったがなぜか火傷などにはならず、ただ熱いのに耐える感じだった。

 これだけならどうにかなりそうな気がするが……魔法の手加減ってどうなんだ?爆発する魔法で小規模の爆発にするとか?

 ………………まぁ炎の熱さに慣れておく必要はあるだろう。ルージュの炎がこんなもんじゃないのは予想できているからな。


「3人ともありがとう。大体予想できた」

「本当ですか?」

「少しは参考になればいいんだが……」

「無茶しない」


 3人に言われてしまったが、やっぱり本気で殴ってくれる相手がいないとちゃんとした特訓にはならなそうだ。

 もうちょっと誰かいないか探してみないとな。

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