表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/211

カーディナルフレイムに着いたので休む

「ようこそ、ここがカーディナルフレイムよ」


 ジュラの案内で無事にカーディナルフレイムに到着すると、そこは初めて見る建築物でいっぱいだった。

 初めて見る建築物と言うのは完全に岩を掘って作った様な家ばかりだからだ。つなぎ目のような所は一切なく、おそらく元々岩の壁だったところをくりぬいたのではないかと予想する。

 活気のある町はドワーフ達がとても多く、冒険者の格好をした人たちが非常に多い。血の気が多いのか、遠くから喧嘩の声の様な物も聞こえるが思っていたよりも元気だ。

 ジュラの話によれば外からの情報はなく、孤立した状態だと予想していたのだが随分とたくましい。普通に店は開いているし、あのダンジョンを突破する必要がなければ孤立した状態だなんて分からなかったかも知れない。


「それじゃ私はフレイムサウルスの事をギルドに伝えてくるから。それからここは私のいる店、余裕があったら是非来てね」


 名刺の様な物を俺とアレスさん、ライナさんに渡し、投げキスをしてからジュラはカーディナルフレイムの奥に行った。

 本当に投げキスとかする人っているだ~、なんてズレた感想を持ちながらアレスさん達に振り返ると2人は顔を赤くしていた。確かに色っぽい人ではあるけど、そんなに耐性がない事にも驚く。

 そんな様子のアレスさんとライナさんに冷たい視線を向けるディースさんとメルトちゃん。俺はつい苦笑いをしていると名刺を見た若葉が俺に聞く。


「何の名刺をもらったんですか?」

「多分……どっかの店の名刺だな」


 前にキャバクラに行ったと自慢してきた先輩が見せてくれた名刺に似ている気がする。確か上司の飲み会に連れて行ってもらった時にもらったとかなんとか。

 ちなみに俺はそういう店に行った事がない。普通の飲み会、どこかの居酒屋に行って新年会とか忘年会だっと言う時には一緒に居酒屋で酒を飲んで友好を深めたが、流石にキャバクラに連れて行ってもらった事はない。

 普通に高いと思うし、元々俺はそういった店にあまり興味がないと言っていた事も原因だろう。

 どこかの綺麗な女性にお酌してもらうよりも1人で好きに飲む酒の方が好みだったからな。

 あと普通に金もマンガとかゲームとかに使いたかったし。


「あの人どこかの店で働いてるって事ですか?」

「え~っと、多分女性が男性にお酌してくれる系のお店の名刺だと思う」


 女の子に向かってキャバクラとか言うのはセクハラとかにならないか不安だったので、適当に誤魔化しながら言う。

 若葉は俺の言葉を聞いて少し考えた後、「あ~」っと何か納得した感じで言う。


「つまりエッチなお店ですか?」

「エッチ……とは限らないんじゃないか?まぁお酌してもらいに行くのにそういう下心が全くないとは言い切れないけど」


 素直に認めておく。

 そりゃ俺だってまだまだ若いんだからエロい事には興味ありますよ。でも金払ってまでエロい雰囲気を感じたり、綺麗な女性にお酌してもらいたいかと聞かれるとそこまでではない。

 経験がないからそういう事が言えるんだ、と言われたらそれまでだが実際経験していないのにそれがいい物なのかどうかなんて分からない。


「とりあえず今日は入国してあとはアルカディアでゆっくりしましょう。ダンジョンの中よりはマシとはいえ、熱いですし」


 こうして俺達は正式にカーディナルフレイムに入国した。

 ダンジョン内限定だと仮入国扱いだそうで、ダンジョンを超えた場所で正式に入国したという扱いになる。

 まぁ何にせよ、無事に入国できたので俺達はアルカディアで休息をとる。熱すぎるダンジョンを突破したのでグダグダする。かき氷とかアイスとか食べるに決まっている。

 ついでに雰囲気を楽しむために海岸にビーチパラソルとプラスチック製のイスを使って優雅に食べる。


「あ~。天国だわ~」

「アイス美味しいですね……あ、バニラお代わりしてもいいですか?」


 俺はかき氷のイチゴシロップ、若葉はバニラアイスをお代わりしながらさっきまでの熱さとは違う暑さで心を落ち着かせていた。

 冷房の効いた部屋に引きこもるのもそれはそれでいいが、どうせビーチが目の前にあるのだから夏っぽい雰囲気を楽しみながら食べる。


「こんな簡単に氷菓子が食べれるなんて、やっぱりドラクゥルさんは規格外ですね」

「ん。この緑の氷菓子は何味?」


 ディースさんとメルトちゃんもすぐ近くのパラソルの影でアイスを食べている。

 この世界でアイス、より正確に言うとかき氷は非常に高価な物と言う立ち位置にあるらしい。アルカディアでは冷蔵庫があるので一年中氷を作って好きに使えるが、あの世界では雪山に行ってわざわざ氷を取りに行かないと手に入らないという。

 魔法と言う便利な物があるのだからそれで氷を作れば?と思ったのだが魔法で作った氷は美味しくないらしい。なので魔法で氷を作れたとしても精々氷枕にするとか、火傷した部分を冷やすために使うとかそんな感じでしか使えないらしい。


 あくまでもこれは個人的なイメージだがおそらく大気中の異物、埃とか塵とかそういった物をまとめて氷にしてしまっているのが原因なのではないかと思っている。いや、本当に何の根拠もないのだが本当にイメージ。ただ大雑把に大気中の水分を凍らせているのであればそう言った異物も巻き込んでいるのではないかと想像した。

 そして後は単純に山の水の方が美味しいのではないかという想像。なんとなくそこら辺の川の水を凍らせたものと、自然と山で凍った氷と聞くと後者の方が美味しそうな気がする。

 どこかの湧水が美味しいと言っている様に水その物のおいしさも関係しているのではないだろうか。


 まぁ俺はそんな事関係なくアルカディア(ここ)でアイスとか食べるんだけどね。

 かき氷のシロップはイチゴ、メロン、ブルーハワイ、レモンの4種類。アイスだとバニラ、イチゴ、抹茶を筆頭に、ラムレーズンなどが開発中。

 ちなみにこのアイス開発にはクレールも協力してくれており、上手く安くて美味い物が出来ればアビスブルーで販売する予定だとか。

 大人向けにブランデー風味なども開発したいと言っていたので酒吞も協力させられているのだろう。


「それにしても、アレスさんとライナさんは本当に部屋で良かったんですかね?ちょっと意外です」


 俺がそうディースさんに向かって言うと、アイスを舐めながらディースさんは冷めた声で言う。


「あの2人、おそらく今夜抜け出しますよ」

「抜け出す?何でです」

「あのジュラと言う人からもらった名刺のお店に行く気満々なんですよ。別に行くなとは言いませんが、パーティー内のお金は使わないように一応念を押していた方がいいと思っています」


 ああ、早速お店に行く気満々なのね。


「2人とも元気ですね。フレイムサウルスに追い掛け回されて疲れてるはずですのに」

「アレスの場合は疲れてるからこそ行くって言いますけどね。全く、そんな事にばっかりお金を使うんですから」

「ライナはたまにしか行かない。男の人は色々疲れると溜まるらしい」

「それもアレスはよく言いますね。ドラクゥルさんはその辺りどうなんですか?」


 そこで俺に振ってくるのかよ。

 正直答えたくはないが……3人の目線は何故か俺に興味津々だ。

 ついでにアイスの入ったクーラーボックスを持っている下級天使達も興味ありそうにちらちらとこちらを見ている。

 おい下級天使達、いつからそんな表情豊かになった。お前らまだ感情が希薄なはずだよな?


「別に……特に変な事はしてませんよ」

「でも経験はありますよね?」

「ありません。童貞ですから」


 俺がしれっと言うと若葉は少し顔を赤くし、ディースさんとメルトちゃんは意外そうな表情をする。


「そうなんですか?そういうお店に行ったりしないんですか?」

「行った事ありませんよ。そういうお店に1人行くのも何となく気恥しいですし、女性とそういう事をするのに金を払うのもバカバカしいですし」

「でもアレスたち溜まるってよく言ってる」

「男性にも個人差はあります」

純情ピュア……な理由があるとか?」

「特にない。元々俺は異性に対していまだに恋とかした事ないから」


 ディースさん、メルトちゃん、若葉の質問に答えると本当に意外そうな表情をする。

 俺そんなに経験豊富に見える?俺そんなチャラく見えるか?

 まぁ最後にそれっぽい理由を言っておけばいいだろ。


「それに俺には子供達が居るのでそういう店に行こうと思えるほど時間的な余裕もなかったんですよ。最近はみんな大人になって楽が出来てますけど、ノワールとかが子供の頃は本当にずっと様子を見てないといかなかったんですから。そんな店に行く余裕はありません」

「でも今はある」

「興味ありません。特別運命だ何だってロマンチックな事を言うつもりはありませんが、そういうのは縁があった時でいいんですよ。大事に取っておく必要はないけど、だからって自分から動くつもりはありません」


 ぶっちゃけ面倒臭いし、そのために金払うのもバカバカしい。これが本音。

 そう思って言うと本当に珍しい物を見た様にディースさんとメルトちゃんは言う。


「本当にそういったお店にご興味がないんですね。そういう店に行かないのは敬虔な信者ぐらいですよ」

「ん。早い男の子は14でそういう店に行く」

「え、それマジ。そういう店に行くのに年齢制限とかないの」

「ない。お金の問題」


 マジか……14と言ったら中坊だろ。その年でそういう店に行くとは……異世界は肉食系だな。

 そして若葉は恥ずかしそうに顔を赤くしているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ