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マグマスラッグの交尾

月曜日更新できなくてすみません。

 最初に来た場所に戻り、そこからさらに先に進み道を下っていく。

 緩やかな坂になっているこの道は意外な程に整備されているような印象を受ける。そしてマグマから感じる熱もどんどん強くなり、アイテムの消費も大きくなる。


「これ額に付けてください。もしくは首とか、血管の多い所に張ると効果的です」

「これは?」

「冷却シートです。ドクターに頼んで作ってもらいました」


 よく薬局で売っている熱が出た時に頭に張るあの冷却シートをドクター達に頼んでおいた。

 高温の場所を進むのなら、もしかしたらこう言うのも役に立つかもしれないと思って頼んでみたら本当に作れてしまった。

 と言ってもまだまだ試作品で効果は1時間しかもたない。これからどんどん改良を加えて8時間はもつようにしたいとドクターが言っていた。

 アレスさん達は使い方がよく分からない様だったので俺が実際につける所を見せて使い方を見せると、アレスさん達は1度大きく肩を震わせてから言う。


「冷た!」

「これは……確かにこの場には合うかも知れませんが……」

「冷たすぎない?」

「ビックリした」


 ポラリスのみなさんはまだ慣れないご様子。

 しかし若葉は元の世界で使っていたからか自然な感じで額につける。

 そしてため息をつきながら俺に言う。


「ドラクゥルさん。そろそろ自重しないといけないんじゃないですか?冷え〇タまで作っちゃって、この世界の水準大きく超しちゃってる気がしますよ」

「別に販売までしなければ大丈夫じゃないか?そこまでの事考えてなかったし」

「そういう物ですかね?」


 若葉は首を傾げているが俺は別に販売目的のために作っている訳ではない。必要だから作ってもらったと言う方が正しい。

 それにぶっちゃけ野菜を売っているだけでも十分な金額で売れているから商売を広げる必要がない。さらに言うとどれだけ規模が大きかろうとも自給自足が出来ているから食糧を買うという定期的な消費もないし、ガス、水道、電気もゲームのご都合主義で全く消費がない。

 つまりめっちゃ金溜まってる。この間なんて遠回しにクウォンさんから何か買ってくれないかと言われたぐらいだ。

 おそらくギルドの金貨のほとんどが俺が持っている状態なのだろう。マンガで見たが金と言うのは溜めているだけではいけないので、使って世の中に金を回さないといけないそうだ。


 でもまさかね。

 俺1人で経済が滞るとは思えないし、深く考え過ぎだろう。この間アビスブルーで旅行した訳だし。俺1人が金貯めてる事なんて何の問題でもない。


 そんな無駄な事を考えながら道をどんどん下りていくと、さらに熱量が上がってくる。

 火鼠の毛を使った服を着ているのにこれ程の熱を感じるのは明らかに異常だ。マグマの熱だけではなく、何か原因があると予想する事が出来る。


「この熱……異常じゃね」

「ですね。さっきまで火鼠のおかげであまり熱くなかったのに、今は皮膚が火傷するほどの熱量です」

「これ……やっぱり引き返した方がいいんじゃありませんか?」

「……はぁ……はぁ……はぁ……」


 アレクさん達はまだ少し大丈夫そうだが、メルトちゃんは明らかに熱によって体調を崩している。顔はこの暑さの中なのに真っ青になりそうになっている。

 他のみなさんも身体中真っ赤になっているし、この熱さではこの中にいるだけで火傷を起こす。


「ドラクゥルさん。これ、みんな危ないですよ」

「そうだな。みなさん、一度アルカディアに戻って体調を整えてからもう一度ここに来ましょう。もっといい耐熱装備があるので、せめてそちらに着替えないとこれ以上進むのは危険です」

「そう……だな」


 若葉からの言葉に俺はアルカディアに避難することを提案した。アレスさんも無理だと思ったのか、短く答えてからアルカディアに戻る。

 アルカディアは張るぐらいの気温なのでさっきと比べるとものすごく涼しく感じる。

 とりあえず表情の悪いメルトちゃんにスポーツドリンクを飲ませながら体を少しずつ冷やしていく。確か急に冷やすと心臓に悪いとかなんとか。

 なので少し自然と冷えてから氷などで冷やすとしよう。

 という事でおけに水を張ってその中に足を入れる。ちゃんとイスとパラソルも用意したのでメルトちゃんは少しずつ顔色が良くなっていく。


「…………ごめん。足引っ張った」

「謝る事ないですよ。こればっかりは見通しが甘かったとしか言いようがありませんから」


 俺がそう言うと他のみなさんも頷く。

 メルトちゃんはほっとした表情をした後に静かに眠りについた。

 メルトちゃんが眠って回復する間に俺達は再びダンジョンに戻る準備をする。


「いや、簡単に言うけどどうするんだよあの熱さ。あの先に行くなんて死にに行くようなもんだぞ」

「ですのでこのアルカディア内にある素材や子供達の力を使って装備を整えます。あの熱の原因に関しては予想出来ていますから」

「マグマスラッグがあの奥に集まっているから、ですよね」

「そうです。恐らく相当な数のマグマスラッグ達が集まっている事によりあの異常な熱を発生しているんだと思います。なのでこちらはそれを超える耐熱装備を使いましょう」


 という事で用意した装備アイテムがこちら。

 まずクレールが創る事が出来る『海の宝玉』、これは身に着けた対象の一定範囲内の気温を一定にすると言う物。本当は水中を呼吸せずに移動できるとか、泳ぐ速度が異常なほどに跳ね上がるとか、水の魔法をMP消費なしで好きなだけ使えるとか、そんな機能が付いている。

 次に完全に火鼠の衣だけで作った耐熱の服。

 武器に関しても今ある武器に耐熱の効果を付与するアイテムを使って整備した。これによりマグマスラッグを攻撃しても溶ける事はない。ちなみにメルトちゃんの杖に関しては燃えなくなるという効果にしておいた。


「これが今できる装備です。クレールのお守りに関しては数が少ないので不安でしたが揃えられてよかったです。他の装備に関しては元からある物ですが耐熱に関しては十分でしょう。ただ物理的な防御力はそこまで高くはないのでそこだけは十分に気を付けてください」

「…………ドラクゥルさん、やっぱりやり過ぎですよ……」


 何故か若葉がそんな事を呟いた。

 何でだろうと思ったが、面倒なので深く聞かずに昼飯を食ってから先を進む事にした。

 ちなみに昼は冷やし中華の酸っぱい奴。夏、早過ぎました。


 そんな感じでより装備を強化した後に再びダンジョンに戻るとさっきまでとは大違いだ。

 クレールのお守りのおかげで全然熱くないし、呼吸だって楽。さっきまでは息を吸うだけでも痛みを感じたというのにまるで今は感じない。


「メルトちゃん。大丈夫?」

「大丈夫」


 俺の質問に対して本当に大丈夫そうに答える。これなら大丈夫そうだと思いながら先に進む。

 装備を整えてから道は順調だ。どうやらこの熱のせいで他の魔物達は近寄れない様で魔物は一切出て来ない。

 あくまでもこれは予想だが、もしかしたらこれはマグマスラッグ達なりの生存戦略なのかも知れない。

 マグマスラッグ達がこうして一点に集まり、強い熱を放出する事によって安全に交尾を行っているのかも。

 でもこれは……かなりの数が集まっているだろな。女性陣は大丈夫だろうか?

 そう思いながらこのダンジョンの中盤最後の階層でかなりえげつない光景を目にした。


「これは……男でもキツイな」

「いやこれ、性別とか絶対関係ないですから。どんな動物でもここまでの数が揃えば何だって気持ち悪いですから」


 本来であればここはマグマだまりの中にボスモンスターがいるという話なのだが、それらしい魔物はおらず、この場を埋め尽くしているのはマグマスラッグばかり。

 しかもそれはこの鍋のようになっている底のほうだけではなく、壁も天井も全てマグマスラッグ達が埋め尽くしているのだから鳥肌が立つ。

 一部マグマスラッグの上位種であるヴェスヴィオが中心に居たが、あれがボスの魔物だったんだろうか?


「もしかしてあの中心にいるのがここのボスか?」

「いや、聞いていたボスはマグマの中を泳ぐ魚だって聞いてた。多分ナメクジにやられたんじゃないか」


 魚がナメクジの大群に負けた。これはそれでシュールな光景の様な気がする。

 とにかくこのナメクジ地獄を突破しないと先にはいけない。どうにかしていけないか考えてみたが、結局。


「マグマスラッグ達の上を行こう」


 これしかなかった。

 この大量のマグマスラッグ達に攻撃してこの場に入るマグマスラッグ達に集中攻撃されるのは避けたかったし、かと言ってこのマグマスラッグの群れをどうにかするほどの攻撃力はない。

 それじゃ隙間をぬって先に行こうと思ったが、隙間が全くない。

 なのでマグマスラッグ達の上を歩いて行くしかないのである。


「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち――」


 流石の若葉もこれには現実逃避を始めた。

 俺だってバカデカいナメクジの上を歩くだなんて嫌だよ。でも他にいい方法は見付からないし、何よりこの先に行く方法は他に思い付かない。

 もちろんディースさんもメルトちゃんも嫌がっている。

 でも男達全員仕方ないだろという事で、せめてもの妥協案として負ぶってマグマスラッグの上を歩く事になった。


「足、滑らせないようにな」

「これは……とても歩き辛いですね」

「かなり柔らかいので気を付けましょうね」


 こうして俺達で女性陣を運ぶ。

 そして俺達の頭の上ではマグマスラッグ達の交尾が真っ最中である。


 マグマスラッグの交尾はこれ程の数でなければ美しいと言える物だ。

 2匹のマグマスラッグの身体の中心辺りから夕陽色に光る生殖器を伸ばす、2つの生殖器が絡み合って精子だけを交換し、相手から受け取った精子を取り込んで自身の持つ卵子で受精させる。

 え?何で精子も卵子も持ってるかだって?だってナメクジって雌雄一体だぞ。1匹で雄でもあり、雌でもあるのだ。

 だから1度繁殖すると爆発的に増えるし、両方とも卵を産むからさらに増える。

 これがナメクジ系の外来種が恐れられる理由だ。1度の交尾で何万もの卵を産む訳だからそりゃ駆除が追い付く訳がない。


 でも交尾の瞬間だけは優しい光がステンドグラスの様に見えるので綺麗だと俺は思う。

 これほどの数かいなければの話だけど。

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