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肉もやっぱり美味かった

 次の日、収穫祭と感謝祭がごっちゃになった祭りは大賑わいだ。

 朝からすでに酒を飲んでいる男達、お面を身に付けている子供、屋台で店を出している人などなど、随分な賑わいだ。

 俺も子供の頃に夏祭りぐらいは言った事はあるが、町全体でのお祭り騒ぎと言うのは初めてだ。

 俺はそんな光景を楽しみながら大聖堂にお参りをしに行く。教会でもお参りって言葉でいいのか?


 大聖堂は予想通り大混雑。この国の神様の感謝祭でもある訳だから当然と言えば当然なんだろうが……これ関係者用の出入り口とかないかな?ないと入れそうにないんだけど……


「ドラクゥルさん。一緒に来ていただけますか」


 ふと名前を呼ばれたので振り返って見ると、大聖堂の前で門番をしていた人が居た。


「あなたは門番の人。どうかしました?」

「ライト様があなたをお呼びなのです。同行していただけますか」

「喜んで」


 あの長蛇の列に並ばないだけでもラッキーだ。

 俺は門番の人に案内されて関係者用の出入り口と思われる場所から大聖堂に入った。

 ここは大聖堂の裏側らしく、教会関係者たちが忙しそうにしている。具体的に何をしているのかまでは分からないが、おそらく3日後の最終日に向けて何らかの準備をしているんだろう。

 あ、何かキャンプファイアーの準備みたいなのしてる。送り火?みたいな事でもするのか?それともアマゾンの部族的な感じ?

 なんて思っているとライトさんと随分と若い人達が居る。多分中学生ぐらいかな?


「ドラクゥルさん、本日はありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそ忙しい時に人をお借りして申し訳ありません。彼らが手伝ってくれる方々ですか?」

「はい。彼らはみな見習いであり、ドラクゥルさんの行動でより信仰に力を注いでもらえるよう導いて欲しいのです」

「いや、俺そんなたいした事してないんですけど……宗教に関してもよく分かりませんし」

「構いませんよ。ドラクゥルさんの行動は既にこの教会の教義に当てはまる行いですから」


 んん?教義に当てはまる行いってどういう事だ?俺まだ全部読んでないから教義とかよく知らないんだよな……

 そう思っていると見習いくんと見習いちゃん達が微動だにせず待っているのでとりあえず話しかける事にした。


「えっと、とりあえず俺がドラクゥルだ。今回は手伝いよろしくお願いします」

「「「よろしくお願いします、ドラクゥル様」」」

「……様?」


 なんだか子供っぽくない返しと俺の事を様付けで呼んだ事に困惑する。

 ついライトさんを見るとライトさんは申し訳なさそうに言う。


「すみません。実は私それなりに地位の高くて、私の知人だと伝えたら畏まってしまったのです」

「あ~なるほど。ちなみに地位が高いと言うと大司祭とか?」

「そのような物です」


 その言葉にそんな訳ないじゃんっと言う雰囲気を感じた気がするが……まさか枢機卿クラス?

 聞いて答えてくれるかどうか分からないが……とりあえずは明後日のことか。俺は手伝ってくれるみんなに言う。


「それじゃまず、色々家で試作してきたから食べてみて。その上でいろいろ意見聞きたいから」


 そう言ってパックに入れておいた串焼きの試作品を取り出した。

 ちなみにこの串焼きに関してはただの塩コショウで味を調えただけの物であり、大した工夫はしていない。本気でやろうとするのであればタレを作ったり色々あるんだろうが……俺にそこまでの調理技術はない。家でもぶっちゃけ切って焼くしかしないし。

 あ、でも面倒でたまに親子丼とかカツ丼とか作ったりはするか。あれは調理技術的に煮るでいいんだろうか?カツ丼だったからカツを揚げるという項目があるけど。


「これがドラクゥルさんがお出しする串ですか」

「肉は以前教えた家で余っている肉です。品質は高品質なのですが、俺以外食べていないので価値とか不明なんですよね」

「はぁ。購入したわけではなく、飼育している物でも価値は分かりやすいと思うのですが……」


 そう言われてもね、ゲームで育てるゲームだから木に肉が生ってるんだよね……

 あの光景はいまだに違和感がある。今どきの箱庭ゲームだって家畜枠として飼育されてるぞ。まぁ畑に直接肉が出来るよりはマシかもしれないけど。

 そう説明しながらライトさんと手伝いの子達が肉を一齧り。

 するとすぐに驚愕したように俺に迫る。


「ドラクゥルさん!!これ、どう考えても普通のお肉じゃありませんよ!!」

「え、あれ!?そんなに不味かったかな……確かに味は塩コショウでしか整えてなかったけど……」

「その真逆です!!おいしすぎるんです!!って皆さん無言で食べつくそうとしないでください!!」


 お手伝いのみなさんが無言でがつがつ食べてた。

 そ、そこまでか?


「本当にこれでいいんですか?個人的には手抜きにもほどがあると思うんですが……」

「むしろこれをさらに美味しくするなんて出来るんですか?それ以前に本当にこんなにおいしいお肉を無料で配布するって本気ですか?」

「今回だけですけどね。今後のこの肉を食べるとなれば購入していただくようにしたいとは思いますけど」

「…………これはもっと人を用意した方が良いかもしれません。絶対に混雑が出来ますよ。こうなったら……」

「こうなったら?」


 何やら不穏な気配を感じながら恐る恐る聞くと、ライトさんは真剣な表情で言う。


「もともと教会ではドラクゥルさんのように簡単な食事を無償で配っています。そのみなさんに協力してもらい、2日目までにそれらすべてを食べてもらい、3日目には全員で取り掛からないといけないかもしれません。皆さんには2日目までにどうにか消費してもらって……」

「え、ちょ!それはいくら何でもやり過ぎじゃありませんか!?」


 生産者的には水を上げたり色々してるけど、全クリした後の事だからかなり作業的だし、ゲーム機能を使って作業してるから肉体的に大変って事もないんだよな……

 あ、もちろんそのほかの野菜や魚関係も毎日手入れしてるぞ。1日でも作業忘れると最高品質でも採れる数が減ったりするからな。

 まぁそれを今でも続けているせいでこうして肉が山のように余っているわけだけど。


「いえ。それで絶対に足りません。もともと3日目はみなで大聖堂で祈りをささげる日ですので今日明日ほど騒ぎません。屋台などもないので他の人達にご迷惑をおかけすることはありませんが、それでもこの肉はとても大きな価値を出すでしょう。教会の者を総動員してあたるとしましょう」


 な、なんか大掛かりになってきた……

 野菜の時同様にこれは最高品質の肉を出すのはやめておこう。その代わり高品質である肉は惜しみださない方がいいな。

 それだけの規模を想定しているような気がするし。


「それ……どうすればいいんでしょうかね?」

「……ある程度制限をかけましょうか。1人2本までとすれば納得していただけるかと。おなかもそこまで膨れる事もないでしょうから」


 なるほど、1人何本と制限をかけておくのか。

 よく母ちゃんがしてたけど、また並びに来るって事はないよな?お1人様1パックの卵の時みたいに。

 その辺は……まぁ頑張ろうとしか言いようがないか。こっちは独占しないように頑張ってますよっていうアピールさえできればいいのだから。


「それじゃ来る人を想定して……肉何キロ必要ですかね?」


 出来るだ多く持ってきて欲しいと言う言葉を聞いて俺は倉庫で余っている肉を全開放することを決めたのだった。

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