表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/211

ポラリスのみなさんにお願いする

 超久しぶりにカイネの冒険者ギルドに足を運んだ俺。目的の人達はいるのかどうか、辺りを見渡しながら受付に向かうが見当たらない。


「あ、ドラクゥルさん。本日はどのようなご依頼でしょうか」


 依頼用の受付に行くと受付嬢がいつものように聞く。

 しばらくは冒険者ギルドに来ていなかったが、アルカディアで作った薬草などの違いを調べるために何度か依頼した事があるのでいつの間にか覚えられていたらしい。


「今日は名指しの依頼をしたいんだけど、出来る?」

「名指しですか?珍しいですね。いつものように薬草系のご依頼ではないみたいですね」

「ちょっと野暮用でカーディナルフレイムに行きたいんだけど、その護衛を頼みたいんだ。出来るかな?」


 俺が行先と目的を告げると受付嬢が笑顔のまま固まった。

 油の切れたロボットのようにぎこちない動きで首を傾けると確認する。


「カーディナルフレイムに行く、ですか?その護衛をおまかせしたいと」

「ああ。知り合いがそこにいるって聞いてね、行きたいんだけど大丈夫かな」

「ちなみにどのパーティーにご依頼するおつもりで?」

「いつものポラリス」

「え~、少々お待ちください」


 受付の人が少し席を外したので待っていると、受付嬢は戻ってくると説明してくれる。


「現在ポラリスのみなさんはとあるクエスト中で帰還予定が3日後となっております。それからこちらはあくまでもこちらからのお願いなのですが、カーディナルフレイムにポラリスのみなさんを連れて行くのはやめておいた方がいいと思います」

「あれ?確かカーディナルフレイムに行くにはCランク以上なら問題ないって聞いてたんだけど」

「そのお話は間違いありませんが、それはあくまでも浅い層、上層1階から地下3階までの間での話です。それ以上は非常に厳しい事が予想されておりますのでお勧めできません」

「…………どういう事?」


 詳しい話を受付嬢に聞くと、確かにカーディナルフレイムに行くにはCランク以上の冒険者が居ないといけないが、それはあくまでも必要最低ランクと言う意味らしい。

 カーディナルフレイムに行くためにはAランク相当の実力がないと安全に行けるとは言い難いとの事。

 ちなみにポラリスのパーティーランクはC、出入り可能ではあるが上層で安全に過ごすのが無難だそうだ。

 ついでにダンジョンの作りはどんどん地下に向かっていく感じらしく、カーディナルフレイムに近付けば近付くほどマグマの熱が身を焼くという。


「――などという理由からポラリスのみなさんでは突破できない可能性の方が高いんです。炎に耐性がある装備などがあるとか限りませんし、ディースさんの魔法である程度軽減する事は出来るかも知れませんが……長時間続くとは思えません。それからライナさんの矢も今回はあまり役に立たないと思います」

「それまた何で?」

「ダンジョン内に生息する魔物の多くは岩に関係する魔物ばかりだからです。矢では魔物の硬い岩に阻まれて矢が通る事はありません。主に魔法使いが活躍するダンジョンとしても有名です。それから武器を使うとしても大剣の様な大きくてパワーのある武器が有利と言われています。アレスさんの剣では不安が残るかと」


 ふむ……単純な装備の問題でもある訳か。

 確かにアレスさん達のパーティーはバランスがいいが、こういった極振りに近いダンジョンには不安が残るかも知れない。

 そして相性の悪い弓矢に剣。そういった部分も止めておいた方がいいという理由なんだろう。

 でもこちらの事情として俺の力を知っている人が来てくれた方がいいという理由もある。仮にもっと相性の良いパーティーを紹介してもらえたとしても、その場合俺の能力に関しては確実に隠しておかないといけない。

 その方が個人的に色々不安が残るし、いざという時に子供達に助けてもらう事も出来ないかも知れない。

 なので俺は少し考えてから言う。


「分かりました。それじゃポラリスのみなさんが帰って来たら教えてくれないかな?自分で説得してみるよ。もしダメだったら素直に諦める」

「……分かりました。それからこちらは依頼する時の依頼金のおおよその目安です」

「ありがとう。あとそれからもう1つ良いかな?」

「なんでしょう?」

「冒険者用のギルドカードってどうやって登録するの?」


 ――


 そんな感じでポラリスのみなさんを待って5日後、冒険者ギルドから帰ってきたと教えてくれたので早速会う。


「みなさんお久しぶりです」

「久しぶりだなドラクゥルさん」

「お久しぶりですドラクゥルさん」

「お久しぶりです」

「久しぶり」


 アレスさん、ライナさん、ディースさん、メルトちゃんと本当に久しぶりに会った。


「ドラクゥルさんはどうだったんだ?冬の間にグリーンシェルに行って、その後アビスブルーに行ったんだろ?いいな~夢の観光都市。俺達もいつか行ってみたいもんだ」

「ええ、とても楽しい旅でした。みなさんは最近まで何をしていたんですか?」

「例のホーリーランドで魔物の討伐をしていました。ホワイトフェザーの加護がなくなって多くの冒険者を雇うようになったので少し稼ぎに行ってました」

「しかしあの最近来たあの方が使う魔道具は不思議でしたね。魔法ではないのに爆発を起こしたり、魔物を貫く魔道具を使っていましたから」

「ん。興味深い」


 どうやら例の外国人はホーリーランドで火器を隠す様な事はしていないらしい。一応ライトさんから監視の報告が届いているが、やはり現場で見た感想と言うのも重要だろう。

 当たり障りのない話をして場が少し盛り上がった後、アレスさんが話を切り出す。


「それで、カーディナルフレイムに行きたいからパーティーを組んで欲しいって依頼だっけ」

「はい。この間冒険者ギルドの登録も済ませました。まだ最低のGランクですが一応行けない事はありません」

「でも別に俺達に頼まなくても大丈夫何じゃないか?強そうな息子さん達も大分戻ってきたんだろ?」


 アレスさんは声のボリュームを抑えて話してくれる。

 こちらに気を使ってくれているのは嬉しい。でも今回ばかりはそうもいかない。


「俺も最初はそう考えましたが、周りには他の冒険者さん達もいっぱいいる中で、子供達の力を借りるのはかなり目立つのではないかと考えたからです。ダンジョンと言うからには結構いるんですよね?」

「確かに多くの冒険者が詰めかけるので人はかなり多いと思います。カーディナルフレイムのダンジョンを攻略したとなれば箔も付きますし、かなり強力な魔物の素材も手に入るので出入りは激しいと思います」

「でも私達のパーティーだとやっぱり危険だと思いますよ。私もメルトちゃんも魔法使いなので物理攻撃の強い魔物が多いダンジョンは避けていますからね」

「ん。ディースとメルトは戦えない事はない。でもアレスとライナは違う」

「実力以上に装備などの問題があるからな。耐熱の装備はもってないし、かなり細い道だって聞いてる。つまりパーティーとしての力よりも個人の力が重視されるダンジョンでもある。やっぱり俺達じゃ力不足だと思う」


 ある程度受付嬢から聞いた話だが、カーディナルフレイムのダンジョンは本当にゲームに出てくるダンジョンに非常に似ている印象を受けた。

 上層まではパーティー全員で戦えるほどの広さがあるが、中層下層と行くにつれてどんどん道は細くなり、マグマにも近付く事になるので非常に危険であり、ほぼ縦一列で進むしかないと説明された。

 更にマグマの中から襲ってくる魔物に狙われたらかなり苦戦する。狭い足場にマグマの中から襲ってくる魔物、そのため連携を取る事も難しくアレスさんが言うように個人の力が最も試される場所でもあるらしい。


 それでもだ。

 俺の能力を使って隠れながら進む事は可能だし、ぶっちゃけ通る事さえできればそれでいいのだ。

 アレスさん達にとっては出来るだけ危険が少なくなるようにしたい気持ちも分かるが、俺はアレスさん達よりも信頼できる冒険者はいない。

 単純に俺の能力を今も黙ってくれている。そして子供達と呼んでいる魔物達に囲まれている事を知っても何も言わないポラリスが1番安心できるのだ。

 だから頭を俺は下げる。


「危険なのは知っています。でも俺にとって最も信用が出来る冒険者なのはみなさんなんです。俺が他の人達に隠している事を黙ってくれていますし、いざ危険な時に子供達に頼っても大丈夫なみなさんにしか頼めないんです。もちろん炎耐性に優れた装備などもお渡しします。報酬だって多少高くなっても払います。ですので助けていただけませんか」


 俺はそういってから頭を下げた。

 頭を下げている間、アレスさん達は何も言わず、誰かがため息をついた様な音がした時にアレスさんが俺に向かって言う。


「報酬は普通でいいよ。どうせそれ以上に良い思いが出来るだろうし」


 俺はその言葉を聞いて顔を上げた。

 ライナさんは苦笑い気味に、ディースさんは微笑みながら、メルトちゃんはいつもの無表情のまま言う。


「そこまで信用されていると思うと応えない訳にはいきませんよね」

「それにこのメンバーで旅をするのはいつも楽しい事が起きますから。楽しみです」

「ドラクゥルは私達で守る」


 そう言ってくれると本当に助かる。

 俺は緊張から解き放たれて力が抜けながら改めてお礼を言う。


「ありがとうございます」

「こっちにも利点があって決めたんだ。だからそんな何度もお礼を言わなくてもいいんだよ。それで具体的な対策はあるのか?」

「その前に1つ伝えておかないといけない事があります。もう1人冒険者の方を招きたいのですがよろしいでしょうか」

「もう1人?」


 俺がそういうとみなさんは首を傾げる。

 この事はきちんと伝えておかないと後から問題になるかも知れないので先に伝えておかないといけない。


「はい。元グリーンシェルで探索と採取を主に行なっていた元冒険者です。今はうちの従業員として働いてもらっているので、彼女の力も借りたいと思っています」

「元冒険者ですか。ちなみに個人のランクは?」

「Cと聞いています。でも出来るだけ戦いを避けてきたと言っていたので戦力としてはどうなのか具体的には分かりません」


 俺が正直に言うと、ポラリスのみなさんは少し相談する。

 その相談が終わるのを待ち、相談が終わると俺に向かって言う。


「その人と会う事は出来るか」

「ぶっちゃけうちで働いているのでいつでも会えます」

「そうか。それじゃ今度会わせて欲しい。ドラクゥルさんの事を疑う訳じゃないが、実際に会って話したりしてからじゃないと組めるかどうか決められない」

「分かりました。ではこの事を若葉に伝えておきます」

「よろしく頼む」


 こうしてポラリスメンバーと若葉は会う事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ