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塩田の村

 俺はまずカーディナルフレイムの北側、塩田の方を先に調べに行った。

 塩田は豊かな港町……という訳ではなく、マジで塩しか作っていないド田舎という感じ。流石に漁をする船らしきものもあるがかなり小さい。

 テレビで見たちっこい島に住んでる人の船ってこんな感じだったな~。


「すみません。塩を買いに来たんですがどこで売ってますかね?」


 流石に俺1人という訳ではなく、護衛兼違和感のない様に秘書的な雰囲気を出しながらノワールが付いて来ている。

 まぁ他の人から見るとノワールの方が渋いからこっちが主だと思われるかも知れないけど。


「こんなところまで塩を買いに?随分珍しい人だね。どこから来たんだい?」

「ホワイトフェザーからです」

「ずいぶん遠くから来たじゃない!塩なら量は少ないけどあっちの組合で売ってるよ」


 村人のおばちゃんが驚きながら教えてくれた。

 俺達はおばちゃんが教えてくれた組合の場所に行って塩を買いたいと伝えるとよぼよぼの爺ちゃんが出て来た。


「初めまして、儂がこの組合の組合長でございます。それでどれだけの量の塩をお求めでしょうか?」

「その前にまずこの村の塩を食べさせていただいてもよろしいでしょうか?うわさでしか聞いた事がなくて、1度食べてみたいと思ったんです」

「それは当然ですな。塩を持ってきなさい」


 こんな感じで普通の商談をしながら塩を食べてみた結果、思っていたよりもおいしかったので出来るだけ多く買いたいと伝えた。

 こっちは大家族なので塩の消費は激しいし、出来るだけ多く買う事で印象を良くしようと思った結果だ。

 組合長のお爺ちゃんは驚きながらも20キロの塩ならすぐに用意出来ると言ったのでその塩を買う。

 塩は木でできた桶の様な物に入っており、メニューで仕舞ってから少し世間話をする。


「本日は本当にありがとうございます。カーディナルフレイムに所属しているとは言え、あまり豊かとは言えませんから」

「いえ、私もこれほど美味い塩に出会える事が出来て嬉しく思います。これほど美味いのですからもっと大規模に販売しては?」

「いえいえ。この小さな村ではあまり多くの塩は作れないのですよ。人の事もありますが、塩田にするための土地も少なく、これ以上塩田を増やすと漁などにも影響が出てしまいますから、これぐらいがちょうどいいのです」

「それは失礼しました。ところでこの塩、私達の他に販売している所はございますか?」

「ええ。今回で2件目です。他の方も塩を出来るだけ買いたいと言い、毎月塩を買いに来て下さるので大変助かっております」


 他にも手を付けてたのか。そのどちらかが茨木か酒吞だと嬉しいのだが。


「では私も定期的に購入したいのでその方々と喧嘩しない様に買いたいのですが……どのような方たちでしょうか?」

「そうですね。1人は随分と昔に参られました。儂がまだ塩田で塩を作っている時、その方は突然参られました。何でもカーディナルフレイムを端から端まで見てみたいと言っておりましてな、その旅の途中でこの村に立ち寄ったのです。その際この塩を食べた時に金貨を1枚出して、『これでできるだけ多く塩を買いたい』と申してきたのでとても驚きました」

「その方は今もこの村に?」

「いえ、今はその方の部下が月に1度買いに来て下さるのです。それまでの村は貧乏でしたのでとても助かっております。今もその方が1番塩を買って下さるので今も友好的なお付き合いをしております」

「ちなみにその方は男性?それとも女性?」

「女性でしたな。褐色の肌の麗しい女性でしたわい」


 褐色の女性か……あり得ない話でないがこれ以上の詮索は危険か。


「ありがとうございます。他に塩を買いに来る方はおりますか」

「……いえ、おりませんな」

「そうですか。それでは長々と申し訳ありません。また今度買いに参ります」


 こうしてこの塩田での話は終わった。

 結局褐色の女性が塩を買ったという話が聞けたがそれが茨木かどうか分からない。

 帰る途中教えてくれたおばちゃんと会ってまた話をすると面白い話を聞いた。


「信じてくれないだろうけどね、たまにオーガが塩を買いに来るのよ」

「オーガが?」

「信じられないでしょうね。でも本当よ。前に鬼の夫婦がいきなりやって来て村の塩を買っていったんだもの。片方の鬼は本当に大きくて驚いちゃったわよ。でも塩を売れば大人しく帰って行ったから何事もなかったんだけどね」

「その鬼は定期的に買いに来るんですか?」

「定期的ではないわね。塩がなくなったからと言って急に現れては塩を買ってすぐ逃げるから、ちょっとした珍客ね」


 多分そっちだ……そっちが酒呑と茨木だ。


「名前とか言ってました?そのオーガ」

「名乗ってはいなかったわね。ただ酒に会う塩を探しに来たって言うのは印象に残ってるわね」


 はい確定。

 確実にあの夫婦がこの村に来てました。


「ちなみにどこに住んでいるとか話していませんでしたか」

「流石にそこまでは聞いてないね」


 その情報を教えてくれた事に俺は礼を言った後ノワールを連れてドワーフの里を目指してスレイプニルに乗るのだった。

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