第九十八話 ニュー・フロンティアでの暴動 その5
惑星フロンティア・ナンバー・ワンの大気圏内で電波の使用が困難なのは、「常に電波妨害」がされてような状態に自然になっているからである。
なぜ、そうなっているのか、科学者たちは様々な仮説を立てたが、跳躍暦百五十年の現在も原因は解明されていない。
なぜなら、開拓を始めて百年以上になるが、惑星フロンティア・ナンバー・ワンの地表の調査はほとんど進んでいないからだ。
無線操縦型調査用ドローンを低空飛行させるのは、電波が使えないため不可能である。
人工知能自律型ドローンも長時間飛行させると、人工知能に狂いが生じ墜落してしまう。
結局、人間の調査隊を派遣するしかなかったのだが、それによる調査は遅々として進まなかった。
拠点からあまり離れることを調査隊がしなかったからである。
他の惑星ならば調査隊に負傷者が出れば、無線機でレスキューヘリを呼べるが、この惑星では不可能であった。
最初の開拓地であり、惑星首都となったリンカーン・シティから近距離ごとに調査隊を派遣した。
連絡用には、地球では趣味になっていた伝書鳩が、この惑星では実用として復活した。
リンカーン・シティから近距離に新たな村を築き、有線通信を整備した。
リンカーン・シティを中心に有線通信網・道路網を開発することで、この惑星の開発は進んだ。
そのため、町と町の間の距離は他の開拓惑星にくらべて短い。
他の開拓惑星では、隣町まで数百キロ離れていて、定期航空便が数分ごとに飛んでるという所もあるのだ。
惑星ニュー・フロンティア・ナンバー・ワンは、最初は地球のアメリカと同じく自動車社会だったが、道路が慢性的な渋滞に悩まされるようになったため、鉄道網を整備した。
都市間の移動は鉄道が主になっている。
地球では廃止された公衆電話が、この惑星では復活した。
街のあちこちに公衆電話がある日本では昭和時代の映像にしか残っていない光景が現在にあるのだ。
この惑星でも携帯端末はあるが、通話やメッセージ送信には使えないので、公衆電話で有線で接続して、音楽や動画などのデータをダウンロードするのに使われている。
地球の「仮装現実反対派」は、このような惑星環境ならば自分たちの理想とする生活ができると集団での移民を申請した。
合衆国政府も過激派の「厄介払い」ができると、あっさりと申請を認めた。
移民した仮装現実反対派は、自分たちだけの理想郷がつくれると思っていたが、それは誤りだった。
仮装現実反対派の中から仮装現実賛成派が新たに生まれたのだった。
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