二人のレッド
「よしっ! では、おっぱいを大きくするぞいっ!」
興奮を隠しきれない声で、漉王老師が手をワキワキさせながら言った。
「お願いしますっ!」
貧乳イエローこと平野ぺたは、ぎゅっと目を瞑った。黄色いトレーニングTシャツを着た胸を、『好きにしてください!』というように差し出した。
漉王老師の手が、嫌らしい動きで伸びてくる。
掴んだ。
揉んだ。
揉みしだいた。
「うわあああああ!」
たまらず目を開き、泣きながら平野ぺたは拳を放った。
「のほおおおお!」
喜びの声をあげながら、漉王老師は吹っ飛ばされた。
「ぺたちゃん!」
「ぺったん!」
「ぺったんたん!」
仲間のレンジャーたちが叫ぶ。
「巨乳になってる!」
「えっ?」
平野ぺたは自分の胸を見た。
ついさっきまで、黄色いトレーニングTシャツになだらかな丘しか作っていなかったそれは、今や小さな富士山を二つ、盛り上げていた。
「やっ……、やったぁ……!」
夢が叶った喜びに、ぺたは思わず拳を振り上げていた。嫌らしい手つきでジジイに揉みしだかれたことなど既に忘れていた。注文のDカップではなく、どう見てもGカップはあり、細マッチョな体にデカい肉まんが二つついてるみたいだったが、この際デカければデカいほどいいと思えた。
「美乳ゴールド誕生! ぶるるるーん!」
巨乳らしいポーズを決めた。
「ゴールドのGはGカップのGだ!」
「さて……」
ぺたに吹っ飛ばされた時に頭を割られ、頭からどくどくと血を流しながら、漉王老師が言う。
「次はいよいよおまえさんの番じゃ!」
ワキワキと指差す先には貧乳レッドこと千々梨優美が立っていた。
「わ……、私はやっぱ、やめとく」
優美は拒否った。
「なぜじゃ!」
漉王老師は食い下がった。
「言うたであろう! わしの仙力で、おまえさんにかかっておるその魔力、ぶち破ってみせよう! ハァハァ……!」
「破られてたまるか!」
いつの間にかそこにいた篠宮マサシが声を張り上げた。
「優美ちゃんのチッパイは永遠に僕のものだ!」
「何を貴様! ひよっ子の分際で! すべてのデカパイはわしのものじゃ!」
「やるか糞ジジイ! 表へ出ろ!」
美乳ブラックが窓を開けた。
二人はそこから飛び出すと、外で激しいバトルを繰り広げはじめた。
「ここ……17階なんだけど」
美乳ブラウンが呟いた。
突然、部屋の中で爆発音が起こった。
「わ!?」
「何!?」
「きゃあっ!?」
メラメラとオレンジ色の炎が、みるみる事務所の中を染めていく。真っ黒な煙が戦士たちを飲み込んでいく。
「炎はトモダチ!」
千々梨優美が炎を掴み、千切るように窓の外へ投げ捨てた。
「わたくしよりも強い炎などありません」
獏羽生玲子が横薙ぎに、バストで黒い煙を窓の外にすべて追い出した。
二人のレッドは同時に同じところを睨みつけると、その人物を指差す。
「巨乳グリーン改め、美乳ホワイト!」
「あなた、ニセモノね!?」
「ホーッホッホッホ!」
美乳ホワイトこと牛野陽奈が高笑う。
「よく見抜いたわね!」
「だってバストサイズが微妙に違うもの!」
「陽奈さんはHカップ! あなたはどう見てもGカップしかないわ!」
「ぐぎぎぎぎ!」
それは陽奈に化けた悪の組織『ギゼン』幹部、ドクター・チヴこと牛野千房であった。陽奈の双子の姉である。
「たかがブラのカップが1サイズ違うだけで私をバカにするな!」
「みんな! 初めての戦いよ!」
美乳レッド1号こと獏羽生玲子がみんなに呼びかける。
「悪を許すな! みんなで1つになるよ!」
美乳レッド2号こと千々梨優美がみんなを1つにする。
「「美乳戦隊ビニュレンジャー!」」




