ヒンニューピンクはキョニューピンクがきらい
ヒンニューピンクこと鬱布瑛華は14歳、中学2年生である。
しかし知らずに彼女を見る者は、皆小学校4年生ぐらいだと思うであろう。
実際、その背は小4の頃からほとんど伸びていない。
ピンクのツインテールということもあり、人は彼女を『ちび○さ』とよく間違える。
彼女は学校帰り、ショッピングモールに立ち寄っていた。
貧乳戦隊の室内トレーニングの時に履く運動靴がもうボロボロだったのだ。
レシートを出せば後でテレビ局が立て替えてくれるので、出来るだけ値段が高く、出来るだけかわいいのを買おうと思って来た。
『あっ。これ、かわいいな』
棚の一番下の段に、マジダスのピンクのラインの入った靴が3万円ほどなのを見つけ、手を伸ばす。
横から同じ靴に伸びる手があった。
二人同時にがしっと掴む。
「あっ?」
「あっ!」
横から同じ靴を掴んだ手の持ち主は、ライバル巨乳戦隊のキョニューピンクこと出階堂小心だった。
二人は靴から手を離さないまま、睨み合う。
「何してんのよ、アンタ」
小心が歯を剝いた。
「アンタこそ何してんのよ」
瑛華も負けじと眉間に皺を寄せる。
「小学生がこんなところ一人で歩いてていいと思ってんの? 保護者同伴じゃないとダメでしょーが」
「小学生じゃねーよ。アンタこそいくつよ」
「16よ。高校生よ」
「ボクだってこう見えて中学生だわよ」
「この靴のサイズ、21.5cmよ? アンタ中学生にもなって小学生サイズ?w」
「ブーメランだろ、それ。アンタ高校生にもなって……」
「悪い? 発育がすべて胸に回っちゃったんだから、しょうがないでしょ」
そう言ってキョニューピンクこと出階堂小心がIカップの胸を誇らしげにどーん!と張る。
「きっもちわるい……。小学生みたいな身体に何パンパンに膨らませた風船みたいなの2つくっつけてんだよ。腫瘍?」
そう言ってヒンニューピンクこと鬱布瑛華は胸を守るように腕を組んだ。
「アンタそれブラつけてんの? もしかしてまだジュニアブラだったり?」
「体型に合う胸してんだよね。おかげでち○うさみたいで可愛いってよく言われるよ? アンタかわいそう。なんかデッサン狂った埴輪みたい」
「何よ! 怪人さんはあたしのこと可愛いって思ってくれてるわよ! だっていっつも真っ先に捕まえてくれるもん!」
「ボクだってこの前、捕まえてもらえたよ?」
「すぐに放されてたじゃん! 『揉む乳がなくてつまんねー』とか言われて!」
「何よ! あんたきらい!」
「あたしもあんたきらい!」
「あのう……。お客様?」
横から女性店員が割って入った。
「同じサイズの在庫、ありますけど……。お出ししましょうか?」
10分後、二人はなぜかカフェの同じ席で向かい合っていた。
二人とも泣いた後の顔をして、頬を膨らませている。
小心が言った。
「アンタと運動靴、おそろになっちゃったけど……」
「わかってる」
瑛華が言った。
「べつに仲良しの証とかじゃないんだからね」
ズズズと音を立てて二人同時にミックスジュースを飲み干すと、ぷいと背中を向け合い、揃ってカフェを出ていった。




