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ー求め合う神と人ー

 銀露の細い指がさっきから僕のお腹をしきりに撫でてる。

 はじめはくすぐったかったけど、今はなんだか心地いい。


「ぬしは綺麗に染まってくれそうじゃ……」


「んー……もう染まりつつあるかもしれないけどね」


「くふふ、味も知らぬうちじゃ、まだまだ浅いじゃろう……?」


 銀露の息が少しだけ荒い。

 それを感じ取れたのは、その息遣いをすぐ後ろに感じたから。

 

 首筋に、ぬるりとした暖かい感触が這わせられた。

 銀露の舌先がゆっくりと、でもなんどもなんども僕の首筋や耳を這う。


 狼流のスキンシップと言えばそれまでなんだろうけど、なんだか銀露の様子がおかしい。


「んっ。ぎ、銀露……?」


 銀露の牙が、淡く僕の首筋に食い込む。その甘噛みが何度も繰り返される。

 これ……もしかして銀露発情しちゃってたりとか……?


「いかん」


「え? なにがいかんの?」


「ぬしが欲しくて……たまらん」


 本当に、我慢できないといった様子でそんなことを言うものだから身構えてしまった。

 かちんと固まってしまった僕の体をほぐすように、銀露が優しく腕や脚で包み込む。


 それで緊張がほぐれてしまったのか……はたまた、僕も銀露に当てられて、発情してしまっていたのか。


 驚くべきことに、お湯の中でするっと180度方向転換し、銀露の唇を再び奪ってしまった。


「んむっ……」


 緊急時じゃない今度は、ほんとうにお互い確かめるように、ゆっくりと深く、長くはっきり。

 はじめは驚いた様子だった銀露も、すぐに応じてくれて僕の背中に腕を回して抱きしめて……。


 唇が離れたかと思えば銀露がもっともっとと、それこそ食いついてきて……。

 お互いを繋いだねっとりとした唾液の糸が切れると、銀露と僕は一緒に微笑んでた。


「ぬしのそういうところがわしの琴線に触れるのじゃぞ……」


「ぎんろ……」


「……?」


「僕、まだ満足してないよ……」


「くふ……わしもじゃ……」


 そこからは、なんだろう。すごく濃いスキンシップをしていたようだ。

 ほんとうに、どろどろに溶け合って一つになってしまいそうなほど。

 

 抱きしめ合って、舐められて。


 気づけば浴槽の外で僕は銀露に押し倒されてて、濡れた銀色の髪が垂れ下がり、ギラギラと艶めき光る赤い瞳が一寸違わず僕を見つめてた。

 このまま、……歯止めの効かないまま……。




「きしし、ここでの情事は禁止じゃぞ。どうしてもというならあとで部屋なら貸しんす」


「——……ッ!!」


 僕は、たぶん初めて銀露の女らしい悲鳴を聞いた。


 ……——。


「きしし、銀狼、きさんともあろうものが準備万端だったではないかや」


「やかましいわ。気配もなく近づいてきて堂々と何を見とるんじゃうぬは。まったく……邪魔しおって」


「情事は禁止でありんすぅ」


 僕はぶくぶくと口まで温泉に浸かって、その会話には混じらないようにした。

 まさか蛇姫様がすぐ近くで見ていただなんて……。



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