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19節ー神としての意地ー

 そう、ただそこにあるだけなら……人間が近づかなければそこは土地の汚れを一身に集めるだけの場所だったんだ。

 あの社に近づくと不幸になる。病気になる。

 あの社は呪われている、無くすべきだ。


 そして今、一柱の神様が神でも妖でもない何かになろうとしてる。

 信仰を失った神様は力を無くして消滅します。そんな単純な話じゃないみたいだ。


「誰からも忘れ去られた神は己ですら自己を自覚できん何かに成り下がるのじゃ。死角の世の縛りから解放され持て余した神性が歪んで肥大し、現にまで影響を及ぼす現象となった例をいくつか見たことがある」


「そんな……じゃあ蛇姫様は」


「うむ。あのままでは、あやつが治めていた土地だけではなく周囲の土地まで穢れにより腐るじゃろうな」


「周囲……治めていた土地は?」


「それはもう手遅れじゃ。分社もしつらえず、社を炊き上げた時点で終わっておる。今こうしておる間にも腐敗しつつあるじゃろうの。蛇姫が集めておった汚れや負は人や陰陽師、ましてや並みの神にすら扱えるようなものではないのじゃから」


 そう。その土地のことはもう終わってしまったことなのだ。もう今更どうしようもない。

 その社が燃えている中で、周囲の山から様々な獣達が逃げている様子が映し出されてる。

 生き物という生き物が、本能的に去っていく。

 気づかないのは、人間だけだ。

 気づいても逃げられないのが、人間なんだ。

 人は、その土地に依存して生活しているようなものなのだから、仕方ない。

 

「鬼灯の……余計なことをせんでよいと言っておきんしたが」


「申し訳ありません、夜刀姫様……しかし、この者たちは知らねばなりませんでした。あまりにこちらが理不尽に、柊千草を欲しているように取られかねないかと……」


 気づけば、僕と銀露は元いた楼閣の広間に戻ってきていた。

 今まで見ていた景色は、鬼灯さんが見せていたものだったんだ。

 不機嫌そうに頬杖を付いている蛇姫様に対して、鬼灯さんが頭を下げてるみたい。


「そういう事情があるなら、初めに言ってくれれば……」


「幾千の蛇の長であり、この緋禅桃源郷を治める神であるわっちが人の子に何を願えというのかや。わっちにも、矜持というものがありんす。それを捨ててまで保つものは何もありんせん」


「だからといって、強引に千草を奪って良い理由にはならん。蛇姫、うぬの取れる行動はわしがここに来たことによって一つ増えておるが」


 一つは、このまま己の神性に呑まれるか。

 二つは、僕を奪ってそばに置き、存在を保ち続けるか。

 そして増えた三つ目は。


「わしが呪いごと喰ろうてやろう」


「きしし。本気で言っておるのかや? そんなことをすれば、きさんはもうその人の子の側には居れんようになるぞ」


「うぬに渡すよりは幾分マシじゃ。それに……そのような理由があればくだらぬ口約束を反故にしても問題あるまい」


「……え、銀露……?」


 それって……その言い方って、まるで銀露が僕と一緒にいることを拒んでいるような……。


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