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私は文句を言ってるの。

くどくどと何度も…。


「だって、シャルも思うでしょう?」


けど、シャルは苦笑いを浮かべたままで、ついに私の唇に指を当てた。


「う、…」

「さて、これ以上の文句を言わさないようにしたいんだけどな。ミア、俺はどうしたらいい?」


引き際なんだ…。

まぁ、いいっか、散々聞いてもらったから。

私のどうしようもない愚痴をね。


「じゃ、キスして?」

「わかったよ」



春の頃。

シャルが城から通うのも楽になったって言ってくれて、頻繁に来てくれる。

でも、久し振りの2人きりの時間なんだ。

もっと大切にしたいのは、私も同じ。


シャルのキスは素敵だ。

ああ、感じちゃう…。


ゆっくりと唇が離れた。


「素敵だな?」

「うん」


また重なる。

やっぱり、シャルの側が1番良い。

だけど、もっとって思うのに、シャルが唇を離してしまう。


「あん、止めちゃやだ…」

「分かってる、止めやしないから」


急に抱かかえられて、ベットに運ばれた。

そっと下ろしてくれるのは変わらない、だから、シャルが大好き。

優しく私の髪を撫でながら、優しく話し掛けるの。


「なぁ、ミア?」

「なあに?」

「愚痴や文句は俺にだけ言ってるのか?」

「うん…」


だって、他に聞いてくれる人、いないから。

マドレーヌもラルも離れているもの。


「なら、いい」

「いいの?」

「いい。慣れない環境にいるのは俺の為だって分かってるんだ、だからどれだけでも聞く覚悟は出来てる」

「なら!」

「だが、マリを婆様に取られたって話は無しだ」


取られたってのは大げさなのは分かってる。

ルリのお菓子とマリを私の侍女にして癒されたいと考えたのに…。


お婆様が部屋付きの見習い侍女にしてしまったから、私はマリには癒されてない。



でもね、かえって良かったって思ってるの。

お婆様が嬉しそうにお過ごしになっているのが分かるから。

当然部屋付き見習いなんだから、マリに対しても厳しい所は厳しい。

でも、相当、優しくしているのが伝わる。

だからマリも叱られても、涙を堪えてちゃんと謝るの。

皆に大切にされているのは伝わってくるから、それで良いの。


それでも、それをちょっと悔しいと思うのは愚痴かしら?

でもなんでシャルはそんなこと言うんだろう?


「どうしてそんな事言うの?」


顔を背けて、ブッキラ棒に言う。


「…、俺よりもマリの方が好きみたく聞こえるから、嫌だ」


あ、…。


「シャルって、そんな事思ってたの?」

「…、」

「私はシャルだけを愛してるのに?」

「仕方ないだろう?俺はヤキモチ焼きなんだ、覚えておいてくれよ?」

「わかったわ、覚えておく」

「良かった」


シャルが少し安心したみたいだ。

分かりやすくて可愛い。

けど、知ってるのよ?

私の前だから、思った事が顔に出るんだって事。


「考えてもみろよ。なかなか会えなくて、俺は寂しいんだぞ?」

「あら、それは私も一緒よ?」


だから、起き上がって私からキスをした。

シャルの手が私の服を脱がせる。

当然の様に協力するの。

現われた私の肌に指が触れる。


「俺の方が好きだって思い出させてやるから…」

「馬鹿、」


そんな言葉すら愛おしく感じる。

ゆっくりと私の胸に触れる指、素敵だ。


「あん、」

「ミア、愛してる」

「わたし、も、」


言葉が繰り返される、だって、久し振りに会ったんだもの。

何度でも、愛してるって言いたい。

愛してるって聞きたいの。


でも、シャルがくれる刺激は優しいけど感じるから、言葉よりも声が出ちゃう…。


「ミア、いい、よ。聞かせて欲しい、ミアの声、」

「あ、シャル、や、やめないで、あ、ああ、」


シャルの舌が私に触れたとき、私の心臓は破裂するかと思うくらいにドキドキした。


「あ、ああああ、」


この感触が、たまらなく感じてしまう。

愛される喜びに満たされる。

離れたくない、愛してるって、叫びたいくらいなのに、声しか出ない。


「ああ、うううーんああ、ああああ」


もう駄目だ、だめ、。


「あああーーーん!…、あ、…」


グッタリとしてしまうんだ。

きっと私は物凄く潤んだ目でシャルを見ているって思う。

だって、凄く良かったんだもの。

ゆっくりとシャルの手が私の頬を撫でる。


「ミア、俺から離れないでくれるな?」


そう確認してくれるのも、好き。

だって、私の事愛してくれているから。

だから抱きついた。


「うん、すっと一緒、」


甘える、子供みたいに甘える。


「シャルの側がいいの」

「俺も、だ、あ、」


シャルがゆっくりと私を求める。

されるがままに私は彼を受け入れる。

私の中にシャルがいるの、それは凄く素敵なこと。

その刺激はゆっくり始まって、段々と激しくなっていく。

シャルの声が聞こえる、私は言葉で応えたいのに、だめ、あ、ああ、。


シャルが私の中で…。

そのことすら愛おしいの。


暫くは抱き合ったままで、いる。

シャルの温もりが私を安心させる。


シャルは私の腕の中で寝てしまった。

その事が嬉しい。

私だけがシャルを癒せるんだって、嬉しい。






「ほら?」


耳元で声がした。


うん?

もう朝なんだ。

朝日が窓から入ってくる。

その光を受けたシャルは輝いている。


「起きたか?」

「うん、起きた。愛してる」

「俺もだ」


私達は慣れたキスを交わして互いにギュッと抱きしめ合った。


「今日はゆっくりできるんでしょう?」

「ああ、だからもう暫くこのままだ」

「うん」


この時間が大好き。


「なぁ、」

「うん?」

「俺達、一緒に暮らさないか?」


突然だから驚く。


「え?」

「このままって、変だろ?いずれはミアを俺の妃にするのにさ」

「だって、お婆様の後を継がないといけなくなったから、それだから…」

「婆様はまだまだ元気だ。それに、ずっと一緒って約束しただろう?」

「うん、約束した」


シャルの手、暖かくで優しい。


「考えてばかりいると、踏み出せなくなる。だから、今日から城に移ろう?」

「急だわ?」

「それくらいがいい」

「でも、けどね、」

「何だ?問題があるのか?」


真っ先にルリのお菓子のことが頭に浮かんだなんて、言いにくい。


「笑わない?」

「もちろん」

「絶対よ?」

「ああ」


だから私はルリのお菓子の話をした。

3人の結束を破ってしまって、ゴメンなさい。

けど、結構に大問題だもの。


シャルは、予想通りむくれた。


「なんだよ、それ?」

「ゴメンなさい」

「なんで俺がのけ者にされてるんだ?」

「のけ者になんかしてないんだよ。ただ、ルリの負担が多くなるからって、3人で決めてね」

「婆様は知ってるのか?」


返事に詰まる。


「お婆様にはマリがいるから、いいじゃない?でもね、これはね、ルリの負担がね」


何度も同じ答えを繰り返す。

だって、本当だもの。


「だって、ルリはまだ大人じゃないんだもの、そうでしょう?」

「わかったよ」


ギュッと抱きしめてくれた。


「けどな、ヴァンがな。そんなに入れ込んでるなんてなぁ」

「ヴァンの甘い物好き、知ってた?」

「知ってたさ。ヴァンってさ、結構に俺に厳しいだろう?」

「うん」

「だからご機嫌取りに甘い物を差し入れたりはしてたんだ。少しだけ手加減してくれるから」


なんだろう、想像できるから弱っちゃう。


「あ、じゃ、私のクッキーって?」

「あれは、あれだけは半分以上は渡さなかった。っていうか、半分も取られたんだぞ?普通、俺とヴァンの関係なら、ヴァンは食べられないと思わないか?」

「そうだね…、」

「それをあいつは!」

「いいじゃない、あの後、何度も焼いてあげたでしょ?」

「まぁな。また、食べたいな?」

「うん、嬉しいよ?」


キスされた。


「それとね、ヴァンとルリって仲が良いのよ?ルリはヴァンの為にお菓子を作ってるみたいなんだもの」

「どうなんだろうな。だけどあいつを虜にするなら、その方法が一番だからな」

「なるほどね」

「で?ルリと離れたくないから、俺と一緒は諦めるのか?」


あ、えっと。


「何度でも言うぞ?俺はヤキモチ焼きなんだからな?」


そんな事をいう深蒼の瞳は、いつも通り優しい。


「俺に教えてくれ?どうなんだ?」

「馬鹿、シャルと一緒が良いに決まってる」

「だろう?」

「うん」

「ルリの事は、ヴァンに任せておけばいいさ。あいつは必死に方法を考えるから」

「そうだね?」

「ああ、朝一番に婆様に報告しよう」


急な話で、お婆様は納得してくださるかな?


「大丈夫かしら?いつも私の事心配して下さるから、」

「問題ないと思う。マリがいるから」

「あ、そうだね?」

「ああ、俺はマリに感謝しないといけないな、きっと」


シャルも私もお婆様の屋敷での暮らしがこんなに長くなると思ってなかった。

でも、お婆様の笑顔が見られるから、いつも心配して下さるから、一緒に生活は楽しかった。

だからこそ、私達はお婆様に言い出せなくなっていたんだ。


「さぁ、そうと決まれば急ぐぞ?」

「うん!」




ようやく、私達は一緒に暮らせるようになるんだ。




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