表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/102

73

賑やかだった食事が終わって、そしたら、だ。


私とシャルは、急に追い出されそうになった。

だって、「私達、これから女子会なの」ってケイト姉様が言うんだ。


「ね、ミリタス。そうでしょう?」

「あ、そ、そうよ。マドレーヌ、そうだったわね?」

「あ、はい。では、お兄様もお帰りくださいね?」

「え?ミリ?」

「そうなの、エド。お願いね」

「あ、…」


そして3人に言われた。


「シャルディ、邪魔だからルミーアと一緒に帰ってくれる?」

「そうですわ」

「従兄妹として申します。お引取りを」


なんだろう、嬉しくて心に染みた。


「さあさあ、早くして」

「ケイト?」

「いいからね。シャルディ、ルミーアを頼んだわ」

「あ、ああ、わかった」


皆が2人きりにしてくれたんだ。

甘えていいのかな?だって、ヴァンまですまし顔で言うんだもの。


「殿下、明日の用意はこちらで整えておきますので、ご安心を」

「ヴァンは来ないの?」

「はい、私はエドマイア様とお話がありますから」

「参ったな…」


私はシャルを見上げた。

苦笑いの愛しい人はそっと私の手を握ってくれる。


「じゃ、好意に甘えるか?」

「そうだね?」

「わかった。ヴァン、俺の屋敷は行っても大丈夫か?」

「もちろんです。ご安心を」

「なら、行こうか?」

「うん」


皆に挨拶をして、私達はシャルの寮に行くことにした。





しばらくシャルがいなかった屋敷は、セバスチャンが整えてくれたからちょっとヒヤッとしてるだけだ。

静かな部屋で2人きり。


「ケイト達も優しいな?」

「そうだね、優しいね…うん…」

「どうした?」

「あのね、シャルは会いたくて来てくれたの?」

「そう、会いたかった」


シャルの部屋で私達は互いを見ている。

シャルの手が私の髪を撫でてくれる。


「ミア、俺にキスを強請ってくれ?」

「どうして?」

「ミアが色っぽいから、好きなんだ」

「もう、仕方がないんだから…、ねぇ、私にキスして?」


1度目のキスは軽くて少し甘い。

シャルの潤んだ深蒼が私を見る。


「俺を愛してるか?」

「もちろんよ、愛してるわ」

「俺もだ」

「私に触れていいのは、シャルだけだからね?」

「俺の心に触れられるのはミアだけだ」

「シャル…」

「俺が許すのは、お前だけだよ」


そう言って、キスしてくれる。

そのキスは何度も繰り返されて、深くなっていく。

体が火照る。

シャルにしがみ付いていないと立てなくなる。


「あ、立てないよ、あん、」


もう私は…。

差し出された手を掴むのがやっと。


「そんなに色っぽい瞳で見詰められたら、止められないよ?」


寝かされて、慣れた手つきが私を裸にする。

そして、とても素敵な声で囁いてくれる。


「何度見ても綺麗だよ?」

「うん、あ、」

「俺のミアは綺麗だ…」


その指に、舌に、翻弄されてしまう。

愛してる、その事を伝える為に私達は肌を合わせる。

言葉ではなくて、感触が気持ちを伝えてくれるから。

求めて求められて、私はシャルの中に落ちていく。

そして、シャルを私の中に受け入れる。

シャルの満ち足りた声が耳元で囁く。


「ああ、ミア、素敵だ、このまま眠りたいよ…」

「いいよ?」

「抱いていて、くれるかい…?」

「うん」

「おねがい、だから…、ね…」


無理をしてきてくれたからか、シャルは私よりも先に眠ってしまった。





月の光が綺麗で私は眠れなかった。

だから、シャルの寝顔をずっと見ていた。

綺麗だったから。


「起きてたのか?」


急に目が開いて喋り出すから驚いた。


「え?」

「寝てないんだろう?」

「どうしてわかったの?」

「なんとなく」

「じゃシャルも寝てないの?」

「寝てたさ。ミアが隣にいるんだぞ?安心して眠れた」

「なんか、不思議だわ」

「そうか?」


そう言って私を抱きしめる。

素肌と素肌がくっつく。


「シャルの匂い…」

「俺の?」

「そう、安心するの」

「なら、良かった。明日は早い、寝よう?」

「うん、このままでもいい?」

「いいよ」

「嬉しい、きっと、眠れるから…」


暫くして、シャルの寝息を聞きながら私も眠りについた。





そして、次の日。


私とシャルはヴァンを連れて、ベルーガの外れのお屋敷に向った。

大きくはないけれど、格式が高いお屋敷。

そこにはシャルのお婆様が住んでいる。


今日からタリはお休みだ。

ここはお婆様の自宅、警護は厳重で心配が要らないから。

昨日、タリがお休みの連絡に来た時に話をした。

タリの家には妹さんが2人いて、両親がいないからタリが家族を支えている。


「妹さんとゆっくりできるわね?」

「いえ、他の仕事を探さないといけませんから、」

「あら、お休みの間もお給金は出るはずよ?」

「え?」

「ヴァンにね、そうしてってお願いしたわ」

「ルミーア様、そのようなこと、護衛の人間には、普通はしません…」

「だって、タリは私にとって必要な人だもの。他に行かれると困るから、だから心配はいらないのよ」

「けど…」

「ヴァンに確認してね?絶対に私の護衛は辞めないでね?」

「はい!」

「だから妹さん達とゆっくりしてね?」

「ありがとうございます!」


そんな会話を昨日した。

今頃は妹さん達と何してるんだろうな?


「どうした?」


シャルの声が今に引き戻す。


「え?あのね、タリがね今日からお休みなの。だから何してるのかなって」

「休みの時も給金を払うってヴァンが言ってたな」

「そうよ、タリは優秀だもの」

「ああ、そうだった」


暫くして馬車が止まる。

降り立ったシャルは大声を出しながら屋敷に入っていく。


「婆様、いるか?」

「婆様、って、もう!シャル!失礼よ?」


ヴァンは笑っている。


「ルミーア様、大丈夫なのですよ」

「え?」


その時上から大きな声がした。


「静かになさい、未熟者が」


そう言って現れるお婆さん…、ううん、背がシャンとして、綺麗に年を重ねてきた女性。


「婆様、俺の妻を連れて来た」

「お前の妻、」


シャルから視線が私に映り、凝視された。

息が出来ない。

凄い迫力…。

ゆっくりと言葉が続く。


「ルミーア・ランファイネルですか?」

「あ、はい」


それ以上の挨拶が出来ない。


「そう…、」


そのままシャルディの側に行って、ボソッと何かを呟いた。

「あ、うん…」そんなシャルの声だけが聞こえた。

けれども、私に微笑み掛けて下さる。


「わかりました、引き受けましょう」

「すまない、婆様」

「けれど、最低でも2週間は留まってもらいます。いいですね?」

「はい」


先日の事もあるから、私は大人しく王太后様の元で過ごす。

それがシャルとの約束。


「ミア、婆様はキツイが性根は悪い人間じゃないから、安心しろ?」

「シャルディ、お前は何を言うのですか?」

「あ、悪気はなかったんだ、」

「この孫は、相変わらず言い回しが下手ですね。直りませんか?」

「…、努力します」

「よろしい」


シャルが苦手な女性は他にもいたんだ。

可笑しくて笑いそうになるのを堪えた。


「それじゃ、連絡は毎日するから」

「うん」

「これ、シャルディ。少しは堪えなさい」

「婆様、ミアをよろしく」

「まったく話を聞かない子です」

「俺の大切な人だから」

「わかってますよ」

「ああ」


ヴァンがシャルを急かす。


「殿下、そろそろ時刻です」

「わかってる」

「なら、お早くして下さい」

「ああ、」


不機嫌そうに、子供みたいに、シャルが返事をする。

そう、とても名残惜しそうにシャルが屋敷を後にした。




それから王太后様が付きっ切りでの行儀作法の指導が始まった。

理不尽なことなんかないけど、厳しい。

今日は陛下にお目通りする為の礼儀を教わっている。


「もっとゆっくり、ですよ?」

「はい、」


部屋に入るだけでも、この駄目だし。

わかってはいる、わかっているけど、自分の無作法振りが歯がゆい。


「失礼致します」


入室の際に軽く一礼。

ゆっくりと前に進み、陛下の前で頭を垂れてお言葉を待つ。

シャルがいればまた違うし、他の人だとまた違う。

これは決まりではなくて礼儀だから、私に相応しい行動で構わない。

そう王太后様は教えてくれる。


「顔を上げてご覧なさい」


無言で顔を上げて、しっかりと目線を合わせて、微笑む。


「まぁ、様になってきましたね」

「ありがとうございます」

「では、もうお仕舞いにしましょう」

「はい…」


そういわれて少し楽になった。

勧められた椅子に腰掛ける。


「ルミーア、」

「はい、王太后様」

「指導の時間は終わりました。婆様でいいですよ?」

「けれども、」

「貴方の夫がそう呼んでいるのでしょう?」


夫って、あ、。


「え、っと、」

「違うのですか?」

「いいえ!」

「でしょう?フフフ…」


王太后様は豪快優雅に笑う。




私にだって分かる。

王太后様、お婆様は素敵で優しい方だって。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ