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朝日にシャルの髪が輝いて見える。
まるで神話の神様の様に、神々しくて美しいから困ってしまう。
けど、私を見つめる瞳はいつも通りに優しい。
「ミア?」
「うん」
結局、私達は朝を迎えてしまった。
1度肌を合わせてしまったら、離れられなくなったから。
馬鹿だ。
何度愛し合ったんだろうか?
でも、深蒼の瞳を見ていたら、そんなことどうでも良くなってしまう。
何度も確かめ合いたくなってしまう。
「昨夜は無理させた、ごめん」
「いいの、だって、私も愛されたかったから」
シャルの指が私の髪を撫でる。
「何度でも約束する。もう、離さないから」
「うん」
触れられる度に甘え癖が付いていく。
私はまるで猫の様に満足気にシャルに絡みつく。
素肌と素肌がくっつく事がこんなにも満たされることだって、知ってしまった。
私が隣にいるのに触れてくれないなんて、信じられなくなってるんだ。
昨夜一晩で、私は素肌でシャルの前にいることが当り前になってしまった。
慣れるのが早すぎて驚く。
もっと一緒にいたい。
もっと感じていたい。
初めての時間が素敵過ぎて、私達は互いに中毒という毒に侵されたみたい。
私はシャルに夢中だから。
「キス、して?」
「いいよ」
朝のキスって、夜と違って素敵だ。
だって、優しくてゆっくりで、甘い。
唇を離すのが惜しくて、もの凄くゆっくりと離れる。
それから互いを見詰め合う。
目の前にいる最愛の人を見詰めていられるなんて、幸せ。
「ミアからキスを強請られるのが、好きだな」
「そう?」
「ああ、そんな時のミアは、たまらなく色っぽいんだよ」
私の髪を撫でながら言うシャルが素敵。
「自分じゃわからないわ」
「わからなくていい、俺だけが知ってるから良いんだ」
何故か悔しい、何か対抗したい…。
「私だって、ね、あるのよ?あ、でも…」
「何?」
「恥ずかしいから、言えない」
急にシャルから抱きしめる。
シャルの匂いに包まれて、それだけで私は理性を失っていく。
耳にシャルの唇が触れる。
「言って?」
「いや、いわない」
「俺達だけしかいない、だろ?」
囁きは甘くて、瞬く間に私をシャルの世界に引きずり込む。
「だって、シャルの、気持ち良さそうな、顔、あ、あの、」
耳を軽く弄ばれる。
火が付いてしまうから、性質が悪い。
物凄く感じるの。
「もっと、言ってくれよ?」
「あの時の顔、可愛い、の。あん、」
シャルの指が胸を刺激する。
「可愛い?」
「そう、可愛い、くて、守ってあげたく、なるのよ…」
指が止まる。
「ミア」
シャルの唇が急に耳から離れた。
その瞳がいる。
私の顔を見詰める深蒼の瞳は静かだ。
「俺を守ってくれるのか?」
ああ、そう、そうなんだ。
あの時からそうしたかった。
シャルが泣いていいのは、私の腕の中だけ。
私はシャルの瞳の奥を見る。
「守るわ。シャルが求めるなら、何時だって私の中に来て?私が受け止めるから」
「ミア、」
「愛してるもの」
「俺もだ」
ゆっくりとキスを交わす。
もう言葉は要らない。
「受け止めて欲しいよ」
シャルの唇に、シャルの指に、シャルの吐息に、私は全てを任せる。
惜しげもなく与えられる愛に触れる。
堪らない、その刺激は私を感じさせるためだけに与えられる。
シャルが私を感じさせてくれる。
「あ、いい、ぁ、」
やっと言葉に出来る。
指はまた違う場所に触れる。
「ここも?」
感じるって、なんで分かるんだろう?
「うん、か、感じる、から、あ、いい」
「もっと、いって?」
「あああ、ぁ、シャル!あああ、」
与えられた愛の深さに溺れる。
もがく様に息が激しくなって行く。
自分でも驚くような声が出る。
「ああ、いい!ああぁ、あああ…あ!」
激しい波が去っていく、グッタリとしてしまう。
シャルの愛に満たされて私は満足する。
「素敵だ、たまらないよ?」
グッタリとした私にキスをくれる。
与えられて満たされた、だから、今度は私が…。
私はシャルを誘う。
「来て?」
慣れたように私の中にシャルが入ってくる。
「ミア、あ、」
「いい?」
「ああ、すごく、温かくて、あ、ミア、いい、」
ゆっくりともたらされる刺激は、体の中から感じさせてくれる。
「私も、よ、」
「ああ、ああ、」
こんな感覚があったんだ。
1度覚えたら、また感じたくなる。
物凄い感覚。
「いい、」
「ミア、ミア、あああ!…」
声が止まって、ゆっくりとシャルの瞳が開く。
「ミア、」
私を抱きしめる。
「ミアがいなくなったら、俺、生きていけない」
「私も…、それに、」
「なに?」
「シャルから離れられない、きっと」
ちょっと嬉しそうになる。
可愛い。
「嬉しいな、でも、どうしてだ?」
「だって、気持ちよくて、それに、私、こんなに淫らになるんだって、知らなかった…から、」
「素敵だったよ?」
「シ、シャルのせいだもの」
「そう、俺のせい」
満足そうに言う。
それも可愛い。
「そうよ、だって、とっても、気持ちいいんだもの。こんなに、素敵だなんて、思わなかった…、あ、やっぱり、はしたないよね?」
ギュっと私を抱きしめてから耳元で囁く。
「ミア、俺を夢中にさせるだけじゃ物足りないのか?」
「え?」
「そんな言葉聞いたら、もう一度愛したくなる…」
「シャル?」
「いいだろう?」
「けど、」
その時…。
電話のベルがなった。




