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「どうした?」

「え?だって…」

「顔が赤いぞ?」


私はシャルの俺の女発言にキュンとしてる所なんですよ!

それを言葉にするのが恥ずかしいから、ちょっとモジモジが入った感じで答えてしまう。


「だって、嬉しいからだよ?」

「嬉しい?どうして?」

「だって、ね、俺の女だって、言うんだもの」

「参ったなぁ、」


シャルの手が私の頬に触れて、キスされた。


「ミアが可愛いから離せないよ?」


軽いキスも素敵でいい。

甘い言葉と一緒だから、なお、良い。


「これからは会いたい時に会えるな?」

「うん、幸せよ?」

「俺もだよ」

「シャル、ありがとう」

「どうした?改まって?」

「シャルが私を見つけてくれたから。昔と変わらない優しさで接してくれるから。私の為に困難に立ち向かおうとしてくれてるから。だから、私はシャルの側にいるね?」

「ああ、そうしてくれ。ミアがいるだけで俺は強くなれるから」

「うん」


握ったシャルの手は大人の男の人の手だ。

でも、シャルの手だ。




ちょうどその話が終った頃。





マドレーヌとミリタス先輩が戻ってきた。

2人の声が明るい。


けれども…。

ソファに座っている私達を見たとたんに声を上げた。


「あら、」

「まぁ」


2人の息がピッタリだ、仲が良すぎ。

そしてミリタス先輩が忠告する。


「御二方は仲が良すぎです」

「殿下、いくら思い続けてきた女性だからと言っても、ここはオルタンスの屋敷ですわ。もう少し我慢なさらないと」


えっと、イチャイチャしてたのがバレましたか?


「ミリタス、俺は我慢してるぞ?」

「我慢はわかりますけどね、」

「そうですわ、空気が、です」

「空気?」

「ルミーア、なんとなく分かるものよ」

「マドレーヌ?そう?」


マドレーヌは頷いて、ミリタス先輩に話しかける。


「ねぇ、ミリ義姉様。先程話していた通りですわ」

「そうね、あの雛の話ね」


なんだろう?

シャルと私は互いを見てしまう。


「なんだ?雛って?」

「お恐れながら、殿下。お怒りになりませんね?」

「ああ、怒らない」

「じゃ、従兄妹として申し上げます」


え?従兄妹って?


「ミリタス先輩って?シャルの従兄妹なの?」

「そうだが、」

「あら、知らなかったかしら?」

「ルミーア、私言ってませんでしたか?」


知らないよぉ!

そんな爆弾発言を今言いますか?

だから驚いてしまうでしょう!


「知らない、知らないよ?きっとラルもネルソンも知らないと思う」

「まぁ、たいした話ではないですから」

「そんなこと、ないです!」


あの迫力の数々は王家の血が為せる技だったんだ。

物凄く納得。

ああ、腑に落ちる。


尋ねられれば話さないといけない気分になるし。

頼まれればやらないといけない気になるし。

それはちょっとの仕草にしか過ぎないんだけど、だから、凄すぎるんだ。


凄いな、王子にその従兄妹に宰相の令嬢。

ここにはいる人達は階級が違う人達なんだ。

別に自分が合わないって思ってる訳じゃないの。

でも、そこに自分がいることが不思議になるだけなの。



そして、話が逸れていく。




「従兄妹と言いましても、殆ど殿下とはお会いしてませんでしたからね」

「ああ、頻繁に会うようになったのは最近だな」

「そうですね。母は陛下の異母妹ですし、その母親も嫁いでしまうと父の方の親戚としか交流が無かったですから」

「そういえば、お義姉様のお母様は城にも余り行きませんものね?」

「そうね、あそこは、やはり何処か冷たい場所ですもの。あ、ルミーア、貴女には心配無用な話よ?」

「え?」


そして話は雛に戻る。


「貴女の側には殿下がいらっしゃるんですもの。だって、殿下はまるで生まれたての雛ですからね」

「俺がか?」

「そうです、きっと生まれて直ぐにルミーアを見てしまった雛ですわ」

「それは、どういう意味だ?」

「鳥の雛は生まれて初めて見たものを母親と認識するそうです。それが生物であれ、そうでなくても、です」

「その雛は母親と認識した人をずっと慕うんだそうですの」


また、シャルと顔を見合わせる。

でも、なんとなく、わかってしまった…。

もしそうだとしたら、私も雛だわ。

ううん、私の方が雛に違いない。

だってシャルだけを求めていたんだから。


「じゃ何か?俺は雛の様に頭の中にルミーアを刷り込まれているとでも?」

「はい、」

「そうです。でないと、お2人の仲の良さは説明がつきませんもの」

「うーん…」


シャルは考え込んだ。

何をそんなに考え込んでいるんだろうか?


「まぁ、どっちでもいいな。どうであれ、俺はミアに夢中だから」


やだぁ…。

今度は女性同士で顔を見合わせてしまった。


「お義姉様、私達、相当にお邪魔のようですわ」

「そうね、消えた方が良いのかしら?殿下、そうしましょうか?」

「いや、今日はいい」


今日はって、ねぇ…。

間違いなく呆れられている。


そこへ、ヴァンとエドマイア先輩が戻ってきた。


「どうしたんだ、ミリ?」

「ねぇ、エド。私達も結構仲が良いって思ってたけど、殿下には敵わないわ」

「そうかい?」

「ええ、殿下ほど惚気が激しい人物がいると、なんだか負けた気分になるのよ…」

「あら、お兄様達はいいわ。私なんて相手もいないもの。負けたどころか、遥か彼方に置いてきぼりにされたみたい」


シュンとしたマドレーヌをミリタス先輩が慰めた。


「大丈夫よ、マドレーヌ。貴女は貴女が好きになった殿方と結婚すればいいんだから」

「え?それって、いいのかしら?」

「もちろんだよ。私の愛しい妹には誰よりも幸せになって貰いたいんだ」


マドレーヌの顔が輝いた。

それは、恋愛する自由を確保した喜び、なんだと思う。


「マドレーヌのことは、俺も保証する。恩人に幸せになってもらいたいからな」

「うん、私も」


戸惑いながら言葉にするマドレーヌ。


「あ、ありがとうございます。まさか、皆様みたいに恋をして、好きな方と結婚できるなんて思ったこと、無かったですから…」

「大丈夫!マドレーヌ程綺麗な人を知らないもの」

「そうです。殿方が放っておきませんからね」


真っ赤になる。

可愛い。


「ただ、この私の許可は必要だけどね」


エドマイア先輩が仰々しく言っちゃう。

妹の事が好きなんだな。

家のダニエル兄様とは違う。

兄様は私のことを子供扱いして、からかってばかりだもの。

でも、…、私の事を心配してくれてるのは分かってる。

元気かな?


あ、ミリタス先輩がエドマイア先輩に釘を刺す。


「エド、程ほどにしないとマドレーヌに嫌われるわよ?」

「ミリ…」


私達は笑ってしまった。

なんかマドレーヌの瞳がキラキラしてる。


「では、恋愛初心者の私に色々と教えて下さいませ、ルミーア?」

「私も初心者だよ?」

「いいえ、幼い頃からの想いを叶えたのです。ベテランです」

「そう?」


思わず隣のシャルを見てしまう。

うん、と力強く頷いた。

シャルが言うなら、そうなんだと思うことにする。





そうだよね、ずっと好きなままだったんだから。





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