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そして、誰も居なくなり…。
空気が変わっていく。
「ミア?」
なんだかシャルの声が熱いよ?
「やっと2人になれた」
「うん」
「ミアは綺麗だ」
立ったままで、抱きしめられた。
シャルの匂いに包まれる。
それから手が私の頬に触れて、私はシャルの瞳が潤んでいることに気付いた。
私を見詰める深蒼の瞳はいつだって愛に溢れている。
「愛してるよ」
言葉が終ると、直ぐにシャルの唇が私の唇に触れる。
「、?、」
今までとは、違う。
なんだろう、熱い…。
「…、っ!」
それはとても深いキスなんだ。
私の中に入り込んでくる、理性が飛んでしまうほどの熱さで。
その熱に、私は溶けてしまう。
立てない…、崩れそうな私を抱かかえたままで、続く。
「だ、ぁ…、」
時々、息するためだけに離れて、また、キスされて、。
シャルにされるがままに、長いキスを続けてしまう。
体中に衝撃が走って、シャルの腕の中にいることすら忘れるくらいに感じている。
「あっ、っ…シャル…、」
気を失いそうになってしまった。
もうシャルの腕に抱えられているだけの私。
やっと、ゆっくりと離される唇が囁く。
「愛してる、ミア」
私は放心状態だ。
心臓がバクバクいってる。
なんだろう、腰が熱い。
顔が熱い。
私はシャルにもたれ掛かる。
ただシャルの胸に顔を埋めて、息を整えるのに必死になってる。
「大丈夫か?」
その声に一言答えるのが精一杯。
「ぁ、だめ…」
「いいなぁ、うん、いい」
なに?その満足した声は?
「え?なにがいいの?」
顔を上げてシャルを見上げた。
凄く満足気な顔してるんだから、もう。
「何って、ミアが色っぽいから」
「もう…、だって、」
「うん?」
「こんなに凄いキス、初めてだから、心臓がバクバクしてるの」
「そうか?じゃ、これからは毎日しよう?」
「え?どうしよう…」
「なに?」
「もたないかも知れない、」
急にシャルに抱き上げられた。
「それは大変だ。なら、一緒に住もう?ミアが倒れても俺が直ぐに看病できる」
そういいながらソファに私を下ろしてくれた。
私達は大きなソファーに腰掛けた。
シャルの手が私の腰に回る。
ドキドキが続く。
「一緒なら何時だってキスが出来る…」
まただ、あん…。
どうしよう、気持ちいい。
理性、理性、そう、理性!
「シャル、だめ、これ以上、ね?」
「なら、今日から一緒に住もうよ?俺と同じ部屋で構わないだろう?」
「もう、話が飛びすぎ!」
「あはは…、だけど、」
「なに?」
「今日はこれで我慢するけど、俺はミアを抱きたい。いつでも構わないから」
シャルはいつも直球だ。
嬉しい。
だから素直に答える。
「うん、いいよ」
シャルに抱かれるなら、それでいいから。
今度は困った顔になる。
「どうしたの?なんだか困ってるみたい?」
「そうだよ。ミアは素直だから、困ってしまうんだ。そんな返事を聞いたら我慢出来ないだろう?」
「あ、そうか」
「まぁ、いいよ。今日はさすがにいきなりだものな」
「そうだね」
そんな顔も素敵だから甘えてみた。
だって、素敵だったもの…。
「ねぇ?」
「うん?」
「もう一回、キスして?」
驚いた顔になった。
けど、直ぐに笑顔になる。
「参ったな、強請るのも上手だ…」
そう言った瞳が閉じられる。
私も目を閉じて、キスを交わした。
もの凄く感じる。
理性を保つって大変だ…。
キスが終っても、私達は互いの心臓の音を聞いている。
激しく打つ鼓動にお互いに好きなんだって感じる。
嬉しくてたまらない。
「ねぇ、私ってこれからどうなるの?」
聞きたかった。
シャルの側にいられるのは嬉しい。
けど、その為にシャルが物凄く無理をするのなら、…。
それは嫌だから。
シャルはゆっくりと言葉を発した。
「とにかく、父上に認めてもらいたいって思ってる」
「そう、だね」
「ああ、そうしないと先には進めそうにないからな」
無理やりに走っているんじゃないって思う。
少し安心した。
「父上はこの国の要だからな」
シャルの言葉は優しく響いた。
陛下のことを尊敬しているのが伝わる。
「陛下のこと、尊敬してるのね?」
「もちろんだ。ミアと引き離されたのはわだかまりとして残っているけど、それでも俺の母が愛した男性だ。それだけ凄い人だと思っている」
「そうだよね」
ネルダーで亡くなったマリアーヌ様が不幸だったなんて思いたくない。
寂しくはあったのだろうけど、2人の間に生まれたシャルは確かに愛されていたもの。
「だから、父の跡を継ぐ」
シャルディ殿下としての決心だ。
「ミア、俺を見ていてくれ。俺が何をするか、何をしたらいいのか、一緒に見て欲しい。だから、これからはどんな場所にも連れていく。俺と一緒に考えて欲しいから」
「いいの?私は何も分からないわ」
「ミアなら大丈夫。だって、俺のミアだから」
なんだか、自慢げだ。
「それって、私を信じてくれてるってこと?」
「そうだ」
嬉しい。
そんなに信頼してくれてるなんて、嬉しい。
「わかった。私も努力するわ」
「そこでだ、ミアにお願いがある」
「なに?」
「俺の婆様の所へ顔を出しに行こう」
「え?」
「エリザベス王太后だ。聞いたことぐらいあるだろう?」
固まる。
知ってるよ、知ってるに決まってる。
「もちろんだよ。エリザベス様はこの国の母君って言われているんだよ?知ってて当然。だけど、シャルのお婆様かもしれないけど、私なんかがお目通りしてもいいの?」
「俺の婆様なら、いずれはミアの婆様になる。心配いらない」
「う、うん…」
「どうした?」
「シャルのいう事なら大丈夫と思うんだけど、余りにも世界が違ってて…。散々みんなに言われてきたのに、分かってなかったんだなってね。呆れてるの、自分に」
「ミア、」
思っていた以上にシャルの居る場所は違いすぎる。
でも、だ。
「でも、大丈夫。シャルが大丈夫って言ってくれる。だから大丈夫に決まってるもの」
「ミアのそんな所が、好きだな」
「そう?」
「そうだ、俺を信じてくれるとこ」
「当り前だよ、シャルを愛してるもの」
急にシャルの瞳が潤んでいく。
あ、その気になった?
「ミア、」
キスされた。
「俺の側から離れないでくれるか?」
「もちろんよ?」
「ずっとだぞ?」
「うん、ずっと」
私からキスした。
「約束だ」
シャルがキスしてくれる。
何度もだ、そして、段々深くなっていく…。
ヤバイ、。
手が触れるから、髪が乱れちゃう…。
「ぁ、シャル、ぅ、ここまでにしよ?」
「ミア…やだ、」
「だって、ここ、エドマイア先輩の…、」
「あ、そうだな、うーん、」
「シャル?」
私から離れたと思ったら、急に頭をクシャクシャするから、びっくりする。
「こうなったら、一日も早くミアと一緒に暮らしたい」
そこへ行くの?
あ、でもいい機会だ。
「本当に私を妃扱いするつもり?」
「当然だ」
「でも、色々と大丈夫なの?」
「その位の事、出来ないと王子でいる意味がない」
私は嬉しかった。
シャルが私の事、真剣に考えているんだから。
何よりも、だ。
「ありがとう」
「ああ」
そして独り言の様に呟いた。
「だから、早く認めさせないと…」
誰に?
けど、私は聞かなかった。
「ミア?」
「なに?」
「これからは俺と出掛けたり人と会ったりする事になる。だから、ケンフリットは休学してもらうかも知れない」
「わかった」
ケンフリットに入学したのは、シャルに会いたかったからって理由だった。
だから未練は…、ない。
ううん、それは嘘だ。
少しはある。
だって頑張った結果だから。
でも、シャルの側にいられるなら、仕方ないって思う。
「早く周りにもミアのことを知らしめないといけないし、な」
「知らしめる?」
「ミアが俺の女だって、さ。でないと不安だ」
ちょっと!俺の女、だって!
なんか、ズッキュン、きちゃいました。




