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沢山食べましたわ!
ラルにつられて、生まれて初めて、あんなに沢山の料理を頂きましたわ。
ドレスの紐が切れそうです…。
明日になって太っていたらどうしましょうか?
ドレスを直すのも大変そうですもの。
なので、私はラルの提案に賛成して歩いて帰りました。
学院の側にある木々はもう直ぐ紅葉が始まりそうです。
秋は運動するにはピッタリの季節です。
「いい運動になりますね?」
「え?これが運動ですか?」
「あら、ラルにとっては散歩かもしれないけど、私に取っては運動です」
「マドレーヌ、それはいけません。何でもいいですから、運動をするべきです!」
「え?」
いきなり熱くなったラルです。
「あ、すみません。私ったら熱くなってしまって…」
「いいんですの。それより、ラルが私に運動を教えて下さいませんか?何から始めればいいのか分からないですから」
「そうですね…、じゃ簡単な準備運動からでやってみませんか?」
「ぜひ!」
今までやったことがない事にチャレンジです。
気持ちが軽くなります。
やはり1人の寮にしなくて良かったです。
2人とミリタス先輩…、ミリ義姉様がいてくれて良かった。
あ、寮が見えてきました。
「あのお2人、どうなっているかしら?」
「そうですね…、うまく行っているといいのですけど?」
「見てみますか?」
私達は悪巧みをしてる仲間の様に笑い合いました。
「では、参りましょう?」
ルミーアが待つ寮へと帰ります。
玄関に入ってドアを開けると居間です。
「ミリタス先輩!」
「あら、お帰りなさい」
ネルソン先輩とミリタス先輩が居間で寛いでいます。
けれど、ルミーアがいません。
まだ、体調が悪いのでしょうか?
「お帰りなさい、楽しかったのかしら?」
「はい、ミリタス先輩。ラルのお陰で楽しみました」
私はミリタス先輩の隣に座りました。
その時さりげなく私の耳元で先輩が囁きます。
「で、上手く行ったのかしら?」
あのことです。
殿下とのことです。
一瞬言葉が詰まりました。
何ででしょうか、ハプニングのせいなんでしょうか?
なんとなく言えません。
「その話はお兄様から…」
「そう、わかったわ」
私達は、直ぐに平静を装います。
多分、ラルにもネルソン先輩にも聞かれてないと思います。
だって、ちょうどラルがネルソン先輩に話しかけているところでしたもの。
「ネルソン先輩、ルミーアは?大丈夫ですか?」
「ああ、ミリタス先輩のお陰で少しは元気なったみたいだ」
嬉しそうです。
本当にルミーアのことが好きなんですね。
「それは良かったです、きっとルミーアもネルソン先輩に送って頂いたから安心できたんですわね」
「そうね、そうかもしれないわ。ネルソン、頑張ったわね?」
「え?はぁ…」
相変わらずミリタス先輩は煙に巻くのが上手です。
ネルソン先輩が私を見みます。
「それでなんだけど、マドレーヌ。実は君のお兄さんのところに俺の服を置いてきてしまったんだ。取りに行きたいんだけどいいかな?」
「まぁ、それは大変です」
お兄様ったら、いつもならそんなミスなんてしないんですけど…。
「直ぐに、別宅に連絡して持ってこさせますわ」
私は学院の側の別宅に電話しました。
家の侍従が直ぐに持ってくるとのことです。
伝えたところ、ネルソン先輩も安心したみたいでした。
ちょっと口調が優しくなります。
「この格好じゃ、俺、ピエロみたいだろう?」
「いいえ、そんなこと!」
「そうですよ、似合ってます」
「そうかな、慣れないんだよな、正装…」
「けど、ネルソン先輩の正装が見れたって喜んでいた人もいましたよ?」
ラルの言葉に、ちょっとネルソン先輩がムッとしました。
「あ、余計なこと、言いました。ネルソン先輩、すみません」
ラルが真剣に謝るから、ネルソン先輩も慌てて謝ります。
「いいよ、俺も大人げなかったから、」
「ラル、ネルソンはねルミーアのことが絡むと歯止めが利かないみたいよ?気をつけた方がいいわ」
「ははは…気をつけます」
ラルが呆れるのも分かります。
だって、分かり過ぎです、ネルソン先輩…。
暫くしてルミーアが降りてきました。
顔色が良いみたいので安心です。
服装もいつもの寛げるワンピースで可愛いです。
やはり笑顔のルミーアはとっても可愛い人です。
なんでしょう、守ってあげたくなるような雰囲気があって、けど、その割には言う事はちゃんと言いいますし、そう、釘付けになるような女性なんです。
ネルソン先輩が心配になって、こうして側にいるのが良くわかります。
一途で素直なところが彼女のいい所。
友人としてとても信頼出来るように感じてます。
「心配掛けて、ごめんなさい」
皆に頭を下げて謝ってくれます。
「いいから、もう言うな」
ネルソン先輩は、すばやくそう言うのです。
この2人が共有しているモノは何でしょうか?
「でも、」
「それよりも、暫くここに来られなくなる。いいか?」
「いいけど、どうして?」
「試合が近いんだ。練習で忙しくなるからな…」
「なら仕方ないね。頑張ってね?」
ラルが笑っています。
「なに?ラル?」
「その会話って恋人同士の会話ですよ?」
「そうね、」
「そうですわ。お2人は本当に付き合ってないんですの?」
本当にその通りです。
これだけ仲の良い会話をする関係だというのに友人だなんて。
なのにです。
なぜかルミーアは焦ったように、怒ってしまいました。
「マドレーヌ!付き合ってなんかない!」
「そうだとも、俺にだって好みがあるんだから」
ネルソン先輩までも。
きっと好きな子に意地悪するタイプですね。
損な性格です。
ルミーアは意地悪そうに先輩に告げます。
「ネルソン、もう帰っていいよ」
「なんだよ、けどな、まだ服が来てないからな」
「もう!」
それから暫くして服が来て、ネルソン先輩は正装を着崩した格好で帰って行きました。
ルミーアは、ネルソンは意地悪だってブツブツ言ってます。
「もう、ネルソンたら、ね?なんか私に意地悪でしょ?」
ラルと私は顔を見合わせました。
「そう?」
「どうでしょうか?」
「もう、2人とも!」
けど、私達は笑ってしまいました。
それを見ているミリタス先輩も、です。
私達は、ルミーアとネルソン先輩の共有しているものについて、知らない素振りをしました。
だって、友人ですものね。




