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98 プレゼント


「「ごちそうさまでしたー!!」」


最後に娘たちが食事を終えたところで全ての料理が腹の中に消え去り、パーティーはひと段落ついていよいよクライマックスに差し掛かろうとしていた。


「さて、美味しいご飯も食べたことだし、アレを出しましょうか」

「アレ…?」


ノアは誕生日パーティーで料理の後に出す物とは一体何なのだろうと考えるが、その最中に答えを目で知ることとなる。


「もしかして…プレゼント…?」

「正解っ!!」


家族たちは各々が隠していたプレゼントを持って来て、ノアの前で一列に並んで左から順番に一歩前に出始めた。


「じゃあ、私からプレゼントを渡しますね」


一番左に立っていたのはいつもよりもテンションが高めのセリーであって、彼女はニコニコとした笑みを向けながらプレゼントを差し出して来た。


「ノア、お誕生日おめでとうございます。これからも末永くよろしくお願いします」

「ありがとう。こちらこそこれからもよろしくな」


セリーから差し出されたプレゼントを受け取り、その中に込められた気持ちの重さを実感する。


「これ、何が入ってるんだ?開けてもいいか?」

「んー…ダメですね。少し気恥ずかしいですから、後でお願いします」

「(だってプレゼントとは別にラブレターが入ってるもんね)」

「ん?」


セリーは目の前でプレゼントを開けられるのが恥ずかしくてこの場での開封を拒んだのかと思えば、どこからか飛んできた野次のせいで理由が丸わかりになってしまった。


すると当然セリーはアメリアに怒りの目を向けて抗議をしようとするが、アメリアは咄嗟に視線を逸らして知らないフリをしてなんとか乗り切っ__


「…アメリアちゃん、後でお話があるので私の部屋に来てください」

「え!?ちょっと待ってごめんね!!今のはほんの冗談のつもりで…!!」


アメリアは全然セリーの視線からは逃れられておらず、彼女はどうやら今晩行方不明にされるようだ。


いや適当な推測だけれども。


でも実際それぐらいやりそうな目つきをしていて、ここまでくると流石にアメリアの言葉が真実であることは明らかであった。


(ラブレター…楽しみだな)


あえて言葉には出さずワクワクは心の中にしまっておいく。


でないとこちらもいつか行方不明にされそうだ。


「全く…本当に困った人です…」

「まあまあ、そういうところがアメリアのいいところなのだからいいじゃない」

「それはそうなんですけど…なんだか私だけが暴露されていて少し腹が立ちます」


セリーは今もしっかりと拗ねている様子で、アメリアの方を向きながら頬を膨らませ、次にこちらを向いてそのまま近づいて来てこっそり耳打ちをし始めた。


「(実はアメリアちゃんのプレゼントの中には愛の言葉を綴った__)」

「ちょっと待って!!??言わないで!!?」


やはりというべきかアメリアはセリーの言葉を全力で妨害し、なんとか最後まで言わせないことに成功した。


ま、プレゼントの中に何が入ってるのかは完全に理解したけど。


「あら、私も言われたんですから構いませんよね?やっていいのはやられる覚悟がある人だけです」

「ぐぬぬ…!」


二人は珍しく子供のように言い争っていて、それを子供の隣から見ていたフェリスは二人に呆れたような視線を向けていた。


「はぁ…あなたたち、子供の前でそんなに言い争わないの。プレゼントの中に何を入れるかは私たちで決めたことなのだから今更そこで喧嘩をする必要はないわよね?」

「う…」

「その通りです…」


フェリスの発言を聞いた二人は先程とは態度が反転して小さく気をつけをして反省の意を身体で表現し始めた。


「「ごめんなさい…」」


二人は同時にフェリスに頭を下げ、それを見たフェリスはやれやれといった風に息を吐き、手を叩いて場の空気を一変させた。


「さて、この話はここで終わりにして。アメリア、あなたがプレゼントを渡す番よ」

「う、うん…!」


先程のこともあって少し緊張しているアメリアがオドオドしながら一歩前に進んできて、いつもと変わらない綺麗な笑みを浮かべてプレゼントを差し出して来た。


「ノア、お誕生日おめでとう!あなたが産まれて来てくれて本当によかった!ありがとう!」

「こちらこそありがとう。アメリアも、産まれて来てくれて本当によかったよ。これからもよろしくな」

「うんっ!!」


さっきまで反省の色を示した人物はどこへやら、アメリアはいつも通りの顔色を浮かべていた。


それに対してフェリスはまた呆れたようにため息をつき、やれやれといった感じの目線を向けていた。


「ホント調子がいいんだから…」

「さ!次はフェリスちゃんだよ!」

「…」


アメリアはなんとか勢いで誤魔化すつもりのようだがそのことはしっかりとフェリスにバレているようで、彼女はアメリアにたいして思い切りジト目を向けた。


「さあ早く!ノアが待ってるよ!」

「…はぁ…」


セリーはもう諦めたようにため息をついた後、こちらを向いて綺麗な笑みを溢した。


「ノア。お誕生日おめでとう。これからも私たちと一緒に幸せな毎日を過ごしましょうね」


フェリスはプレゼントを差し出して来て、ノアはフェリスの目を見つめながらそれを受け取った。


「ありがとう。これからも一緒に幸せな日々を送っていこうな」

「ええ」

「で、ちなみになんだけどこれ今から開けてもいい?」

「それはダメ」

「ですよね」


淡い期待を胸に質問をかけてみたが、やはり否定を喰らってしまった。


流れでなんとなく察していたからいいけど、本当に三人はこの中に一体何を仕込んだんだ…。


(アメリアとセリーの口ぶりからして三人とも手紙を入れてるんだろうけど…別に書くことなんてなくないか?)


三人は普段から容赦なく愛の言葉を囁いてくるため今頃書き記すようなことなどないと考えたが、結局真実が何なのかは不明であり、ノアは考えることを放棄した。


「じゃあこれは後で開けるよ。楽しみにしてる」

「う、うん…!」

「期待していてくださいね…っ!」

「ああ」


謎に二人は恥ずかしそうに視線を逸らして来たのだが、そんなことをされると余計に何が書かれているのか気になってしまう。


だが考えたところで答えがわからないことは明白なため、ノアはパーティーを次の段階に進めるように口を開いた。


「じゃあ次は…子供たちか?」

「ええ」

「最初はアノスですね」

「うん」


アノスは胸に手を当てていて少し緊張しているように見えたが、数秒後に決心したように一歩踏み出して来てプレゼントを両手で前に突き出して来た。


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