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82 妻の本性


あの後もアメリアとセリーからはニコニコと笑みを向けられ続けたが、フェリスが出てくるまでの辛抱だと思ってなんとか耐えていると、ようやくフェリスがテントから姿を現し、恥ずかしそうに視線を逸らしながらこちらに近づいてきた。


「どうかしら…?私の水着」


フェリスはピンク色の少しヒラヒラがついているビキニを着用していて、フェリスの素晴らしい身体のラインが綺麗に露出されていた。


そのためノアはフェリスの全身をガン見してしまい、フェリスの頬を真っ赤に染めさせてしまう。


「は、恥ずかしいから…そんなに見ないで…?♡」

「あ、ああ…ごめん。似合いすぎててつい見惚れてた。というか俺の予想通りの水着だな」


フェリスの水着をガン見して気づいたのだが、なんと昨晩ノアが予想したフェリスの水着はまさに今彼女が着用しているもので、ノアは何とも言い難い高揚感に包まれた。


「うん、フェリスの長い手足と綺麗な白い肌がよく見えててめっちゃ可愛いな。それにくびれがはっきりわかるぐらいに身体を完璧に仕上げてて正直めっちゃ最高」

「…!?そ、そうかしら…?♡」


フェリスは手で顔を隠して恥ずかしがるが、あまり身体を隠そうとしていないところから喜んでいることがわかるため、ノアはずっとフェリスの水着姿を眺め続けた。


その途中でアメリアから「私のももっと褒めてよ!」といった文句が聞こえてきたりしたが、今はフェリスに夢中になっているためアメリアの言葉は右耳から左耳に通り抜けていってしまった。


「ふふ、やはり水着にはその人の本性が現れますね」


まだ自分の水着を曝け出していないセリーはどこか余裕そうにそのような言葉を漏らし、ノアはその言葉に大きく頷いた。


「言えてるな」

「そうかな?」


アメリアやフェリスが疑問そうな表情でこちらを眺めてくるのを見て、ノアとセリーは二人の水着を見ながら説明をし始めた。


「例えば、アメリアちゃんの水着は紐が多めの大胆なビキニですよね?そういう大胆な水着を着る人は二種類に分かれるんです。単純に自分の身体を見せびらかせたい人と、好きな人の為に頑張って露出を多くする人。この二つの場合、アメリアちゃんはどちらに当てはまると思います?」

「十中八九両方だろうな」

「その通り…ではなくて後者の方ですね」

「そ、それはそうだね…」


セリーの解説を聞いてアメリアは納得して頷くが、セリーの話はここでは終わらない。


「ですがアメリアちゃんは基本的に好きな人の前では恥ずかしがり屋さんになるタイプなんです」

「え、そうなの?」

「はい。水着を選ぶ時だってアメリアちゃんはずっと悩んでいましたから。大胆な方が喜んでくれるかな…でもそれは恥ずかしい…と」

「え…」


ノアは普段のアメリアの行動を思い出し、アメリアが恥ずかしがり屋なのかを考えた。


………。


なわけねぇだろ。


いつも変な発言をし始めるのは大体アメリアだし、一番夜のお誘いが多いのもアメリアであった。


そのためノアはセリーの発言に怪訝そうな表情を向け、その真偽を確かめようとした。


すると先程まで正面で恥ずかしがっていたフェリスがさらに近くまでやってきて、セリーの言葉が確かであることを説明し始めた。


「アメリアってノアの前ではいつも大胆だけれど、実はあなたがいないところでは結構純粋な女の子なのよ?」

「そうなのか?」


なんとなく感じ取ってはいたが、まさかそこまで可愛らしい女の子だとは思っておらず、思わずもう一度アメリアの水着を見回してしまう。


アメリアはその視線に気づいて頬を赤らめ、苦し紛れの否定の言葉を放った。


「そ、そんなことは…」


仲間であるはずの二人から一番暴露されたくない人に暴露をされてしまったため、アメリアは顔を真っ赤に染めて身体を後ろに向けた。


その反応を見てこれが真実であるとわかり、ノアは意外そうにアメリアの後ろ姿を眺めた。


「マジか…」

「こんな風にいつもは恥ずかしがっているんですけれど、今回は折角の海デートだからと頑張って大胆な水着にしたんですよ?すごく可愛らしいと思いませんか?」

「ああ、滅茶苦茶可愛いな」

「好きな人のためならなんでもするっていうのがこの子の本性よね」

「うぅ…こっち見ないでぇ…」


なるほど。まさか水着一つにここまで深い意味が込められていたとは。


ノアは水着の素晴らしさを再度認識するが、それよりも自分のために頑張ってくれたアメリアに対する愛情の方が勝り、気づけば自然とアメリアを抱きしめていて。


「!!!???」

「ありがとなアメリア。俺のためにたくさん頑張ってくれてたんだな」


ノアはアメリアの背中で優しく囁き、アメリアの耳が赤くなるのを見つつ話を続けた。


「俺だってアメリアのためなら何でもするつもりだから、何かあったら遠慮なく言ってくれよ」

「う…うん…」


アメリアは背中越しに頷き、そのまま逃げるようにしてノアの腕から離れて行った。


「ごめん…!先に海行くね…!」

「あ、ああ」

「気をつけてくださいね」


アメリアは早足でこの場を去っていき、残された三人はアメリアに微笑ましいものを見る目を向けた。


「恥ずかしすぎて逃げちゃいましたね」

「普段なら頑張って我慢しそうだけれど、今回はノアがいるから我慢できなかったようね」

「はは…それ聞くと余計にアメリアが可愛く見えてくるわ」


アメリアの背中を見送った後、今度はフェリスに目を向けて今一度水着を眺め始めた。


「で、じゃあフェリスの水着には一体どんな意味があるんですか?師匠」

「それはですね…」

「ちょっと、私の話はいいから…」


突然自分の方に話が切り替わって慌てて二人のことを止めようとしたフェリスであったが、セリーにそれは効かず、今までにないほど楽しそうに笑いながら話し出した。


「まずは水着のヒラヒラの部分をご覧ください。これにはどんな意味があると思いますか?」

「ん〜…可愛く見せたい…とか…?」

「半分正解です」

「じゃあ残りの半分は…露出を抑えるため…?」

「正解です」

「う…恥ずかしいわ…」


二人が楽しそうに話している反面、フェリスは顔を紅潮させて恥ずかしがっていて、それに気づいたノアはさらにイタズラをしたくなって口が達者になり始める。


「つまり…自分のスタイルを見せるために大胆なのにしてみたけどそれが恥ずかしすぎて少しヒラヒラな水着を選んだと」

「正解です。やっぱりノアはフェリスちゃんのことをよくわかってますねっ」

「まあ伊達に長く婚約者やってたわけじゃないからな。昔は毎秒フェリスのことを考えてたもんだよ」

「毎秒…!?」


ノアの衝撃発言に対してフェリスは身体を大きく跳ねさせ、驚き半分恥ずかしさ半分といった目でこちらを見つめてくる。


「じゃあもしかして…私でそういうことも想像してたの…?」

「そういうこと…?」


何を言っているのかわからずフェリスに疑問を返すと、彼女は視線を逸らしながら小さく声を上げた。


「え…えっちなこと…とか…」

「ん…!?いやそれは…」


ここで否定したら逆に変な誤解を招きそうであるため、ノアは何もできずに黙り込んでしまった。


その反応を見て質問を肯定されたとみなしたフェリスは、とうとうこちらに背を向けて背中越しに呟き始めた。


「…やっぱりあなたはえっちなのね…」


「違うってぇぇぇ!!!」と言いたいところだが、そう言えば「じゃあ誰を想像しながらしてたの?」と返される気がしたため、ノアは何も返さずにただ黙っていた。


そんな初々しいバカップルのような光景を目の前で見せつけられているセリーは、少し呆れたように笑みをこぼした。


「やはり、大好きな人の前ではえっちになってしまうのがフェリスちゃんの本性ですね」


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