81 水着
翌朝、朝食を食べ終えた一同は水着に着替える順番の話し合いをし、まずはノアがテントの中で水着に着替えた。
「終わったぞ〜。次どうぞ」
「「「おぉ…」」」
ノアが普通にテントから出て三人のところに近づいていくと、三人はノアの全身をガン見し始めた。
「いいねっ、その水着」
「そうか?ありがとう」
「というか、昨日の予想は的中かしら?」
「確かに、コレなら的中と言ってもいいですね」
「やったー!」
三人はノアの水着を見て昨晩の予想が的中していることに気づき、喜びの笑みを浮かべた。
「やはり私たちはノアのことをよくわかっているいいお嫁さんですねって」
「そうだねっ!」
「旦那さんもそうだと嬉しいのだけれど…どうかしら?」
「自信はある。多分…」
ノアは少し追い詰められた気がしてつい明後日の方向を向いてしまい、自信を失っていることがバレてしまう。
「ふふ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよっ。仮に予想が外れていたとしても私はあなたのことを愛していますから♡」
「おぉ…どさくさに紛れてノアにアピールするなんて…私も愛してるよっ!♡」
「わ、私だって愛してるわよっ♡」
「お、おお…ありがとう…」
なぜか話の方向が逸れてしまうが、嫁が可愛いのでよしとする。
「じゃあそろそろ着替えてくるねっ。ノア、期待して待っててねっ♡」
「ああ」
と、ついにアメリアがテントに入って水着に着替え始め、ノアの胸の鼓動は高まっていく。
「どうですか?アメリアちゃんの水着予想は当たりそうですか?」
緊張しながらテントを見つめていると、隣にいたセリーが声をかけてきて、ノアは正直な気持ちを話した。
「多分だけど…アメリアの水着予想は割と当たってる気がする」
「ほお、その理由は?」
「まあ…アメリアは分かりやすいから…」
「確かにそうですね…」
セリーは苦笑いを浮かべながらノアの言葉を肯定し、そのまま三人で話をしつつアメリアの着替えを待った。
そして数分後、ようやくアメリアは着替えを終え、まじまじとテントから出てきた。
「ど、どうかな…?」
アメリアは手で軽く身体を隠しながら頬を赤く染め上げていて、滅茶苦茶恥ずかしがっていることがわかった。
だがそれもそのはずで、アメリアはノアが予想していた通りの大胆で布面積が小さめの水着を着ているのだ。
色は完全に予想通りの赤色で、特にヒラヒラとかもなくただただ紐が多い水着であり、ノアは素直にアメリアの姿に見入ってしまう。
「滅茶苦茶可愛いな…。うん、アメリアらしい良い水着だ」
アメリアの水着はは肌の露出が大きいため、勿論のことながらアメリアの素晴らしく大きいものなども強調されていた。
それも含めた良い水着発言であったが、それはもちろん心の中にしまっておいてアメリアの反応を窺う。
「そ、そうかな…?♡」
どうやらアメリアは喜んでくれているようだが、やはり恥ずかしいらしくあまり目が合わない。
まあこっちが身体を見まくっているのもあるけど。
まあそれはどうでも良いとして、今はアメリアが喜んでくれたことに素直に安堵する。
「ああ。マジで最高の水着姿だ」
「やった…♡」
「ふふ、よかったですね」
「最後に大胆な方にしておいてよかったわね」
「ちょ、それは言わないでぇぇ!!!」
どうやらノアの予想は最初から最後まで当たっていたらしく、それを暴露されたアメリアは真っ赤に顔を赤くして両手で顔を隠した。
「まあまあ、そこまで恥ずかしがらなくても」
「だ、だってぇ…」
「あはは…ごめんなさいね…?」
「うう…年上の威厳がぁ…」
元から威厳もクソもないアメリアだが、なぜか悲しそうに涙を流す素振りを見せていて、三人はそれに苦笑いを浮かべる。
どことなく気まずい空気が流れ始めたところで、少し責任を感じたフェリスはこよ空気を打ち破るべく動き始めた。
「じゃあ…私着替えてくるわね」
「おお…いってらっしゃい」
未だ下を向いて悲しそうにしているアメリアを背に、フェリスはテントに入って行った。
「フェリスちゃん、意地悪だヨォ…」
「あはは…まあ良いじゃないですか。ノアのために色々悩んだ挙句ちょっぴり後悔するところがアメリアちゃんの可愛いところなのですから。私的には、存分にアピールした方がいいと思いますよ?」
「そんなの恥ずかしいよぉ…」
「と、言っていますけど、旦那さん的にはどう思いますか?」
「え」
セリーがアメリアのことを励ましているのを微笑ましく眺めていると、なぜかこちらに振られてしまったため、ノアは考える間もなく話し始めた。
「まあ…それがアメリアの持ち味だからな。そういう可愛いところも俺はたくさん知りたいと思ってるよ」
「ですって」
「うう…」
やはり恥ずかしいのか、アメリアは顔を下に向けたまま悶えている。
だがしかしこちらのことをチラチラと見るようになってきたため、どことなくアメリアが喜んでいることを察し、さらに彼女への愛情が湧き上がった。
「!?ど、どうしたの…?」
気づけばノアはアメリアの頭を撫でていて、アメリアはそれに驚いたように反応した。
それに対してノアはしまったという感情を持つが、それでも手を止めない。
(…つい可愛すぎてやっちまった…)
ノアはそのように反省をするのだが、思ったよりもアメリアの反応が良いため反省の二文字を消し去って増強にシフトチェンジした。
「アメリアは可愛いなぁ。マジで俺のモンにしたいわ」
半分冗談のつもりでそのような発言をしてみてアメリアを笑顔にさせようと考え彼女の表情を窺ってみたが、なぜか疑問そうな目でこちらを見てきていて。
「え?違うの…?」
「ん?ドユコト?」
「ほら、私はさ…もうとっくにノアのものなんじゃないの…?♡」
「っ…!?」
そういえば、前にそんな話をしたようなしてないような…。
(いや過去の何してんの!?)
過去にそんな発言をしていれば一生引きずられるのはわかっているはずなのに、ノアは過去に過ちを犯していた。
そのことに対して焦りを覚えて急いで視線を逸らすが、その視線の先にセリーの顔が現れて。
「どうして目を逸らすんですか?ちゃんとあなたのアメリアちゃんを見てあげてください♡」
「……」
逃げ場はない。そう悟ったノアは硬い首を動かしてアメリアの方に顔を向けた。
「…まあ結婚してるから…そういう考え方もできなくはないな…?」
「うんっ…♡私は一生ノアのものだからね…♡」
ここにきて満面の笑みを浮かべるアメリアだが、形は違えど彼女の笑顔が見れたので良しとしよう。
あんまり状況はよろしくないけど。
「でもその代わりに…ノアも一生私のものだからね…?♡」
「ん!?…ま、まあ…結婚してるしな」
「やった…♡」
「じゃあ私のものにもなってくれますよね?♡」
「え?」
コレで一件落着!かと思えば、今度はセリーが目に♡を浮かべながらどこか恐ろしさを感じる笑みを向けてきていた。
「私たちだって結婚しているんですから、当然のことですよね?♡」
「え…?」
ノアの脳内は困惑で埋め尽くされるが、こうなったら肯定するしかないということだけは反射的に理解していたため、気づけば勝手に首が縦に振られていた。
「ああ…そうだな」
「ふふ…ありがとうございます♡その代わりに、私も一生あなたのものですからね…?♡」
両隣にいる世界一可愛い妻たちはこちらに綺麗な笑みを浮かべてくれているが、それは素直に喜べなかった。
だって…今普通にフェリスの着替え待ってるだけだもん!!!
なんだかフェリスを仲間外れにしている気がして妻たちの言葉に素直に喜べないのがノアという世界最強の剣士であった。




