80 大予想大会
「そしてあとは繰り返し練習すれば…」
「…なあ、そろそろ眠くないか?」
あの後もセリーは意欲的に魔法を使おうと努力をし、ものの一時間で十個の魔法を覚え、次は難易度の高い魔法を覚えようとフェリスとアメリアに教えを乞うていた。
だがしかし気づけば夜も遅くなり始めていたため、魔法が使えなくて教えることができないノアはもうすっかり眠気が限界を迎えていた。
そのことを目をこすりながら三人に伝えてみると、三人はハッとした表情でこちらを向いてきた。
「あ、そうだね…」
「もう夜も遅いし、そろそろ眠った方が良さそうね…」
「とりあえず魔法は明日にして、とりあえずテントに入っちゃいましょうか…」
三人はすごく気まずそうにこちらを見てくる。
それもそのはず。だってこっちは一時間放置されてたんだから!
いくら魔法が大好きだからと言って愛しの夫を放置するのはいかがなものかと思うよ!!
まあ今はそんな愚痴すら漏らす余裕もないほど眠いため、ノアは速攻でテントに向かった。
そしてそれに続く形で妻三人もテントの中に入り、灯を消して横になった。
「んじゃ、今日は早めに寝ようか。明日存分に海を楽しむためにな」
「「「え???」」」
ノアは目を瞑って眠りにつこうとしたが、どつやら三人にまだその気はないらしく、こちらを向いて声をかけてきくる。
「わ、わたしはもうちょっとお話ししたいなぁ…」
「そ、そうですよっ。折角の旅行で夜を楽しまないというのは少し寂しいかと…」
「…そっか」
ノアは渋々目を開き、妻の方に目をやった。
「少しだけでもいいか?俺もう結構眠いから」
「ええ…。少しで構わないわ」
「わかった。じゃあ何話す?」
「そうですね…」
ノアの質問に三人は頭を悩ませ、いち早く口を開いたのはセリーだった。
「あ、なら明日の私たちの水着を予想してくれませんか?色や形とか」
「おー、いいね」
「面白そうね」
「ん…わかった」
ノアはこの旅行で一番な楽しみと言ってもいい妻たちの水着の想像を膨らませ、十秒ほど後に言葉に変えた。
「まずは…セリーからいこうか。セリーは清楚で純粋だから色は白で結構布面積が大きいヒラヒラなやつにしてそうだけど、意外と親しい人の前では大胆になったりするからな…。だから実は一番際どい水着だと予想する」
「ん〜…それはどうでしょう?♡」
ノアの予想にセリーは嬉しそうに笑うが、勿論ノアの予想が当たっているかどうかなどは教えてくれず、ノアはそのまま次の予想に移った。
「次はアメリア。アメリアは性格的に大胆で際どい赤とかの水着を着そうだけど、実は意外と乙女な一面があるから、逆に控えめな水着…と思わせといて多分頑張って大胆な水着にしてそう」
「っ…!?ど、どうだろうねぇ…♡」
アメリアの反応を見るからに、多分当たってるなコレ。
もしそうであるのであれば妻の心をわかっているいい夫になるし、大胆な水着を着てくれるということで大歓喜である。
(明日、激アツ確定じゃん…!)
ノアはアメリアの水着を想像して少しずつ目が冴え始め、テンションも上昇してきた。
そのためノアはノリノリの状態で最後の予想を始めた。
「最後はフェリス。フェリスは性格的に自分の雰囲気やスタイルに合った水着を選ぶだろうから、自慢のくびれがしっかり見えるように布面積は抑えてそうだな。でもやっぱり色までは大胆にできなくて薄いピンクとかにしてそう」
「ど、どうかしらね…?♡」
フェリスの反応はどちらとも言えないためあまり喜べなかったが、それでも想像していくうちにだんだん明日のことが楽しみになり、すっかり眠気はどこかに消えていっていた。
「じゃあ俺の水着はどんなだと思う?」
もうノリノリのノアはすっかり明日のことしか考えられなくなり、三人に対してそんな質問を投げかけていた。
そして三人もノアがノッてくれていることに気づき、みんな全力でノアの水着を予想し始めた。
「そうね…ノアはこういう旅行とかは結構全力で楽しむタイプだから、ノリノリで花とかの柄がある水着を買ってそうよね」
「わかる!いつものノアならシンプルな水着を選んでそうだけど、今回は結構派手なやつにしてる気がする!」
「それにノアは優しいですから、私たちだけが大胆な水着を着ているということにならないようにノアも大胆な水着にしていると予想します」
「つまり、俺は派手な柄が入っている大胆な水着を買っていると予想しているわけか」
「そうだね〜」
「ふーん…みんなが俺のことをどう思っているのかがわかったよ」
大正解だよこんちくしょう!!!
みんな良く見ててくれてありがとう!!!
ノアが購入する時に考えていたことまでもが三人にバレていて内心滅茶苦茶焦っているが、それを顔に出さないように三人に目を向けた。
「ま、正解発表は明日ということで、楽しみにしといてくれ」
「うんっ!」
「わかったわ」
「ノアも楽しみにしててくださいねっ」
「それは勿論。滅茶苦茶楽しみだよ」
四人はお互いに笑みを向け、明日のことで胸がいっぱいになる。
「じゃあ明日のために今日は早めに寝よっか。ノアももう眠いでしょ?」
「ん?あ、ああ…」
アメリアは楽しそうに笑みを浮かべつつこちらの眠気を心配してくれるが、日はもうノアの眠気は吹っ飛んでいて。
「あら?もしかしてもう眠くなくなっちゃいましたか?」
そしてなぜか鋭いセリーに見抜かれてしまい、ノアはつい身体を跳ねさせてしまった。
その反応を見て三人に図星だということがバレ、三人はさらに嬉しそうに笑いながら身体を起こしてこちらに顔を近づけてきた。
「ふーん…まだ眠くないんだぁ…♡」
「なら眠くなるまでナニかをして時間を潰す必要がありそうね…♡」
「幸いこの森の一帯には誰もいませんので、好きなだけ声を出すことができますよ…?♡」
「……」
あれ、コレもしかしてそういう流れ?
また確かに状況から考えれば割と絶好の機会であるし、今回は新婚旅行も兼ねていることを考えるとそういうことはむしろするべきであろう。
そういう考えに辿り着いたノアはいつもより簡単に三人の言葉に頷き、身体を三人に託した。
「わかった。しようか」
「ふふ♡今日はノアも乗り気なんですね♡」
「まあな。折角の旅行だから、全部を楽しまないと損だろ?」
「確かにそうね。じゃあ今晩は私たちとたくさん楽しみましょう?♡」
「いっぱい喜んでもらえるように頑張るねっ!♡」
「ああ、たのむ」
顔を近づけてくる三人の姿を見てノアは静かに目を瞑り、そのまま三回連続で柔らかい唇が触れるのを感じたのだった。




