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57 隠し事


「ふぅ〜、疲れたぁ」


数日後早速家の建設が始まり、ノアは連日朝から晩まで重労働を行なっている。


でも魔法を使って普通の人より疲れにくくはしているのだが、それでもやはり疲れるものは疲れるのである。


そして建設が始まってから一週間後、ノアは宿のベッドに飛び込んで妻に癒しを求めた。


「あ〜こういう時に疲れが吹き飛ぶぐらいたくさん癒してくれる奥さんはいないのかな〜」


わざとらしくみんなに聞こえるように声を上げると、勿論全員が反応してこちらにやってきてくれた。


「ここにいるわよ」

「腕がなるね〜」

「まずはマッサージでもしますか?」

「ん、流石俺の世界一可愛い嫁さんたちだ。じゃあ頼むよ」


妻たちはすぐに背中のマッサージを始め、ノアの疲れを少しでも取ろうと懸命に手を動かす。


「あ゛ぁぁぎもぢいい゛〜」

「ちょっと、おじさんみたいな声出さないでくれない?」

「仕方ないだろ?気持ち良すぎるんだから」


実際彼女らのマッサージはとても効いているため、ついおっさんみたいな声が出てしまうのである。


「そこ、そこめっちゃ気持ちいいなぁ」

「ありがとうございます」

「え、ここ?」


肩をマッサージしてくれているセリーに対して言葉を放ったつもりであったが、なぜか足を担当しているアメリアが反応してしまう。


「あ゛ぁぁぁ!!??痛い痛い痛い!!!」

「えっ、ごめんねっ__!」


アメリアがちょうど足の裏をマッサージしている時に声をかけてしまったため、アメリアは足裏に強めの刺激を加えてきた。


元々痛みを我慢しつつマッサージを受けていたので、当然強く刺激されるとかなりの痛みが足を襲うわけで。


「ビックリしたぁ…足無くなるかと思ったぞ」

「ほ、本当にごめんねっ…!悪気はなくて…」


疲れているノアに対して善意ではあるが痛みを与えてしまったアメリアは本当に申し訳なさそうにしており、表情を曇らせつつ頭を下げてくる。


それに対してノアは逆に申し訳なくなり、背中越しにアメリアに対して謝罪する。


「ううん、こっちこそごめんな。ビックリして反応しすぎたわ。まあ痛かったのは事実だけど、それだけ凝って疲れが溜まってたってことだろうし。だから気にせずマッサージしてほしいな」

「ノア…うんっ。頑張るねっ」

「できるだけゆっくり優しくで頼むな」

「うんっ!」


アメリアは不器用なところがあるため少し心配ではあるが、これだけ可愛い嫁にマッサージしてもらえているだけでもお釣りが返ってくるほどである。


(ああ…俺は世界一の幸せ者だぁ…)


これだけ可愛い美少女妻に囲まれて尽くされている事実に対し、ノアはそのような感想を抱く。


絶対に口にした方が妻たちは喜ぶであろうが、照れたアメリアが何をしでかすかわからないから心の中に留めておいて。


しばらくの間軽く雑談をしながらマッサージを受け、背中側がひと段落した頃に仰向けとなった。


そしてその状態でもマッサージを受け始めた頃、セリーは今まで気になっていたことを口にした。


「あの、一つ気になったことがあるのでお訊きしてもいいですか?」

「ん?どうした?」

「あの力、一体どこからきているのですか?」

「「??」」


セリーが少し曖昧な質問をしたため、フェリスやアメリアは頭の上に?を浮かべた。


だがしかしノアはセリーの発言に心当たりがあり、一人で心臓をバクバクと跳ねさせる。


だがセリーはそんなことは知らず、理解できていない二人に説明を始めた。


「実は今日こっそりノアが働いているところを見に行ったのですが、ノアは数百キロはしそうなの木材を軽々しく持ち上げていまして…」

「数百キロ!?」

「そ、そんなことあるの…?」


セリーの言葉を聞いて何となく理解した二人は驚きを示し、その目線をこちらに向けて問いかけてくる。


「この話、本当なの…?」

「ん…まぁ、な…」


セリーに見られていたということは想定外であり、ここで逃げることはできないため正直に今日のことを話した。


「確かに今日は結構重い木材を運んでたな。まああれは魔法をいい感じに使っただけだから、そんなにおかしくないと思うが」

「「「え???」」」


ここでノアの非常識さが仇となり、三人から人外を見るような目を向けられる。


「いやいやいや!普通そんなに重い木材を運ぶなんて無理だよ!」

「やっぱりそうですよね…。普通の建築士が六人ぐらいで運ぶほどの大きさでしたので…」

「持ち上げるだけなら何とかできなくは無さそうだけれど…運ぶってなると流石に無理ね…」

「いや普通は持ち上げるのも無理だよっ!」

「あら、そうなの?」


ここでフェリスのポンな部分が出てしまい、残りの二人から若干引いたような目を向けられている。


「まあ普通女性がどれだけ魔法を使っても持ち上げられないと思いますが…流石は魔法学院の首席ですね…」

「フェリスちゃんって…もしかして男の子…?」

「ち、違うわよっ…!」


珍しくフェリスは声を荒げ、揶揄ってくるアメリアに喝を入れた。


「ごめんごめん、冗談だよっ。こんな綺麗で可愛い男の子がいるわけないでしょっ」

「そ、そうかしら…」

「間違いないな」

「同感です」


アメリアに便乗してフェリスの機嫌を取ろうとすると、彼女は嬉し恥ずかしそうに頬を赤らめた。


「ありがとう…って、今はそんな話どうでもいいのよ」


で、そのまま話が逸れたままでいて欲しかったのだが、フェリスの口によって話を戻されてしまう。


「結局、セリーの話はどういうことなの?ノア」

「うっ…」

「そういえば、前に神剣とやらのことも説明してくれるって言ってましたよね?」

「ゔっ…」


せめてどちらかにして欲しいと考えてあったのだが、この記憶力の良い嫁たちは忘れてくれずに両方を問い詰めてくる。


「そろそろ誤魔化すのはやめてもらおうかしら?私たちはこれからずっと一緒にいるのだから、隠し事とかはやめにしましょう?」

「同感です。今後のことを考えると、心の中にしこりを残すのは良くないと思います」

「私もノアのこともっと知りたいから、できればたくさん教えて欲しいなっ」


妻三人は少し強い口調で説明を求め、ノアの言葉を引き出そうとする。


そして彼女らが興味津々な目を向けてくる最中、ノアは心の中で考えを巡らせていた。


(ん〜…言っといた方がいいかぁ…)


彼女らの言う通り、これから共に人生を歩んでいく人に隠し事は良くない。


そして今回のような常識外れな隠し事なら尚更であるため、今回ばかりは説明をしなくてはならない。


というわけで、ノアは自分の能力や神剣についての話を妻たちに話した。


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