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54 朝ですけど


「うぅ…あづい…」


夏日に照らされる客室のベッドの上でノアは窮屈さを感じつつ目を覚ました。


「あ♡起きましたか?♡」


目をパチパチとしていると隣から綺麗な声が聞こえてきてそちらを向くと、そこには頬を赤く染めつつもどこか嬉しそうなセリーの顔があった。


「おはよう」

「おはようございますっ」

「にしても、結構暑いな」

「そうですね」


愛する妻たちと共にベッドで寝るのはとても心地良くて最高なのであるが、今はなんといっても灼熱の夏である。


流石に耐えられなさそうだと思い昨晩からセリーが冷却魔法を室内にかけてくれているが、やはりダブルベッドに四人で寝ているという窮屈な状況のためある程度の暑さを感じるものであり、ノアは咄嗟にベッドから出ていこうと身体を起こした。


だがしかし、直後に両サイドから肩を掴まれてそのままベッドに引きずり戻されてしまう。


「こら、勝手に起きたらダメでしょう?」

「え、なんで?」

「せっかくみんなでベッドにいるんだし、もっとイチャイチャしよ?♡」

「いや、それだと汗かきそうだし…」

「あ、冷却魔法強くするわね」


何してくれてんだぁぁぁぁ!!!


これじゃあ逃げる理由が無いではないか!


(また詰んでるやつかよ…)


もう対抗することすら無駄に思えてきて、ノアは一切の抵抗をやめてみんなの言葉に従うことにした。


「んで?具体的にはなにすんの」

「ん〜…あ、セリーちゃんは何かしたいことある?」


どうやら全員何をするのか考えていなかったらしく、アメリアはせっかくだからセリーのしたいことをさせてあげようと彼女に問いかけた。


するとセリーは数秒頭を悩ませ、どこか楽しそうに回答を出した。


「それじゃあ、手を握りたいです」


セリーのことだからもっとエグいのが飛んでくるかと思っていたが、実際か彼女の口から放たれたのは純情な乙女のような言葉であり、ノアは一瞬理解できずに固まってしまった。


「手…?」

「はい。私、恋人繋ぎというものをしてみたいです」

「いいんじゃない?」

「そっかぁ…二人もそれでいいか?」

「うん」

「ええ」


そんな風にしてみんなで恋人繋ぎをすることが決まり、ノアは早速両隣に手を向けた。


直後、左隣にいるフェリスは嬉しそうに手を握ってきて、嬉しそうに微笑みを浮かべている。


そんな彼女の手を優しく握り返し、ノアも左手からフェリスの温かみを感じる。


(なんか、昔に戻ったみたいだな)


まだ魔法学院に通っていたあの頃の、手を繋ぐだけで心が躍るように嬉しかったあの頃をひっそりと思い出す。


(あの頃は純粋だったなぁ)


なわけねぇだろ。とツッコミを入れたいところではあるが、実際今と比べればあの頃は純粋そのものであった。


初めて手を繋いだ時は心臓が破裂しそうなぐらいドキドキしたし、初めてキスをした日なんかは全く眠れなかった。


そして何より、フェリスの手から伝わる温もりにノアは何度も救われてきた。


(やっぱ、俺にはフェリスが必要だな)


隣にいるフェリスの手を握りつつ様々なことを考える。


その内容はフェリスと過ごしてきた長い日々であり、かけがえのない記憶であった。


そしてそれを思い出しているのはどうやらノアだけではないようで。


「なんだか昔を思い出すわねっ」


フェリスは少し照れているように目をウロウロさせつつそう呟いてきた。


それに対してノアは共感の意を示すように頷き、同じことを考えていることを彼女に伝える。


「ああ。思い出すなぁ」

「あの頃は手を繋いだだけでドキドキしてたわね」

「今はドキドキしないのか?」

「それは…」


少し意地悪な質問をするとフェリスは頬を赤らめたが、直後不満そうに口を尖らせてきた。


「もう、意地悪しないでっ」

「はは、ごめんごめん。ちなみにだけど、俺は今でもドキドキするよ」

「っ…!?」


可愛い妻に自身の正直な気持ちを伝え、そして彼女の気持ちを確認する。


「フェリスはどうだ?今でも俺の手を握るとドキドキするか?」

「…うん」

「それはよかった」


フェリスは耳まで赤くして顔をノアの胸に埋めつう首を縦に振った。


やはり我が妻は宇宙一だ!などということを思ってしまうぐらいに可愛いが、よく考えればそもそも手を握るというのはセリーが言い出したことであった。


それを思い出した途端に急いでセリーの方を向くと、彼女は不満そうに頬を膨らませていた。


「あの〜…手、握らないんすか?」

「繋ぎますよ…。でもノアがフェリスちゃんに夢中になっていたようでしたので」


年下美人妻の嫉妬、可愛すぎるっっ!!!


(じゃなくて!とりあえず手を握らないと!)


セリーは恥ずかしがって中々手を握ってこないため、仕方なくこちらから手を握ることにした。


セリーの白くて小さくて柔らかい手を優しく握ると、まだ純情な彼女は真っ白な肌を赤く染め上げて。


「…っ!」

「どうした?恥ずかしいのか?」

「…はい」


昨晩はもっと恥ずかしいことをしていたはずだからこれほど恥ずかしがられるのは意外であったが、世間をよく知らないセリーならあり得なくもないであろう。


そんな風な考えに至り、ノアはセリーにドキドキしてもらえているという事実に心を躍らせた。


「嬉しいよ。セリーみたいな超絶美少女にドキドキでしもらえて」

「ちょ、超絶…」

「ああ。セリーは世界一可愛いよ」

「〜〜っ…!!??」


あまりの可愛さについ揶揄いたくなってしまいそのように言葉を漏らすと、セリーは予想通り恥ずかしそうに顔をノアの胸に埋めた。


そんな風に新婚夫婦でイチャラブして楽しんでいたのだが、そこで不満そうに声も漏らした人物がいた。


「ふーん…ノアはセリーちゃんが一番なんだ」

「私たちは二番目か三番目か、もしくはそれ以下ってことかしら?」


どうやらフェリスとアメリアはノアの先程の発言が気に食わないようで、不満そうに言葉を吐いてきた。


いつものノアならここでなんとか弁明しようと慌てて言葉を並べるが、今のノアはいつもとは違って自信を持って言葉を放った。


「いいや、そんなことないよ。フェリスもアメリアも、世界一可愛いよ」

「そ、そんな屁理屈は通用しないわよっ」

「屁理屈なんかじゃないよ。本当に俺は三人のことが世界一可愛いと思ってるんだから」

「「〜〜!!」」


ノアは自信を持って言葉を放ち、可愛い嫁二人の頬を真っ赤に染め上げた。


(ふぅ、なんとか耐えたな)


二人の不満を解消することができ、ノアは身体の力を抜いてベッドに身を委ねるが、実はまだ満足していない人が一人いた。


「ねぇ。さっきから思ってたんだけど、私だけ仲間はずれにしてない?」


配置的に一人だけノアの隣になれていないアメリアはそのように不満を漏らし、強引に身を乗り出してこちらに迫ってくる。


「いやぁそんなつもりじゃないんだけどな」

「じゃあ私ともイチャイチャしよ?」

「それはいいんだけど…どうすんの?」

「ふふっ♡私に考えがあるの♡」


アメリアはフェリスの身体を乗り越えてノアの上に馬乗りになってそのまま顔を近づけてきた。


「え、何するつもり?」

「それはもちろん…キスだよ?♡」

「…マジか」


朝っぱらからどんだけ元気なんだよこの人たち。


もうすでにメモリオーバーなのであるが、彼女たちはそんなことに恐れることなく求めてくる。


「あ、ずるいです。私もキスしたいです♡」

「私もしたいわ♡」

「…わかったよ。順番にな」


もう断る元気もないノアは彼女らのことを受け入れ、朝からあり得ないほどイチャイチャを繰り返すのであった。


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