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51 乱入はやめて


「ふぅ〜、いい湯だぁ」


ノアとセリーの結婚記念パーティは三時間ほどで終了し、現在ノアは一番風呂をいただいているところである。


「なんか、今日は色々あったな」


思い出してみると、深夜から早朝は村の復興に全力を注ぎ、昼にセリーとの結婚が決まり、夕方までは二人でデート。


そして最後には結婚記念のパーティといった、非常に濃い一日を過ごしていた。


とても充実した良い一日であったが、その反面ノアの身体には疲れがやってきていて。


「………はっ!あっぶねぇ、風呂で寝るところだった…」


酒で酔っていて眠いというのもあるが、そもそも昨晩はほとんど寝ていないため、一人で落ち着ける今になって眠気が襲ってきている。


「流石にここで…は…………」


視界が闇に包まれ、次第に意識が空に消えていく。


「………」

「(…?…)」


風呂の扉が開き、足音がテクテクと近づいてくる。


そして目の前で足音が止まり、こちらの顔をこっそり覗いてくる。


「(もしかして…寝てる…?)」


どうやら完全に眠りについていることがバレたらしく、その人物はバレないように顔を近づけてくる。


そしてそのまま頬に軽くキスをしてそのままノアの隣に腰を下ろした。


「…?」


何か柔らかくて温かいものが頬を直撃したためか、ノアはパチパチと目を開いた。


「あ、起きました?」

「…ん?」

「ふふ、おはようございます」

「え…えぇぇぇぇ!!!???」


声がした方向に目を向けると、そこには今日結婚したばかりの白髪美少女がいて。


セリーは何の恥ずかしげもなくノアの隣に座っていて、今はニコニコと笑いながらノアの驚きを楽しんでいた。


「そんなにびっくりしました?」

「そりゃびっくりするだろ!!風呂に入ってる途中に超絶美人妻が突然隣に来たら!!」

「び、美人…ですか…♡」


ナチュラルにセリーの容姿を褒めると、彼女は簡単に頬を赤く染めた。


この人余裕があるように見えて実はめっちゃ恥ずかしがっているのでは?


だって普段のセリーなら「ふふっ、ありがとうございますっ」ぐらいで済まされるはずだし。


まあセリーは男慣れしていないらしいから恥ずかしらのが当たり前か。


ならここは、可愛い新妻をしっかりとリードしてあげなければ!!


てなわけで、ノアはセリーに向けて言葉を放った。


「てか、何で風呂にいるんだよ!!!???」


ノアはリードなどといった言葉とは程遠い口調でセリーに質問を投げた。


するとセリーはまたも頬を赤らめながら小さく言葉を返してきた。


「それは…お、奥さんが殿方のお背中を流すのは当たり前だからです…よ…?」

「ふぇ…?」


そんな常識は聞いたことがないぞ!


素晴らしいけれども!


(セシリアさん…一体何を吹き込んだんですか…!)


男性についてなど全く知らないセリーがこんなことを言い放つのであれば、それは親が原因だと考えるのが妥当である。


もっと言うならば、ダンテはそう言う話を娘にするタイプではないため、消去法でセシリアが犯人となる。


あの人、おっとりしているけど実は突拍子もないことを言い出す人だし、全然あり得なくないんだよな…。


だがしかし、今回ばかりは賞賛を(殴


「いや待て。俺たちは今日結婚したばかりだ。流石にそこまで進展するのは早すぎるんじゃないか?」


ノアは何とか自身の欲を制御し、セリーのお背中流し大作戦を阻止しにかかる。


だがしかし彼女の意思は強固としたものであり、少し投げやり気味に言葉を返してくる。


「いえ、私たちは新婚だからこそ仲を深めるべきです。私はフェリスちゃんやアメリアちゃんに引けを取らないぐらいあなたと親しくなりたいのです。だから…ダメですか…?♡」

「ぐっ…!」


セリーは上目遣いでおねだりしてくるが、このまま押し切られてはダメだと思って何とか断りの言葉を告げる。


「ダメだっ…!セリーには…まだ早いよ…」

「っ…!わかりました…」

「ごめんな、期待に応えてあげられなくて。でも他のことならちゃんと__」

「では私にノアのお背中を流させていただけますか?」

「…話聞いてた?」


ちゃんと断ったはずなのに、なぜかセリーはまだ背中を流すつもりでいるらしい。


「はい、もちろん聞いていましたよ。ですがその上で私に一つ提案があるのですが」

「なんだ?」

「提案というかこれは私の願いなのですけれど、私は夫であるあなたの疲れを癒してあげたいと思っているのです」

「いや、別に疲れてないけど…」

「いいえ、私は知ってますよ。あなた、昨日の深夜からほとんど休めていませんよね?」

「…」


返す言葉も見つからず、ただセリーの説教のような話を耳に入れ続ける。


「あなたが私たちのためにたくさん頑張ってくれるのはとても嬉しいのですけれど、それではノアの身体が壊れてしまいます。先程だって、疲れて眠っていたのですよね?」

「…っ」


セリーの言葉に頷くでもなくただダンマリを決めるが、それを肯定と捉えたらしいセリーはさらに語気を強めた。


「ノア。妻が夫の疲れを癒したいと思うのはいけないことなのでしょうか?世界一好きな人のことを幸せにしてあげたいと願うことは、ダメなことなのでしょうか?」


流石に、その言葉はズルすぎる。


否定すればただのクズに成り下がってしまうような、とんでもない罠をセリーは平然とばら撒いてきた。


そして当然ノアは罠に突っ込むようなクズではないため、セリーの言葉を受け入れることにした。


「いいや、ダメなんかじゃない。俺だって、セリーに対してそう思ってるから」

「ならいいですよね?マッサージしても♡」

「ん、なんか話変わってない!?」

「あら?最初からこの話でしたよ?」

「いや嘘だ!捏造だ!」


セリーはノアの言葉をスルーして早速手のマッサージから始まった。


「どうですか?気持ちいいですか?」

「っ!…あ、ああ…」

「それはよかったです。続けますね」


セリーのマッサージは次々と進んで行き、徐々にノアは完全に癒されるようになった。


「ああ゛〜そこ、そこめちゃくちゃ気持ちいい」

「ふふっ、すっかり堪能してますねっ」

「仕方ないだろ?セリーのマッサージが気持ち良すぎるんだから」

「そこまでいっていただけて嬉しいです。たくさん練習した甲斐がありました」


セリーは嬉しそうに微笑みつつもしっかりと手を動かしてくれている。


(はあ〜最高の嫁を持ってしまった)


毎日マッサージしてほしい!


そのためなら何でも頑張れる気がする!


などということを脳内で考えつつセリーのマッサージに心を吸い取られていると、またしても風呂の扉が開かれた。


「あっ!やっぱりここにいた!」

「抜け駆けはダメよ、セリー」


そして勢いよく突入してきたのはノアの嫁二人であり、セリーはそれを見て苦笑いを浮かべた。


「あー…バレてしまいましたか」

「えっ、なんで来たの…?」

「それはもちろん、ノアの疲れを癒すためよ」

「ちゃんとダンテさんとセシリアさんには許可貰ってるから大丈夫だよっ♡」


いや問題点そこじゃないだろ。


てかなんであの二人は普通に許可出してんだよ!?


(普通止めたりするもんだろ…)


ダンテだけは味方でいてくれると信じたかったのだが、多分彼もセシリアを含む女性たちに押し切られてしまったのであろう。


この人たち、こういう時だけは謎に団結力あるからな。


ホントやめてほしいけどな!!


「じゃあ私は足をするから、フェリスちゃんは肩を腰をお願いするね」

「わかったわ」

「いや待て、何しれっと始めようとしてんの!?」

「細かいことは気にしなくていいの。ノアは何も考えずにお嫁さんたちに癒されてればいいのっ」

「グ…」


結局ノアになす術などなく、彼女らにされるがままの時間を過ごした。


そしてマッサージで癒された分、心は疲労を蓄積させていくのであった。


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