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50 パーティだ!


「おっ、ようやく今日の主役が帰って来たわよ〜」


日が完全に沈み、夜の闇が空を覆った頃にノアとセリーは帰宅し、セシリアに案内されてリビングに向かった。


「二人とも遅かったわね」

「それだけイチャイチャしてたってことじゃない?♡」

「確かに。ノアならあり得るわね」


リビングに入るなり嫁二人からなんとも言えない評価を受けて少し不満を覚えるが、それよりも今は目の前の光景に驚きを見せる。


「この飾り…どうしたんですか?」

「ああ、これはフェリスちゃんにお願いして魔法で作ってもらったんだ。すごくよくできているだろう?」

「確かに、フェリスの魔法なら納得ですね」

「フェリスちゃん、ありがとうございますっ」


才能の無駄遣いだ、などと一瞬思ったがフェリス自身がいいのであればこちらから口を出すこともないのでとりあえず用意された主役の席に腰をかけた。


すると食事がどんどん食卓に並び始め、気づけば食卓は隙間なく皿で満たされていた。


「こ、これは…」

「おいしそぉ…」


まさに悪魔の誘惑とでも言わんばかりの料理の香りに対して一同はよだれを垂らすが、フェリスとアメリアは悩ましい表情をして料理とにらめっこ。


「(流石に食べすぎるとマズイわよね…)」

「(お昼もいっぱい食べちゃったし、流石に夜は抑えないと…)」

「(でもせっかくの二人のお祝いだし、我慢するのはよくないかしら…)」

「(でもそんなことしたら…)」

「「((太っちゃう…))」」


二人は誰にも聞かれないようにボソボソと会話を繰り広げているが、すぐ近くにいたノアにはもちろん聞こえている。


(うーん…どうすべきか…)


「(しかも実は最近…増えちゃってるんだよね)」

「(!?…そ、そうなの…実は、私も…)」


ここは励ますべきだろうか。


せっかくの祝いの席だし、今晩ばかりは何も考えずに楽しんで欲しいという気持ちがノアの心に湧き上がり、ついに我慢できなくなって2人に対して小さく声をかけた。


「(俺はそんなに気にしなくても大丈夫だと思うぞ?)」

「(え、)」

「(聞いてたの!?)」

「(ああ…聞こえてきてな。ごめん。盗み聞きするつもりじゃなかったんだけど)」

「(別に謝る必要はないけれど…)」

「(でも聞かれたからには放っておくわけにはいかないね)」


何とか二人を励まそうと声をかけたのだが、二人は思いの外自身の体重事情を知られたことに不満を覚えていて、ノアは完全に二人に捕まってしまう。


「(ノア、この話は忘れて。そして金輪際口に出さないこと)」

「(え?)」

「(ノアは黙って私たちのダイエットに協力するの。毎晩運動に付き合ってもらうからねっ)」


なぜ晩に運動するつもりなんだ…?


普通運動って日中にするものじゃないか?


なんて考えるが、どうせこの二人のことだからそういう意味なのだろうということを察し、今後の夜の自分に対して大きく頭を下げた。


(スマン、あとは頼んだ)


最近疲れ気味なので今晩こそはゆっくりと、だなんて考えていたがそれが叶う未来は消えてしまい、心の中でひっそりと絶望を味わう。


「(ん、どうかした?)」

「(別に何も)」

「ふふふっ、夫婦仲良しね〜」


そうやって妻二人と仲良く(?)話をしていると、食事の支度を終えたセシリアが微笑ましい視線を向けてきた。


「いや…まあそうですね…」

「今度からはセリーも混ぜてあげてねっ」

「わ、わかりました…」


セシリアにニコニコと微笑まれてかなり恥ずかしさを覚えて顔を紅潮させると、隣に座るセリーに突然手を握られて。


「!?」

「さあ、早く乾杯しましょ?私たちへのお祝いをたくさん楽しみましょうっ」

「あ、ああ…そうだな。よし、今日はたくさん飲むぞ!」

「お、張り切ってるねぇ」

「はーい、今からお酒注いで行くわね〜」


ノアはセリーの手を握り返し、お酒を注がれたグラスを持ってセリーと共に立ち上がった。


「今日は俺たちのためにお祝いをしてくれて本当にありがとうございます。これからは夫婦で互いに助け合い、そして共に人生を歩んでいきたいと思っています」


この場にいる人に自分なりの決意を告げ、そのままの流れで乾杯をしようと考えているのだが、それはダンテの口によって阻まれてしまう。


「さて!乾杯の前に、二人に渡したいものがあるんだ」

「渡したいもの…ですか?」

「ああ。セシリア」

「はい」


そこでセシリアはある棚から箱を取り出し、それをダンテに手渡した。


「これは俺とセシリアからの結婚祝いだ。おめでとう」

「え…」

「あ、ありがとうございます…!」


あまりに突然のことで理解が追いつかず、二人は驚きの表情のままその箱を受け取った。


そして箱をゆっくりと開封し、その中には二つのネックレスが入ってあった。


「これは…!もしかしてあの店の…!?」

「あの店って、もしかして指輪買いに行った店か…?」

「ああ。その店で合ってるよ」

「そ、そんな…!」


そのネックレスを一目見た途端にセリーは目を見開き、想像以上の驚きを見せている。


そしてその原因を彼女は語り始めた。


「このネックレス、私たちが入店する一時間前に売れたって店員さんがおっしゃってました…」


セリーは仲良く店員と話をしている間にそのようなことも話していたらしく、セリーは余計に驚いてしまったのであろう。


そして今隣にいるノアにもその驚きは伝染していく。


「え!?じゃあつまり今日俺たちがデートしている間に…?」

「ああ。どうせなら今晩サプライズしたいってセシリアに言われてな。どうせセリーの事だからあの店には最後に行くと予想してさっさと買いに行ったんだが、思ったよりも早くあの店に行っていたんだな」

「…!!ありがとうございます…!!」


両親の愛がセリーの心に響き、彼女は嬉しそうに涙を流し始めた。


「ありゃ、泣いちゃった」

「珍しいわね〜、セリーが泣くなんて何年ぶりかしら」

「まあ喜んでもらえたなら何でもいいさ。ほら、あんま泣きすぎるとせっかくの化粧が落ちるぞ?」

「そ、そうですね…」


セリーはゆっくり涙を拭い、両親に満面の笑みを向けた。


「お父さん、お母さん、ありがとうございますっ。大好きですっ」

「セリー…」

「あかん、これ俺が泣かされる」

「こら、娘たちの前ですよ」

「わかってるよ。今抑えるから」


セリーの言葉に心を打たれて二人は涙を流しそうになるが、それを懸命に抑えてセリーに笑顔を向き返す。


「俺たちも、セリーの事が大好きだよ」

「ふふっ、ありがとうございますっ」

「さーて、そろそろ乾杯するか!」

「みんなグラス持って〜」


全員が立ち上がり、そしてダンテが乾杯の音頭を取る。


「それじゃあノアくんとセリーのこれからの幸せに…」

「「「「「「乾杯!!!!!!」」」」」」


全員で声を上げて乾杯をし、そこで二人の結婚記念パーティーが始まった。


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